55 それこそが、真実/謎のプリンス

いつか君の仕返しをすると言ってきかないドラコを横目に夏休みは過ぎて行った。今日からは新学期だ。

「・・・気をつけるのよ、二人とも」

「はい」

「はい、母上」

ドラコの横顔には強い決意が見えた。僕は・・・はたしてこの人たちを守ることができるのだろうか。名前の心配は絶えない。列車が出発してしばらくすると、嫌な招待状が名前に届けられた。

「はぁ…スラグホーンだ…」

「名前、どこへ行くんだ?」

急に立ち上がる友を心配そうに見つめるドラコ。

「あぁ…ちょっとした用事だ。平気だ、すぐ帰ってくる…たぶん」

あのスラグホーンが目をつけた生徒をすぐさま帰すとは到底思えなかったが、今はすぐに帰らせてくれるという希望を抱くしかなかった。言われたとおり、スラグホーンのいるコンパーメントに来た。そこには見覚えのある生徒が数人、名前を見上げていた。

「ブレーズ…?」

「名前…やはりお前も呼ばれたようだな、まぁお前は必ず呼ばれるだろうと予想していた」

「…あぁ、呼ばれてしまったようだ」

名前は同級生ザビニの隣に座った。

「おやおや、ようやく来てくれましたね名前!」

過去の世界へ行った時、彼は名前の魔法薬に関しての出来の良さを知っているし他の授業でもトップを走っていることも知っている。
手招きして自分の隣に座らせようとしたのだが、ハリーとネビルがやってきてくれたおかげで隣は免れた。

心の中でハリーに感謝した。
ハリーはコンパーメントを見渡し、名前を見つけて気まずそうな表情を浮かべた。

「よく来た、よく来た!それで、君はミスター・ロングボトムだろうね!」

ネビルはどこか怯えたようなにハリーの後ろに隠れた。

「さーて、みんなを知っているかな?ブレーズ・ザビニ、名前・スネイプは君たちの学年だな―――」

ザビニは挨拶もせず、名前と話をしていた。

「こちらはコーマック・マクラーゲン。お互いに出会ったことぐらいはあるんじゃないかね―――?ん?」

はぁ…
名前はまだまだ続くスラグホーンのお食事会に嫌気がさしたのか溜息を吐いた。

「…わかるよ、お前の気持ち」

小さくザビニがつぶやいた。
そんなとき、突然話が名前の話へと変わった。飲んでいたかぼちゃジュースが気管に入ってむせた。

「さぁ今度は名前・スネイプ――――君だ。君の父君はここにいる彼らも知っている通り、スリザリンの寮官でもあるし魔法薬の才能もピカイチなセブルス・スネイプだな。」

「…は、はぁ…」

できれば早く話を終えてほしかったがそうはいかなかった。

「君の母君は純血家でも有名な…そう、ブラック家よりも遙かに有名な一家、レーガン家の長女、アリス・レーガンだったね。彼女は何をやっても完璧にこなしてみせた…まさに最高の魔女だった」

「はぁ…」

「君はしっかりご両親の血を受け継いだようだね…聞くところによると、学年1位だとか…君のOWLの成績を見させてもらったが・・・いやぁ、実に感動したよ!」

名前の話のところだけ他の生徒達より長かったような気がする。ようやく話が変わってくれた頃には周りがもう暗くなっていた。ようやく解放されたブレーズと名前はドラコのいるコンパーメンとに戻って行った。しかし後ろからハリーがつけているということには気づかなかった。

