62 それこそが、真実/死の秘宝

に作った痣は魔法で消せても、魔法によってできた痣は魔法でもなかなか消せないのだ。それだけ名前に恨みが――――レーガン家に恨みがあるとみえる

別に僕が直接あいつにどうのこうのした訳ではないのに・・・
理不尽すぎて涙が出てきそうだ。あいつが言うには同じ血族ではないとヴォルデモートの妹、キリクは蘇らせることができないんだとか。キリクとは数年前夢にちらほら現れた少女のことだが―――
彼女は今どうしているのだろうか・・・もしかしたらクライヴと一緒にいるのでは―――そんな気がしてならない

でもすごく胸騒ぎがする。クライヴは一体何をしようとしているのだ―――――――
クライヴも同じ呪いで苦しんでいるはず・・・

あの時見させられた記憶の中にいた男は――――つまり、初代当主クライヴの息子なのだろう、そして母を殺したと言っていた・・・だがおかしい、母親は病弱で死んだのではなかったのか?
その男が母親の骨で杖を作りに行ったのまではいいとしよう、しかし―――――何故人骨で杖など作ろうとしたのだろう

名前は様々な疑問がまだ未解決でいた。妻ローズを蘇らせたのは夫であるクライヴのはずだ
しかしあの記憶の中の男はおかしなことを吐いていた・・・・定理がどうとか・・・・・・・・・・・・・・・・・

いや、まさかそんなはずはない、いや、もっと頭を柔軟にしなくては・・・もしかしたらありえるかもしれないのだから――――
だとすれば話がつながる。つまり、禁断の魔法というのは――――――

あの男はなんと恐ろしいことをしてしまったのだろうか・・・
これでは悪夢を繰り返すばかりではないか。僕が、人柱となりキリクが蘇るための体として提供されても――――もし、その呪われた儀式が成功したとしても・・・・

以前のように、彼女ではない何かが生まれるだけだ。

僕の死は何のための死なのだ
僕が死んだところで―――――――世界はどうにもならないということ

キリクは蘇らないし、呪いは繰り返される

どうやら僕はまだ死ななくても済みそうだ。
名前は漆黒の空の中を一人で飛んでいる夢を見た
目覚めてから、ああ、あれが死だったのだと悟った。真っ暗で、何もなくて、たった一人で暗闇の中飛んでいた
何をするのでもなく、何に向っていくのでもなく、ただ彷徨っていた

手ががくがくと震え、無性に誰かの温もりがほしくなる
母上母上―――どうか僕を助けてください・・・

アルベルトがまだ生きていた時にもらったロケットをギュッと握りしめ、体を震わせた
死にたくない、死にたくない、死にたくない――――怖い、一人ぼっちになってしまう―――――

天国へ行ければもしかしたらアルベルトや母上に会えるかもしれない、けれど死後の世界なんて本当にあるのだろうか
あの夢のように――――真っ暗な世界なのではないだろうか・・・・

考えれば考えるほど悪い方向へ進む。これではキリがない
相変わらず体の震えは止まらないし・・・

とりあえず水がほしかった
この喉の渇きをどうにかしたかった。でも今は夜中の3時・・・誰かが起きているはずもなく、体が動くはずもなく

「何で、何で―――動かないんだっ」

足はこうして叩きすぎたのとモティマーにかけられる魔法のせいで痣だらけだ。足だけではない、腕にも、腹にも大きな痣がある
物理的に作った痣は魔法で消せても、魔法によってできた痣は魔法でもなかなか消せないのだ。それだけ名前に恨みが――――レーガン家に恨みがあるとみえる

別に僕が直接あいつにどうのこうのした訳ではないのに・・・
理不尽すぎて涙が出てきそうだ。あいつが言うには同じ血族ではないとヴォルデモートの妹、キリクは蘇らせることができないんだとか。キリクとは数年前夢にちらほら現れた少女のことだが―――
彼女は今どうしているのだろうか・・・もしかしたらクライヴと一緒にいるのでは―――そんな気がしてならない

