61 それこそが、真実/謎のプリンス

悪夢の夜は―――――ついにやってきた
名前はその夜、ずっとうなされていた。全身がぎしりと軋んだように痛む。
そして左目が不気味に赤く光っていた。

外を見ると月が凛々と神秘的な空気をまとい、あたりには生き物の声が一切聞こえてこない。
左目が紅くなり、痛みがひどくなってきたのでセブルスの部屋へ行こうと静寂に包まれた廊下を歩いているときだった。

魔法がぶつかり合う音が聞こえてきた。何が起こっているというのだ―――――
名前は静かに杖を構えようとした、とたんの出来事だ。壁に激しく叩きつけられ、息をする間もなく何者かによって魔法で動きを封じられてしまった

「グレイバック、そんなに強く小僧を叩きつけたら内臓が破裂する。内臓を元に戻すのは誰がやると?」

「っぐ・・・わかってるよモティマー」

視界が曇っていてよくわからない。たぶん眼鏡が吹き飛んだのだろう
代わりに赤い左目だけがぎんぎんと光を放ち、あたりの様子をうかがった。

毛むくじゃらの男が一人、そして隣にはほっそりとしていてどこか気品にあふれた20代くらいの男が立っている

「グレイバック、君が失態を犯したらいつでも君を罰することができることを、忘れないでほしいね」

「っく、とりあえず、小僧を黙らせたんだからいいじゃねぇか」

「君には美学というものがないんだね・・・相手を暴力で黙らせる、これは僕の美学に反する。でも、結果オーライだね」

モティマーと呼ばれた男が近くまでやってきた。

「ふうん・・・やっぱり似てるね、あの男に。それに―――目元はアリスそっくりだ・・・」

何故母親の名を知っているのだろうか――――名前の思考はそこまでいきわたらなかった。ただ、どうやって息をすればいよいのか必至に胸を上下させていた

「君のことは全部知ってるよ…卿から聞いている。レーガン家の血を濃く引いてるんだって?だから呪にかかっちゃったんだってね?恨むならその血を分けた母親を恨むことだよ」

ぐわっと髪をつかまれ、名前は無理やり上を向く姿勢となった
あたりが暗く、その男の瞳の色や髪の色まではわからなかったが、ずいぶん整った顔だということだけはわかる

「おいモティマー、そろそろ小僧連れてずらかろうぜ」

「ふん、君に美学を求める僕が間違いだったようだ。さて、君を連れて行くけれども・・・あぁ、安心しなよ、君のパパももうじきやってくるさ。その前に君にいいものを見せてあげるよ。」

すると力のない体を毛むくじゃらの大男に持ち上げられ、ホグワーツの外に出た。

「じゃあ僕は先に卿の元にもどってるよ、じゃあまたね」

頭に力が入らず、今どの辺にいるのかもわからなかった。ただ、腕からは大量の血が滴り落ちているのは確かだ
たぶんそのせいで意識が朦朧としているのだ。そのおかげで左目の痛みもマヒしてきてしまった。

「・・・くを、・・・に」

「黙ってな小僧、舌を噛み切りたくなければな」

ぐんっと突然衝撃がきた。危うく舌をかむところだった

「フェンリールじゃな?」

ダンブルドアの声が聞こえた。いったい周りでは何が起きているのだろうか

「名前―――!」

ハリーの声も聞こえてきた。そしてどこからか小さくドラコの動揺した声が聞こえてくる

「そのとおりだ。しかしダンブルドア、俺が子供好きだということを知っているだろうな?」

「いまでは満月を待たずに襲っているということかな?異常なことじゃ・・・毎月一人では満足できぬほど、人肉が好きになったのか?そしてその腕にいる少年を食らうつもりなのかね?」

