02 それこそが、真実/賢者の石

ホグワーツの組み分けの儀式とはいかなるものなのか・・・まわりの生徒はそんな話題ばかりしていた。もちろん、教師を親に持つ名前にとってはそんな事なんの悩みにもならなかった。

「僕らは絶対スリザリンだ、もしスリザリンじゃなかったらこの学校やめてやる・・・」

ドラコは隣でぶつぶつ何やら独り言を言っていた。ドラコの独り言の通り、自分はスリザリン以外ありえないだろう・・・父親と母親がスリザリンなのだ。それに、スリザリンにならなかったら・・・そんなことになった時の父親の顔を想像してみるだけでも恐ろしくて・・・・そう考えるだけで広間へ向かう足が一歩一歩重くなるような気がしてならない

広間につくと、上級生達が一年生達を興味津々で見つめてきた。それもそうだろう・・・今年はハリー・ポッターが入学するのだから
組み分け帽子が各寮の事が歌い終わると、それが組み分けの儀式が始まりの合図だった。ABC順番で生徒が一人一人呼ばれてゆき、組み分け帽子が寮を叫ぶ・・・するとそこの寮からは大きな喝采が湧き上がるのだ。自分はスリザリンに無事入れるだろうか、先ほどからそんな心配ばかりしていた。そしてもう1人、心配していたドラコの名前が呼ばれた・・・
恐らく、ドラコはスリザリンだろう・・・なぜかそう確信できた。

「スリザリン!」

組み分け帽子はドラコが帽子をかぶった瞬間に答えを出した。ドラコは満面なる笑みでスリザリンへと向かっていく。スリザリンからはもちろん拍手喝采だ・・・そりゃそうだろう、あのマルフォイ家の1人息子が自分達の寮なのだから―――まぁ、当然と言えば当然かもしれないが。

今、名前は非常に組み分け帽子が気が気でなかった。もしハッフルパフやグリフィンドールだったら・・・?そんなことになったら・・・考えただけでも恐ろしい。スリザリンかレイブンクローだということを切に願いつつも、名前が呼ばれるのを待った。だが何故か一向に自分の名前が呼ばれることが無かった・・・気付けばハリーやロンの組み分けも終わっているではないか。見回すと皆グリフィンドールにいた

・・・ハリーたちと一緒もいいよな・・・。

「スネイプ・名前!」

ざわざわとざわめきが走る。上級生なら分かるからだ、彼の父親が誰なのかを・・・その名前を聞いたとたん広間の視線は一気に名前へと向かった。
父親に似ているか!?髪の毛はしっとりしているか!?――――そんな話が聞こえたきがする。

だけど何故最後なんだ・・・?不安に思いつつも素直に組み分け帽子をかぶった。
「ほほう、君はスネイプ教授の息子かね・・・そしてアリスの・・・」

「―――そんな事はどうでもいいです、早く決めてください。」

「そうせっかちにならんでも・・・まぁ、君の寮はここと既に決まっておる―――スリザリン!!!」

そう叫ぶとスリザリンからは溢れんばかりの拍手喝采が起きた。やはり育ちはいいのか立ち上がったり大騒ぎする者はいなかったがそれにしても寿命が縮む思いをしたものだ・・・ほっと一安心したところで、恐る恐る教師席を覗くと父親が満面の笑みでこちらを見ていた・・・・・・本当にスリザリンでよかったこれがグリフィンドールだったら、きっと今の笑みは一生見れないだろう。喜怒哀楽のあまりない父親の笑みはおもちゃの当たりを見つけ出す事ほど珍しいものだった。

「名前!!やったな!!」

ドラコが早速出迎えてくれた。

「ああ・・・やっぱりドラコが言っていた通りだったな・・・これでしばらくは平凡な日常が過ごせる・・・・・・」

はぁと安堵の息吐きながらドラコの隣に座ると周りの視線にようやく気付く。やっぱりあの父親からじゃこんな息子は想像できなかっただろう・・・まさか、不良みたいに髪の色が一部赤くてさらにめがねは真っ赤・・・あの魔法薬学の教授の息子がまさかこんな外見だとはだれしもが予想しなかっただろう。

「皆君の容姿に驚いてるのさ、特にその髪色」

「・・・知ってる、そんな事。不良だとでも思われているんだろうな」

「本当の事を言えばいいじゃないか、小さい頃に作った魔法薬を被って以来…」

「ドラコ、さぁ食事を始めよう。」

できれば触れてほしくない失敗談だ。今でも恥ずかしいのだから。それをあえて掘り起こすつもりなのか、ドラコ。
会話が終わると目の前には大量の食事が出て来た・・・これは食べきれない。

「ダンブルドアはきちがいだと思わないか?父上が仰っていたよ・・・」

「ん?」

どうやらドラコはずっと僕に話し掛けてきていたらしい・・・まぁいいや、たぶんこの食事のことだろうな・・・いくらドラコでもこれは多すぎだと思うだろうな。ドラコの父君も学生時代同じ思いをしたのだろうか

