12 それこそが、真実/在りし日々

「・・・おはようございます、マルフォイ先輩、スネイプ先輩」

「やぁ名前・・・おはよう、昨日はよく眠れたかい?」

ドラコの父君は昔も今もかける言葉は変わらないな・・・ドラコの家に泊まりに言った時もまるっきり同じ言葉をかけられたっけな
そう思っているとなにやら無性にドラコ達に会いたくなった

「はい、よく眠れました。」

「それは良かった・・・そうそう、今度の土曜日にでもセブルスに校内案内をしてもらうといい・・・・・・ま、ダンブルドアの孫だから知っているとは思うが一応・・・ね」

「・・・お世話になります、スネイプ先輩」

「・・・フン、勝手にしろ」

父上はいつになっても父上だ――――なんとなくそう感じた

朝食も食べ終わり、魔法薬学の教室へと向かうべく見慣れた地下室へと足を進めた。

「ぼく魔法薬学・・・苦手なんだ」

「・・・僕が教える、だから心配するな」

苦笑するアルにそう声をかけるとほっとしたのかふぅと息を吐いた
そこまで苦手なのか・・・そう思っているうちに地下室へとたどり着いてしまった。地下室は何時の時代も変わらずじめじめと陰湿な雰囲気をかもちだしていた。

「スラグホーン教授はね、きっと君を気に入ると思うよ」

「・・・何でだ?」

「君、きっとセブルス・スネイプの弟だと思われるよ・・・スネイプ先輩は魔法薬学の天才なんだ」

そう胸を張るアル。確かに父上は天才だ・・・難しい薬をいとも簡単に調合してみせる。だがそんな天才の手にも苦労の跡が見え隠れしていた

「・・・でも大丈夫だ、僕のことはホグワーツの教員が全員知っている」

これは嘘ではない。勿論未来から来た事もスラグホーンは知っていた
確かにスラグホーンは名前を見る目が少し他の教師とは違っていた。何かを期待しているような眼を僕に向けていたっけ・・・恐らく今日もだろうな

スラグホーンはセブルス・スネイプの息子なのだから絶対に魔法薬学の天才に違いない、そう思っているのだろうか。

スラグホーンがドアを開け、やってきた。名前は一番後ろの席にいた。・・・魔法薬を調合しているときに声をかけられるとどうしても集中力が途切れてしまうのだ
スラグホーンのことだろうから、絶対に名前につきっきりだろう・・・それはごめんだ

出席をとりはじめた。できればとらないまま授業をはじめてほしかった・・・がそうはいかないだろう。名前の名前が呼ばれたとたん・・・

「おや、名前!名前はどこだね!」

・・・また始まった、“名前コール”が――――
名前はこれで散々参っていた。新学期早々横を過ぎるだけで呼び止められお茶を進められるのを断る・・・始めてきた時はもっと酷いものだった。

「・・・はい、ここです」

嫌々手を上げて知らせると目を輝かせて名前を「君には期待しているよ」とでも言っているような表情で見つめ、出席を再びとり始めた

「やあ名前、どうだね?順調かね?」

・・・・いちいち材料を切るたびに声をかけるのはやめていただきたい―――

それを見て隣のアルも流石に苦笑していた。
授業も終わり、やつれた表情の名前とそれを横から心配げに見ているアルが教室を出ようとした時だった。

「―――名前、いいところに・・・お茶なんてどうだい」

「・・・教授、次の授業に急いでいるので」

そう言うとものすごい速度でその場を去っていった。アルも頑張って名前の後ろを追いかける

「・・・君って意外に早いんだね」

「・・・どうも」

アルは意外に足の早い名前に驚いた。

木曜日のことだった。いつも忙しいアルは今日もどこかへ飛んでいた。名前は早くも過去のホグワーツに慣れ、未来のホグワーツと変わらぬ生活をしていた。・・・・・・ドラコやハリー達がいないことを除けばだが