「いいやちがう、この小僧は主に差し出す手土産だ、少し手荒な手段だったがな…」

ぽたりぽたりと血は腕に伝い、滴り落ちる。
血の匂いがあたりに充満すると、グレイバックは声をあげた。

「あーくそ、喰らいてぇけど・・・」

「こらグレイバック、その小僧を殺したら――――お前、ただじゃ済まないよ」

「わかってるっての。」

ダンブルドアはグレイバックをギンと睨みつけ「多少嫌悪感を覚えるのを隠せないのう」と呟いた。

「それに、確かに驚いたのう。このドラコが、友人の住むこの学校に、よりによってきみのような者を招待するとは・・・」

「僕じゃない」

ドラコが消え入るように言った。グレイバックから目を背け、ちらりとでも見たくない様子だった。正しくは、おびただしい血を流す名前を見たくなかったからだろう
名前はどうにか頭を持ち上げ、ドラコの姿を見ることができた。一瞬目があったが、すぐそらされてしまった。彼の瞳には動揺と同時に悲しみが見える。ああごめんな、お前を助けられなかった。
名前は悔しさに唇をかむ力もなかった。

「おまえをデザートにいただこうか、ダンブルドア」

グレイバックはダンブルドアに向かってニタニタ笑いながら黄色い爪で前歯の間をほじった。

「だめだ」

四人目の死喰い人が鋭く言い放つ。

「我々は命令を受けている。ドラコがやらなければならない。さぁ、ドラコ、急げ」

ドラコはいっそう気が挫け、おびえた目でダンブルドアの顔を見つめていた。ダンブルドアはますます青ざめ、防壁によりかかった体がさらにずり落ちたせいで、いつもよりも低い位置に顔があった。

「俺に言わせりゃ、こいつはどうせもう長い命じゃない!」

歪んだ顔の男が言うと、妹がグググッと笑って相槌を打った

「なんてざまだ、一体どうしたんだね、ダンビー?」

「ああ、アカミス、抵抗力が弱り、反射神経が鈍くなってのう」

ダンブルドアが続ける

「要するに、歳じゃよ・・・そのうち、おそらく、きみも歳をとる。君が幸運ならばじゃが・・・」

「何が言いたいんだ?え?何が言いたいんだ?」

男は乱暴に言い放つ。

「相変わらずだな、え?ダンビー。口ばかりで何もしない。なんにも。闇の帝王がなぜわざわざお前を殺そうとするのか、わからん!さあドラコやれ!!」

ドラコには人をあやめられない――――――そんなこと、わかっていた
ドラコの家に行ったとき、教えてもらった秘密の任務。それはダンブルドアを殺すこと―――――
そうしなければ彼の両親は殺される。名前がなぜ生かされているかを知らないドラコにとって、何もせずに気に入られている名前がうらやましかったし、妬ましくもなったのだろう。おまけに父親は自分の功績を奪おうとしている―――なんという幻想も抱いているのだから
彼がもう少し、名前に心を開いていれば、名前を頼っていればこのような状況にはならなかったのかもしれない。ドラコの瞳からはそういった後悔の念がひしひしと伝わってくる。

「ドラコ、殺るんだよ!さもなきゃおどき。代わりに誰かが――――」

女が甲高い声で言った。ちょうどその時、屋上への扉が再びぱっと開き、セブルスが杖を持って現れた。

「スネイプ、困ったことになった」
ずんぐりしたアミカスが目と杖でダンブルドアをしっかりと捕らえたまま言った。
「この坊主にはできそうもない―――」

最悪な予感が胸をよぎった。
セブルスはしばらくグレイバックの腕の中で血を滴り落としている名前を見つめ、一瞬だがグレイバックに怒りの表情を見せたが再び、いつもの表情に戻ると弱ったダンブルドアに視線を戻した

「セブルス・・・・・・頼む・・・」

名前はやはり、と目を閉じた。やはり、こういうことになった
父上には破れぬ誓いがしてある。ドラコを守らなくてはならない。それに――――ドラコに人を殺めさせてはならない
ゆえにセブルスがダンブルドアを殺し、それによってドラコを守ることができる。

セブルスは杖を上げ、まっすぐにダンブルドアを狙う。

「アバダ ケダブラ!」

緑色の閃光がダンブルドアの胸にあたる。
ダンブルドアは空中に吹き飛ばされ、屋上の防壁の向こう側に落ちて、姿が見えなくなっていく。

「…うっ」

名前の瞳からはとめどなく涙が流れる

「おいおい、この小僧、泣いてやがるぜ」

「ここから出るのだ、早く」

セブルスがドラコの襟首をつかみ、真っ先に扉から押し出た。グレイバックとずんぐりした兄弟がそのあとに続いた
しばらくすると、名前は突然別の誰かに渡された。ずいぶん――――懐かしい匂いがした。