「どうなってるんだ!?」

扉が閉まらず、倒れこんだザビニが言う。

「…大丈夫か」

「あぁ…まったく…何だっていうんだ…」

一瞬、スニーカーが見えたのは気のせいだろうか。名前はドラコと同じ方向を見ていた。

「それで名前、ザビニ、スラグホーンは何が狙いだったんだ?」

「いいコネを持っている連中に取り入ろうとしただけさ」

ゴイルをにらみつけながらザビニが言う。

「あいつ、相当名前が気に入っているようだな」

「…まぁ利用してやるだけさ」

名前が本の世界にしばらくどっぷり浸かっていたせいもあって、あっという間にホグワーツに到着した。闇の印は今もずきずきと鈍い痛みを発している。

ホグワーツに到着し、調べたいことがあるというドラコよりも先に名前はホグワーツへ、セブルスのいる私室へと足早へ向かっていった。

「父上…一体僕はどうしたらよいでしょうか……なんだか、わからなくなってきました…」

セブルスは部屋の付近に誰もいないことを確認し、防音呪文をかけた。

「…お前はお前であればいい。できる限り例の儀式は遅らせるつもりだ…だが、闇の帝王は妹君の復活を早めるそうだ…」

「――――それは・・・」

トム・マールヴォロ・リドルの最愛にしてたった一人の家族、キリク・マールヴォロ・リドル。名前の身体を使い、彼女をよみがえらせるのが彼のもう一つの野望でもある。たった一人の最愛の息子を守べく、セブルスも闇側で躍起になっているようだが、事はあまりいい方向へは進んでいないようだ

「……1年後だ…」

それは、名前の命のカウントダウンでもあった

あと1年で僕という存在はこの世から………

名前はただうなだれるしかできなかった。うなだれる我が子をセブルスはむせび泣きながら抱きしめる。
変われるものならば自分が、だけどそれは許されないこと。

今抱きしめているぬくもりが。
アリスとの愛の結晶が、彼女が愛した一人息子が。

我輩のたった一人の家族……息子が…

消えるというのか?

―――――神よ、我らを救い給え…

日頃神なんて信じてないセブルスだが、こうなると神に縋るしかない。クライヴもクライヴで過去との決着をつけるべく動いている。
我輩が今できることは――――…

「名前…どうか我輩の前から消えないでくれ」

自分と同じくらい大きくなった息子を抱きしめることだけ。こんな時…君がいてくれれば……………アリス…

広間へ向かうとドラコが人を近寄らせない雰囲気を出しながら席に座っていた。周りにはいつもの取り巻きがいないのもそのドラコの雰囲気のせいかもしれない。
彼も彼で必死に家族を守る術を探っているのだ。彼の本当の味方は自分しかいないのだから。

名前はただ黙って、ドラコと向き合うようにして座った。
特に会話なんてなかった。だけど、ただいるだけ、それだけでいいのだ。今、ドラコには親友という僕の存在が一番必要なのだ。

ふとグリフィンドール側を見るとハリーがロンと何か憎々しげに話していた。ハリーはあんなにも仲間に囲まれている。
だが闇側のドラコ達には…?彼らは常に孤独、闇が彼らを孤独にしているのだ。

ダンブルドアの話もあまり耳に入ってこない。名前はずっと黙ってドラコを見守っていた。
何故だろう、左目がジンジンと嫌な痛みを発している。学校へ来てからずっとそうだ。

この不吉な痛み――――――…
去年を思い出してみた。

シリウスが死ぬ前もこんな痛みだったっけ…

とたんに名前は手に持っていたナイフを机に勢いよくさした。あたりは一気に静まりかえる。
ドラコも驚いているようで、目を丸くして名前を見つめた。

机には罅が、そして銀色のナイフが美しくも、不気味に輝いていた。

「…すまない。先に部屋に帰ってる」

名前が広間を去った後も静寂は続いた。

「今度は・・・・・・誰が死ぬんだ・・・・・」

鏡に映る真紅の瞳。自分を思いっきり殴ってやった。左目は粉々に、自分の顔がどんどん歪んでゆく。左腕に流れる血なんか気にならなかった。床に座り込み、そのまま意識を失ってしまった。
防衛術の主任になったセブルスの授業を今日初めて受けた。
家で教えてもらっていたときのよりかは幾分やさしい内容のようだが、普通の生徒ならついて行くのも必至だろう

…本来はこういう教科なんだろうが

名前はノートをまとめつつも隣にいるドラコの目を見つめた
大分顔がやつれている。たぶん毎晩あんまり眠れていないのだろう…まぁそれを言うなら僕もだがな…

名前の教科書には細かなメモがたくさんあり、名前オリジナルの魔法もいくつか書かれている。暗号化しているから名前にしか読めないのだが
授業を終えた二人は図書館へと向かった。6年生になると他の学年より自習時間が増えるのだ