「やぁ名前」

「レギュラス・・・久しぶりだな」

レギュラスがスリザリン親衛隊を引き連れてやってきた。何時の時代も人気者の特典は変わらない・・・とはこういう事だろうか

「・・・兄上が迷惑をかけてすまなかった」

「兄上・・・?」

「シリウス・ブラックだ。ジェームズ・ポッターといつも組んでる・・・・・・」

―――シリウス・ブラック?
あぁ、そうか・・・・この時代だったな――――重犯罪人シリウス・ブラックが学生だった頃は。ポッター先輩の隣にいたのはあのシリウス・ブラックだったのか・・・だからレギュラスのことを聞いてきたのか・・・・・・・・・

だが名前にはどうしてもあの人がこれからあんなことを犯すとは到底思えなかった。

「いいや、大丈夫だ・・・気にするな」

「悪いな・・・あれでもブラック家の時期当主なんだ―――」

それからしばらくレギュラスはブラック家の中でのシリウスの扱いについて話してくれた。どうやらブラック家の落ちこぼれと家族から罵られ続けているらしい。

「・・・大変だな、お前の兄上も」

「まぁ、あんな兄上だけれども僕は尊敬してるんだ・・・・・・成績も優秀だしクイディッチは強いし・・・・・・だがあの裏切り者やマグル達と仲良くする所が無ければなぁ―――」

「・・・そこまで家族でも縛れないだろうな。いいんじゃないか?自由に生きれば」

「―――名前のような発想が羨ましいよ」

レギュラスは名前を見てため息をつくと次の授業に遅れるからまたな、と言い親衛隊を引き連れて温室のほうへと向かっていった。
名前は次の授業の教室へと移動すべく、階段を下りていったときだった

バシャン!!

「・・・」

上から大量の水が降り注いできた。周りの生徒は一瞬名前を見るが哀れみの視線を向けられるだけだった。一体誰がこんな悪戯をしたのだろうか・・・ピーブスだろうかと思い上を見上げるとそこには意外な人物達がいた

「―――悪戯成功!!」

「古典的なやり方だったけどね」

「ちょっと可哀想じゃないかい?本がずぶぬれだよ」

そこにはどこか優しそうな雰囲気をもったグリフィンドールの上級生とジェームズとシリウスの3人がにやにやと名前を見ていたのだった

「本当にスニベルスそっくりだね・・・」

グリフィンドールの上級生がくすりと笑う。

「・・・僕は名前・ダンブルドアです」

そう言うと熱風の魔法をかけびしょびしょになったローブと本を一気に乾かした。それが面白くなかったのか不満そうに声を上げた

「・・・お前、つまらねぇ」

「・・・ありがとうございます」

「行こうぜジェームズ、リーマス・・・」

どうやらあのグリフィンドールの上級生はリーマスというらしい。リーマスといえば人狼のリーマス・ルーピンか?

名前は父親が言っていた言葉を一生懸命思い出していた。リーマス・ルーピンも父親のスネイプに散々な事をしたという。今のことでも彼らのことが十二分に分かったような気がする・・・父親に同情したくなった。

「・・・人狼、ねぇ」

彼らが立ち去った後を眺めながらぽつりを吐いた。

名前が通称悪戯仕掛け人たちの手によって被害にあったことはすでにどの寮にも広まっていた。あのダンブルドアの孫を悪戯するなんて怖いもの知らずだなという話もちらほら

「・・・スネイプ先輩、どうしたんですか」

「・・・」

ついこのあいだの名前と全く同じ状態になっていた。された直後らしく怒りで頬を赤くしていた。

「・・・あぁ、あの人たちですね・・・・・・つい最近僕もされました」

そう淡々と言うと熱風の魔法をセブルスにかけローブなどを早速乾かした

「・・・悪いな」

「いいえ、先輩が風邪を引いてしまうと思いまして。先輩は彼らのこと・・・・・・無論嫌ってそうですね」

「言うまでも無い・・・やつらときたら――――」

セブルスの口からはマシンガンのように次から次へと悪戯仕掛け人の愚痴がこぼれていく。どんな悪戯をされたか、どんな辱めを受けたのか・・・・・・名前はどうしてもここまで話してくれるセブルスがよく分からなかった。何故会ったばかりなのにこんなにも自分をさらけ出してくれるのだろうか・・・・・・それはやはり未来の父親と息子だからなのだろうか