「・・・ち・・・う・・・・・」

「―――もうしゃべるな」

「―――ダン…ア・・・は・・・・」

「しゃべるなと言っているだろうが、馬鹿者」

名前はセブルスの腕の中にいた。セブルスは苦痛の表情を浮かべていた―――――
それもそうだろう、腕には血まみれの息子、止血する間もないのだから。

その後はよく覚えていなかった。ただ、意識を失う間際に、ハリーの叫ぶ声が、そしてセブルスの怒鳴り声がうっすらと聞こえた。

目が覚めた頃には、冷たくひんやりとした部屋にいた。
壁には蛇の模様、テーブルに置いてある銀色のマグカップが不気味に光を放っていた

「ようやく目覚めたようだね・・・おはよう、レーガン家の血を継ぐ坊ちゃん、無力の坊ちゃん」

そこにはモティマーが立っていた

「君が卿の妹君の人柱になるんだね・・・体にこびりついていた血とかはきれいにしておいたから安心してよ。」

腕を見ると包帯がぐるぐると巻かれていた。体を起き上がらせようとしてもうまく力が入らない

「君の魔力は少し封じてあるから簡単には動けないよ。それよりも、君が本当にアリスの息子なのかい?」

ぐいと指で顎を持ち上げられ、名前は視線を泳がせた
この者に目を合わせてなならない。自分の中のすべてがさらけ出されそうで・・・・・・

実際、このモティマーという男は名前に開心術をかけていた。

「まったく、頑固なところは彼女に似たかもね・・・それより、奴はどこにいる――――?」

名前は背筋に嫌な汗をかいた
奴――――もしかして、クライヴのことではないだろうか

「クライヴ・S・レーガンはどこだ。どこにいる、あの男は――――今、どこだ!」

怒鳴り声をあげ、モティマーは杖を取り出し、名前の左まぶたに杖を押しやった

「君は知っていたかい・・・?レーガン家のすべてを・・・知らないだろうね、大体の子供達はレーガン家の真実を知らずにして死んでゆく・・・」

君に見せてあげるよ、真実を――――

杖から放たれた何かが名前の頭にずかずかと入ってくる
拒絶しようにもろくに腕も動かない

口からは小さく悲鳴が漏れた

「あっ・・・・ぐっ・・・・・」

「痛いよね、痛いよね、痛いよね――――僕なんか、もっと痛かったんだからね」

「ぐっ・・・・あああっ」

どんどん視界がゆがんできた・・・そして見えてきたのは一つの屋敷
そう、レーガン家の屋敷だ。

「ローズ様の骨で杖を…ですと?!」

「ああ、君ならばできるだろう、最高の杖職人の君ならば・・・」

「で、ですが・・・」

「これはこの忌々しい家への呪いだ、一生解けぬ呪――――母上を殺した父上に対しての・・・」

一人の男が骨壺を持っている。
杖職人の男がしぶしぶ骨壺を受け取ると姿くらましで消えていった

「母上――――もうすぐ、この家に制裁が下されます…どうか…」

場面は一変して、不思議な霧に包まれている部屋に変わった
床には巨大な魔方陣、そしてそこに横たわる女性の姿・・・

それを見つめる一人の男の姿があった

「―――母上…」

その女性の触れようとしたとたん、手をはじかれた。男はショックを隠せず目を見開いた

「母・・・上・・・」

「お前は誰、お前のような子、私はしらない、お前は何者だ」

「母・・・上・・・そ、そんな・・・・」

男は床に崩れ落ちた

「うわああああっ母上・・・そんなっ、僕の定理は間違えてはいないはずなのに…ッ」

母上は――――姿かたちは母上だが、まったくの別人として生まれてしまったのだ――――
男は白い杖を持ち、その横たわる女性に向けて放った

「母上の姿をした化け物め――――呪ってやる、呪ってやる……」

男は不思議な呪文をその女性めがけて放つと、その女性はとたんに息絶えた。

レーガン家の呪いが何者かによってかけられたのが判明したのはいいが、名前は結局何もできずにいた
モティマーが部屋を出た後、名前は悪夢にうなされた。先ほどあの男がかけた呪いによって左目はじんじん痛み、夜には悪夢にうなされた