でもすごく胸騒ぎがする。クライヴは一体何をしようとしているのだ―――――――
クライヴも同じ呪いで苦しんでいるはず・・・

あの時見させられた記憶の中にいた男は――――つまり、初代当主クライヴの息子なのだろう、そして母を殺したと言っていた・・・だがおかしい、母親は病弱で死んだのではなかったのか?
その男が母親の骨で杖を作りに行ったのまではいいとしよう、しかし―――――何故人骨で杖など作ろうとしたのだろう

名前は様々な疑問がまだ未解決でいた。妻ローズを蘇らせたのは夫であるクライヴのはずだ
しかしあの記憶の中の男はおかしなことを吐いていた・・・・定理がどうとか・・・・・・・・・・・・・・・・・

いや、まさかそんなはずはない、いや、もっと頭を柔軟にしなくては・・・もしかしたらありえるかもしれないのだから――――
だとすれば話がつながる。つまり、禁断の魔法というのは――――――

あの男はなんと恐ろしいことをしてしまったのだろうか・・・
これでは悪夢を繰り返すばかりではないか。僕が、人柱となりキリクが蘇るための体として提供されても――――もし、その呪われた儀式が成功したとしても・・・・

以前のように、彼女ではない何かが生まれるだけだ。

僕の死は何のための死なのだ
僕が死んだところで―――――――世界はどうにもならないということ

キリクは蘇らないし、呪いは繰り返される

どうやら僕はまだ死ななくても済みそうだ。
今、とても悲しい知らせが耳に入った

―――――――マッド・アイが死んだ。
あの闇払いが死ぬなんて・・・・・ハリーたちは今さぞ絶望している頃だろう
死喰い人たちはマッド・アイを殺したことによって有頂天になっていた。

特にレストレンジ夫妻は・・・

車イスながらも広間に死喰い人たちと同様に集められた名前は車いすを持つ手を震わせるナルシッサを不安げにみつめた

ここはマルフォイ家の屋敷だ
本来家というものは心安らぐ場なのだがヴォルデモートがいたとすればそこは牢獄と化す

「―――名前・スネイプ、体調のほうはどうだ?」

ヴォルデモートが突然話をふってきた
死喰い人たちは名前の姿を見て小さく笑う者や、ナルシッサ、ルシウス、ドラコ、ベラトリックスのように複雑な表情をする者たちもいた。
彼らの気持ちが名前には痛いほどわかっていた。いくら闇へ落されてしまった人でも大切な人はいつまでも大切なのだ。あのベラトリックスですらこの名前の今の姿を直視できないでいる。それもそうだ、本当の妹のように愛したアリスの一人息子が、今こうして静かに死を迎えようとしているのだから
助けてあげたいがこれだけはどうすることもできない。彼らがしてきたことはけして許されることではない――――だが、彼らをそもそも狂わせたのはこの目の前にいる男―――――ヴォルデモート

「モティマーに随分可愛がられているそうだな、あやつはキレると制御というものを忘れる、せいぜい気をつけることだ――――それに、お前たち死喰い人も同 じ、今あやつは重要な任務に出ている―――――帰ってきたとき、あやつは相当イライラしているに違いない。とばっちりで殺されぬよう気をつけることだ」

死喰い人たちの生唾を飲む音が聞こえてくる
モティマー・・・いったいあの男は何者なのだ

部屋へ戻るとき、一か八かでナルシッサに聞いてみた

「―――Mes.ナルシッサ…モティマーは一体何者なのでしょうか」

「――――ッ」

一瞬ナルシッサの瞳が揺れた
ナルシッサが部屋を出る時、耳元でこっそりと、命がけで教えてくれた――――――――

「レーガン家の者よ」

その言葉を言うだけで何故命がけなのかというと、モティマーはヴォルデモートの右腕と呼ばれているのもあるが何よりも秘密主義で自分の秘密を外に漏らそうとしない。
たまたまナルシッサは二人が話しているのを聞いてしまったのだ。もしそのことがばれてしまえば一族に命はない
そしてその情報もまた大きなもので楽には死なせてくれないだろう。今ですらモティマーに監視されているのかもしれないのにナルシッサは名前に教えてくれた