「そうだな、こんなに大量に」

「は?」

ドラコは話の意図がつかめず、会話を中断し食事に専念することにした。向こう側を見てみるとハリー達と目が会った。返してくれるとは思わなかったが、小さく手を振るとハリー達はちゃんと返してくれた。

「わたし、パンジー・パーキンソン」

はっとこちらを振り返ると、パグ顔の少女が名前に向かって何やら自己紹介をしていた。たぶん話し掛けてきてたのに気付かなかったのだろう・・・

「名前・スネイプ・・・。名前でいい」

「名前ね!わたしはパンジーって呼んで頂戴」

「ああ」

この娘がドラコに猛烈敵にお熱だという事を知るのは、時間の問題だった。
名前の部屋はドラコ達と相部屋らしく、流石は権力横暴といった形で寮にはめずらしく2人部屋になっていた。
「・・・はぁ」

「何でため息なんか吐くんだ、失礼な奴だな」

「いや、ため息じゃない・・・安堵の息」

「あぁ」

お互い無言でも分かったらしく、ドラコからもついつい安堵の息が漏れる。

「本当にスリザリン、なんだな・・」
名前がスリザリン寮独特の薄暗い部屋を改めて見回す。

「本当だな。だけどこれからが本番・・・ポッターの奴め、今に見てろよ・・・」

ドラコは再び自分の世界へと浸水していった。名前はそれを遠めで見守りつつも眠りの世界へと誘われていったのであった

新学期は荒々しくも幕を開いた。朝、他の生徒よりも早く起きる名前は1人広間へ向かって廊下を歩いていた。すると後ろから聞きなれた彼らの声が聞こえてきた・・・
「まさか名前がスリザリンだなんて・・・しかもあのマルフォイと仲がいいんだろ?」

「―――うん、そうみたいだね」

ハリーはマルフォイの名前を聞くと嫌な顔はしたものの、至って普通だった。逆にロンははっきりと顔に“嫌だ”と書いてあったのだ

「僕、ちょっと名前と仲良くするのどうかと思うよ・・・今思うと、列車の中の事・・・たぶんマルフォイと仕組んでたんだよ!僕らで遊んでたに決まってる!!」

「・・・うーん・・・・・・別に僕はそう思わないけど」

回答にハリーは正直困っていた。マルフォイに連れて行かれる時に少しマルフォイに怒っていたような・・・ハリーはどうしてもこうやってロンが朝から称える“名前は嫌な奴説“という考えを受け入れることができずにいた。その話が前に歩いている名前に丸聞こえだということを彼らは知らずに歩いているのだった・・・・・・

―――実に朝から不愉快だ。スリザリンだから悪い奴だと?列車の中ではあんなにも楽しそうに話していたのに・・・寮がスリザリンだから“嫌な奴”だと?
名前は無意識に後ろに振り返る。名前に気付いた二人の表情ときたら・・・特にロンは面白い顔になっていた。だけど無理にいつもの表情に戻して名前のことを睨み上げた。

「・・・おはよう、ハリー」

「お、おはよう名前・・・その」

「いいんだ、ハリー。スリザリンになった僕が悪いようだし・・・はたまたスリザリン寮の寮監の息子なら尚更だろ?」

相変わらずロンは名前を嫌な顔をして睨んでいる。ハリーはぎこちなくだがその緊迫感の中、口を開いた

「名前!その、確かに君はスリザリンだけど・・・僕と君は―――その、友達だよね?」

明らかにロンはハリーの事を何か変な発言をした人として驚いて見上げていた

「―――ああ、ハリーとは友達だ。じゃあな、また話そうなハリー」

ロンなんぞ目にも入ってないといった態度で言うとスリザリン席へと足を進めようとしたとたん、ロンに呼び止められた

「・・・おいスネイプ!」

・・・今度は気に食わないから顔をぶん殴りにでもきたのか?しかもあっという間にファミリーネームになったんだろな?ま、好きに呼べばいいし・・・・・・

「何だウィーズリー」

「何で僕を無視するんだ!!」

本当にさっきから矛盾していた。僕のことをとやかく言ったり、呼び止めて何故無視をしたのか問い詰めたり、忙しいやつだ。
「・・・さっきから矛盾しているぞウィーズリー。嫌いなら話し掛けないで頂きたい」
「!!」

「お前が望んだんだ・・・僕は別にお前を“どうとも”思ってないから安心しろ・・・・・・ただ、今後一切僕に話し掛けて来ないでもらいたい」

そう言い捨てると颯爽とスリザリン席へと向かって行った。

ハリーとはやはりいい友達になれそうだった・・・さっきのハリーの目、少しはぎこちなかったがあの発言は“ホンモノ”だった。これこそが、寮は違えど友は友―――なのだろう。

席に着くとグリフィンドール席にいるハリーと目が合った。

『ごめんね名前』

ハリーはロンに気付かれないように口パクで名前に伝えてきた

『・・・いいんだ、ハリーが気にする事では無い。今度ホグワーツを一緒に探検しような』

『―――うん!』

こんなにも清清しい朝を、ハリーの愚痴から周りの愚痴を言いまくるドラコによって邪魔されてしまった名前は朝食の時、ずっとフォークで朝食のトマトをぶすぶすと無表情で刺していたとか・・・