その後、ダンブルドアはどうなったのだろう・・・葬式が行われたのだろう
そしてドラコは・・・父上は―――――

名前に様々な事を考える余裕など無かった。
ただ、呪いによる痛みに耐えるしかなかったし、動けぬ体に苛立つしかなかった。

何故動かないのだ、何故動けないのだ
魔法も無論のこと使えなかったし、ここまで自分が無力だと思い知らされるのは生まれて初めてだ。

「っぐ―――――」

体をかろうじて起き上がらせることまではできるのだ。しかし足にも一切力が入らない
だからこうして壁を見つめることしかできない。蛇の模様がまるで自分を縛りつけているようにも錯覚する

何故クライヴが助けに来てくれなかったのだろうか―――――
あの時、クライヴか来てくれればダンブルドアも死ななかったし、ドラコも守ることができた。
でも何故―――――

その時、ガチャリと重たい扉が開いた
そこには随分やつれたドラコの姿。

「き――――君が人柱に使われるなんて―――――しらな、かったんだ・・・・」

蒼白そうな顔でドラコがその場にへたりこんだ

「僕――――君に――――」

「・・・ドラコ、無事そうで何よりだ―――――」

ドラコが無事でよかった。今まで心配で仕方がならなかったが、ひとまず元気ではないが無事な姿を見て名前は胸をなでおろした

「父上は・・・今何をしているか知っているか・・・?」

「・・・わ、わからない」

「・・・そうか」

でも、無事そうなのは確かだ。再び胸をなでおろした
ドラコが恐る恐る名前の横たわるベッドにやってくると、冷たい手を伸ばし、名前の手を握った

「僕・・・君の親友失格だ・・・君に守られてばかりで・・・・今度は、僕が護るから・・・・自分が愚かだったんだ・・・」

ドラコの瞳からはぽろぽろと涙が流れ落ちてくる

「僕・・・大変なことをしてしまった・・・でも・・・父上や母上を守りたかったんだ・・・」

「もういい・・・わかってたさ、そんなこと・・・お前が無事で何よりだ・・・二人で、お前の両親を助けよう」

「―――――名前、僕っ――――血まみれの君を見たとき、怖くなったんだ……君が、その…死ぬんじゃないかって―――――」

「また・・・いつか二人で・・・賑やかなホグワーツで・・・・・いろんな話がしたいな」

「―――――ううっ」

ドラコは力なくベッドに顔をうずめた。そんなドラコの背中を名前は優しく叩いた

「僕は―――お前といつも一緒にいる・・・・・・・・だから・・・・」

「君を――――助けてみせる…この、命にかけても――――」

ガチャリと平穏をかき乱す、扉の音が聞こえてきた

「マルフォイ、面会時間はとうに過ぎているよ・・・」

「――――モティマー…」

ドラコはモティマーを見た瞬間、怯えた表情を浮かべた
そして名残惜しそうに部屋から出てゆくと、そこには神妙な顔をしたモティマーと名前だけ

「あれが君の友達?ずいぶん弱腰な友達だねぇ」

「―――ドラコを、悪く、言うな」

「まぁ好きに足掻くといいよ、僕は君たちにまだ恨みを晴らしていない。卿も認めてるからね、僕が君たちに恨みを晴らすまでは儀式を行わないってね」

つかつかと名前の近くへやってくると、ベッドに腰をおろした
冷たい瞳が名前を射抜く。

「―――君が過去に来ていたことも知っている、それは卿の妹君がやったことだっていうのも、知ってるよね?」

やはりか――――名前はこくりと頷いた

「君が過去に卿と会ったとき、実は僕もその場にいたんだよ――――多少変装はしていたけれども。こうして再び会うとは・・・不思議なめぐり合わせだね」

誰がそうしているんだ、名前はモティマーを睨みつける