――――あの家族は、僕が守ってみせる

こぶしをギュッと握りしめた。
左腕には日に日に増えてゆく剣に群がる蛇。これが・・・全身に達したとき、きっと僕は死ぬのだろう
なんとなくそう感じていた。今はまだ左腕だけだけど――――これが命の砂時計のようなもので・・・・

命がけで情報をもらったのだから、早くなんとかしてあの男の正体を突き止めなければならない。それが今僕に出来る最大限のこと
今闇で戦っている友たちの為にも・・・・・・・・・
今日ホグワーツに新学期が訪れた。父上は今ホグワーツで校長をしている…それは、ホグワーツにいる生徒たちを守るためでもあるのだが…。
僕も去年と同じように過ごしていたのならば今頃僕はホグワーツの広間で食事を取っている頃だ。こんな薄暗い君の悪い部屋に閉じ込められることもなく、みんなの明るい話題を明るい部屋で聞いていただろう

そう思えば思う程気持ちは沈んでゆくし、この状況をどうにかするすべを僕は持っていなかった。名前は遠くに見える空を眺めた。空には重たい雲が立ち込めていて大雨が降っている
雨がこの沈んだ気持ちを少し洗い流してくれるだろうかと、名前はずっと空を眺めて一日を過ごしていた。部屋にある本棚とほんのわずかな空が名前にとっての希望だった。
父上に助けを求めることもできなければ、ドラコたちとも会うことすら禁じられている。こんな絶望の中で必死に答えをさがしていた
部屋にある本もそろそろ半分読み終わってしまう、これをすべて読み終わる頃には僕は生きているのだろうか
モティマーの笑い声が聞こえてきて名前はとっさに布団の中にもぐった。名前はあの男が恐ろしくて仕方がなかった。なぜ恐ろしいのかわからないが、あの男の狂気染みた笑みを思い出すだけで背筋がぞっとする。ヴォルデモートとはまた違った恐ろしさがやつにはある。

「―――クククク、まだ見つからないのかい?」

「・・・そ、それが・・・」

「そんな愚図、いらないよ、誰かこいつを広間に吊るし上げろ」

男の悲鳴と、モティマーの笑い声が廊下にこだまする。ああ、あいつは今日一日中不機嫌だろう、この部屋にやってこないことを祈るしかない・・・・

名前は声が聞こえなくなるのを確認し、布団からもぞりと顔を出した。
最近ようやくこのけだるさに慣れ、部屋中を歩き回ることができるようになった。人間の環境への適応能力とはすばらしいものだ

不意にノックがされ、身を硬くさせた。まさか、モティマーではないだろうか
名前はドアが開くのを静かに見つめる

「―――名前・スネイプ、お前は父親と同様、自分を隠すのが上手い」

気まぐれでやってきたのか、名前のいるベッドの上に腰かけ、日刊予言者新聞を放り投げた。確かに僕はいろんなことを隠しているが、今日は一体どうしたというのだろうか

「・・・小僧、ダンブルドアがアレをどこに隠したか知っているか」

「―――?」

アレ、とは一体何のことだろうか。ダンブルドアにはそもそも隠し事が多すぎるのでアレといわれてもどれなのかが分からない。

「この世で最も最強の杖だ――――レーガン家の呪われた杖とはまた違う力を持つ…お前ならば知っていると思ったが…クライヴにしろ、ダンブルドアにしろ用心深い奴らだ・・・・」

レーガン家の呪われた杖・・・・まさか、初代当主の時代に作られた、あの杖のことではないだろうか――――
モティマーに少し前に見せられた映像の中で初代当主の妻の骨で杖を作れと命令していた男がいた。その男は肌が青白く、目がくぼんでいて・・・・
確かナルシッサはモティマーはレーガン家の者だと言っていた。クライヴならこの事を知っているに違いない、だが彼にどうやって連絡を取ればいいのだろうか。それに居場所もわからない
生きていることだけは確かだが安堵はできない。
だが―――――モティマーがレーガン家で、夢の中いたあの男と同じ思想を持っていたとしたら?
ヴォルデモートの妹が、初代当主の妻の生まれ変わりだとしたら―――――?
キリクは僕を過去の世界へトリップさせた・・・それは、僕に未来を変えてほしかったから・・・?