この時間にドラコは様々な調べ物を、名前は読書をしている
親友が一体何を調べているのかなんてわからないけれども、きっといつしか教えてくれるときがくるだろう
そう信じ、今日も名前は何も聞かずただ黙って、友の背中をそっと見守り続ける

「今日はあいつの授業か…」

久々にドラコが口をひらけばグリフィンドールと合同の魔法薬学の授業の話だった

「…僕も嫌な予感がしてならない」

「奴のお気に入りの君をほうっておくはずがないだろうね……人目にあまり出たがらない君は疲れるだろうね」

「あぁ…実に。だが取ってしまったものは仕方がない…」

重たい足をずるずると引きずりながら教室に入った。もちろん席は一番後ろ…が安全かな、と思ったが真ん中あたりしかあいておらず、長話をして席を取れなかった自分を悔いた

ちらりと向こう側をみるとハリーの姿がった。ハリーもこちらの視線に気づいたのか、名前とドラコを軽蔑を込めた眼差しで見つめそっぽを向かれてしまった

「さて、さて、さーてと」

スラグホーンが言った。巨大な塊のような姿が幾筋も立ち昇る湯気の向こうでゆらゆら揺れて見えた

「みんな、秤を出して。魔法薬キットもだよ。それに上級魔法薬の…」

話はハリーとロンがこの授業を今年受けられるかわからなかったから用具をまだ整えてないという話で遮られた。名前は心の中でこの話でスラグホーンはハリーのほうばかりを見つづけ、自分の存在を忘れるようにと念じた
ハリーには申し訳ないが、この授業では犠牲になっていただこう。名前は物音を立たせないよう、静かに道具をだした
なんせ人数が少ないのだ。目立ったことを少しでもすれば相手はすぐさまこちらへ駆け寄ってくるだろう

授業は着々と名前が望むように進んでいった
今やスラグホーンはハーマイオニーのことでいっぱいのようだ。

「君はフェリックス・フェリシスが何かを知っているね?Ms.グレンジャー」

「幸福の液体で、人に幸福をもたらします!」

クラス中が背筋をただしたようだった。ドラコもついにスラグホーンに全神経を集中させたらしく、ハリーのところからは滑らかなブロンドの髪の後頭部しか見えなくなった。

「そのとおり。グリフィンドールにもう十点あげよう。そう、この魔法薬はちょっとおもしろい、フェリックス・フェリシスはね、調合が恐ろしく面倒で、間違 えると惨憺たる結果になる。しかし、正しく煎じれば、ここにあるのがそうだが、すべての企てが成功に傾いていくのがわかるだろう…少なくとも薬効が切れる まで」

フェリックス・フェシリスを以前調合したことがあった。これは確かに今まで作ってきた薬の中でも難しいもので、父の助けのもとにようやく完成し、今は部屋でほこりをかぶっている

「今日の授業の褒美として、この小瓶一本を提供する」

あたりの息をのむ音が聞こえてきた

「十二時間分の幸福に十分な量だ、明け方から夕暮れまで何をやってもラッキーになる」

そしてスラグホーンはこの薬についての警告を言い、生徒に課題を出した

「この素晴らしい賞をどうやって獲得するか?さぁ教科書10ページを開くことだ。あと一時間と少し残っているが、その時間内に『生ける屍の水薬』にきっち りと取り組んでいただこう。これまで君たちが習ってきた薬よりずっと複雑なことはわかっているから、誰にも完璧な仕上がりは期待していない。しかし、一番 よくできたものが、この愛すべきフェリックスを獲得する。さぁ、はじめ!」

最後、一瞬名前をみてにっこりと笑ったのは言うまでもない

期待しているよ、と顔にかいてある

ドラコは名前のため息に気付いていないほど、教科書とにらめっこをしていた
名前はもちろん調合の仕方も材料も知っている。誰よりも作業を始めたのは名前だ

名前は父の魔法薬を超えることが夢であり、父とは全く違った調合法で父の作り出す薬よりも上のものを目指している
さて、今回この薬をどの方法で調合しようか…