「ここだけの話、実はね、君のお友達をお仕置きしようって言ったのは僕なんだ、そうすれば君が苦しむかなって思って」

名前は腹から湧き出てくるこのどす黒い感情を必死に抑えていた。すべてはこの男のせいだったのだ
怒りを抑えるので必至になり、唇をかんだ

「ああ怒ってるね、君が表情をあらわにするなんて珍しい。ふふふ、よかった。じゃあ成功したんだね」

ベッドから降り、壁にかかっている蛇の紋章を杖でつっついた

「知ってた?これレーガン家の紋章なんだよ。妹君を復活させるのにちょっと必要なものだからここにしばらく置いてるんだけど・・・触りたい?」

にこりとモティマーは笑う
ああこの男が憎たらしくて仕方がない。でも感情に任せてはこの男が喜ぶだけ、抑えるんだ――――

「ふふふ、ルシウスもナルシッサも、僕を見ると息子を助けてくれだのうるさくてね・・・・この間クルーシオかけたら死にそうになってさ、ちょっぴり卿におこられちゃった。」

だめだ、だめだ感情に任せては――――

「僕はどの死喰い人よりも卿から信頼を得ている。だから僕を他の死喰い人は恐れるんだ――――僕には彼らを好きにできる権力を持っているからね。まぁ卿の命令は絶対だけどね」

「―――おまえは、何故僕を・・・恨んでいるんだ」

「うーん、まだわからない?それに僕の話を聞いていないようだね―――僕は”君たち”が憎いんだ。」

君たち――――?
自分のほかには・・・いったい誰のことを指しているのだ

「ヒントたくさんあげてるはずなんだけど・・・まぁいずれわかるからいいよ。まったく、僕はおしゃべりが好きじゃないんだ、ちょっとイラっとしたから君にはお仕置き」

ひんやりとした杖がのどに当たる
そして間もなくクルーシオと唱えられた。名前の体は呪文の痛みに喘いだ

名前はこの部屋に長らくいすぎたせいで、今が何月何日なのかすらもわからなかった。
それにあれ以来モティマーはドラコと名前を合わせようとはしなかったし、モティマー自身もあまり部屋に来なくなった
ベッドに横たわる名前を面倒みるのはナルシッサの仕事だった。
最近はナルシッサにしか会っていない

ナルシッサもナルシッサで名前とは一言も口を聞いてはならないと命令されているのか、ただ淡々と名前の身の回りの世話をした
彼女が出て行った扉の外からは彼女のすすり泣く声が聞こえてくる。彼女も彼女で、名前が人柱になることが悲しいのだ

いつになったらモティマーの恨みが晴れるかもわからない。だからいつ、自分という存在がいなくなるのかもわからなかった
不安な日々は名前の精神を確実にむしばんでゆく。
そもそもなぜ、あの男が自分を恨んでいるのかが分からない

せめて・・・せめて足が動くようになれば―――――

「クックック、もうすぐすべてが俺様の思うがままになる・・・あとは、あ奴を始末するだけ・・・」

暗い部屋で、ヴォルデモートは愉快そうに笑った
モティマーはそれを眺め、自分の首から下げられているロッドを握り、憎々しげにつぶやいた

「―――クライヴ」

「モティマー、あの杖の居所は分かったか?」

「いいえ―――小僧がクライヴの居所を割りません。流石はレーガン家の血とスネイプの血を引いてるだけあって・・・」

突然ヴォルデモートに声をかけられ、モティマーははっとした

「ですが、おそらくあの小僧もクライヴの居場所を知らないのだと思います―――セブルス・スネイプも知りませんでしたし・・・それに、あの男のことです・・・・・きっとダンブルドアにすら自分の居場所を知らせていないことでしょう」

「ふん・・・そうだろうな、あいつには昔、それで痛い目をみさせられた―――今度は、今度こそはあ奴を始末してみせる・・・」

あの時の俺様とは違うのだ・・・そう、自分に言い聞かせながら。