「―――セブルスがそんなにも自分をさらけ出すなんて・・・珍しいわね」

ふと振り返るとスリザリンの上級生だろうか・・・一瞬ドキッとしてしまった。髪は美しいブロンドで瞳は透き通ったグレーだった。

――――まさか母上ではないだろうか・・・

「・・・ははうえ」

ぼそりと呟いたはずなのだがセブルスには聞き取れてしまったらしくビックリした面持ちで名前とブロンドの上級生を見比べていた。

「あ・・・すみません、母上に――――あまりにも似ていたので」

名前が謝るとどこかセブルスが安心した表情になる。するとブロンドの上級生はクスクス笑い始めた

「あなた、名前・ダンブルドアね?本当にあのダンブルドアの孫なの・・・?私はてっきりセブルスの隠し子だと思ったわ」

「隠し子だと・・・!?なぜ勝手に僕が出てくる!隠し子じゃなくてせめて弟と言え・・・」

「あらセブルス、名前と話している時いつも嬉しそうに見えたから・・・クスクス。私の名前まだ言ってなかったわね・・・私はアリス・レーガン、スリザリンの4年生」

アリス・レーガン・・・・・
それは母親の前の名前であり、母親の学生時代の姿だった。
本当に・・・母上、母上・・・・・・・・・

名前は胸が張り裂けそうになった。大好きな母上の学生時代・・・そして今は亡きかけがえの無い家族―――――――

名前は今誰かにしがみつきたかった。眼からは熱いものがこみ上げてくる。こらえきれずその場に座り込むとアリスが心配そうに覗き込んできた

――――母上、母上、母上、母上、母上・・・・・・

大好きな母上が目の前にいる・・・未来を漏らす事は重罪だ、だからあなたの息子ですなんて言えるはずがなかった。今すぐにでも自分はあなたの息子だと言いたかった。あなたとセブルス・スネイプの息子だと――――――心の中で葛藤していた。

そして今、自分は孤独なんだと改めて思った。この人たちは未来の自分の親・・・だとしてもあのセブルス・スネイプでもなければあのアリス・スネイプでもないのだ――――まったくもって別人なのだ

父上、父上・・・父上・・・・・・・・・

急に父親が恋しくなった。いつも忙しくて傍にはいなかったが何かあればすぐ駆けつけに来てくれ、名前のために寝る間も惜しんで薬も調合したり看病してくれたりした・・・あの父親の少しごつごつした手が恋しかった。ローブに染み付いた魔法薬の独特の匂いが恋しかった――――――――

「いい子ね、いい子・・・いい子ね」

驚いたことに・・・・アリス・レーガンが名前の頭をそっと撫でていたのだった。

その言葉はよく泣きじゃくった名前をなだめる時に言っていた言葉・・・そのものだった。
何かが溢れてしまったような気がする・・・・・・眼からは熱いものが流れ落ちてくる。

――――父上・・・母上・・・

セブルス・スネイプが差し出してくれたハンカチで涙をぬぐうと何時の時代も変わらない――――あの懐かしい匂いがした

「・・・お前も、寂しい思いをしてるんだな」

セブルスはどこか寂しそうな顔をしながら言う。

「・・・僕もお前と同じだったかもしれない。今は吹っ切れたがな・・・」

そう言うとセブルスは名前の頭をぽんぽんと優しくたたくと名前を立ち上がらせてくれた。

「・・・・・・お前はそれに耐えなくてはいけない。どんな理由にせよ―――孤独に負けてはいけない」

父親がこの状況を見ていればきっと同じようなことを言うのだろう―――――
そう思うと、ないてはいけないと想いつつも涙がどうしても込み上げてきてしまうのだった。