そう考えると、モティマーの行動のすべてが見えてくる。
いや、しかしそうとも断定できない―――――でも、今まで考えた中で一番確信が持てる考えだ。

「キリク…」

「小僧――――その名を知っていたか」

名前の呟きにヴォルデモートは一瞬驚いたが、すぐさまいつもの蛇のようなまなざしに戻った
この男の弱点はキリクと―――――クライヴだ。名前は今考えたことを読まれぬよう必死に心を閉ざした。気を緩めば心から様々な情報が取り出されてしまう
こうして隣に座っているだけでもかなりの威力だ。だから精神もやつれてゆくし、徐々に回復していくはずの魔力も回復しきらずにいた。

「ふん、まぁ貴様はレーガン家の者だからゴーント家の者たちとのつながりがどれほど深かったかを知っているだろう―――俺様は言うまでもなく、レーガン家の血縁者となる…そして、貴様のそばにいるあの男とも――――だ」

あの男とはつまり、クライヴのことだろう。

「俺様がそれに気がついたのは卒業する時だ、あいつは俺様の野望に気が付き離れていった。あいつの祖父も以前はそういった考えの持ち主だったことも棚に上げておいてな・・・」

この男はレーガン家のことをどれほど知っているのだろか。恐らく、自分よりかは知っていそうだ…
クライヴの祖父と言えば、あの憂いの篩で見たあの男のことだろう。必死にマールヴォロ・ゴーントに指輪を貸してくれと頼んでいた―――――

指輪?しかし何故あそこまであの男は指輪を欲したのか?今思えば随分意味深な発言だ。
あの男が欲した指輪と、ダンブルドアが隠し持っているとされるアレは何らかのかかわりがありそうだ。それにしても今日のヴォルデモートは随分とおしゃべりだなと感じた
機嫌がいいからだろうか…

「クライヴはお前がその道に走ればお前の妹は死ぬ、と俺様に言い放った。俺様はその言葉を軽視しすぎていたようだ・・・だが、レーガン家の血肉と家族の血によりキリクは蘇る」

ヴォルデモートは名前の左腕に広がる蛇の紋を触りながらクックックと恐ろしい笑いを零す。常人が今の彼の笑いを見たらきっとすぐさま恐怖慄くだろう。
残念ながら絶望の海の中にいる名前にとってそれはヴォルデモートの些細な変化に過ぎなかったし、何よりも恐れるのはモティマーだ。あの男は近々動き出す、必ず。

「両目もそろそろ赤くなってきたな・・・ククク、視界はどうだ?名前・スネイプ」

「・・・」

視力は随分と落ちた。左腕の蛇の紋が広がりにつれて…だ
同じレーガン家の者はレーガン家の呪いを強めることができると以前聞いたが、それを強めているのがモティマーだとしたら頷ける。
レーガン家の血が混じっているヴォルデモートにもできそうではあるが、今までの考えをまとめるとモティマーの確率が一番高い。

モティマーは僕らレーガン家を恨んでいる・・・・自分もレーガン家なのに。
それは何故――――?

そこだけがどうしても導き出せない。きっとクライヴならすべてを知っている、聞きたい、知りたい――――

「貴様がどうあがこうとも貴様は死ぬ、そして俺様の妹は蘇る」

この男はあの儀式がいかに無駄なことかを知らないのだろうか
この男はあの儀式の意味を知っているのだろうか―――――あの儀式は、再び失敗するだろう。そして呪いは何世代にも積み重なってゆく
彼女がけして蘇らない事実を知ったらこの男はどうなってしまうのだろうか。