48 それこそが、真実/不死鳥の騎士団

「……ふああぁ…。あ、あれ?俺寝てたのか…」

クライヴはむくりと起き上がると本を顔に乗せて規則正しいリズムで寝息を立てる名前を見てようやく現状を理解した

「あ…やべ。俺あのまんま寝てたのかー。名前には悪いことしたなー…隣の食事が食いかけなのも俺が枕にしていたせいか…」

罪悪感を感じつつも久々によく眠れたことに感謝した

「…起きたのか?」

しばらくして名前が目を覚ました。

「あぁ。悪かったな、俺がお前を枕にしてたから…」

「いや、気にしなくていい」

「…その、代わりと言っちゃぁなんだけどさ…俺が食事をつく」

「遠慮しておく」 「…なんだよ、俺料理プロいんだぜ?」

「遠慮しておく」

「…わかったよ」

クライヴの料理には前科があった。
以前手料理で酷いめにあったことがあったので、以後彼の料理は一切口にしないようにと騎士団の中での注意事項が増えたとか
丁度昼なのか、タイミングよくセブルスが部屋へやってきた。クライヴが目覚めたことに気づいたのかクライヴの分の紅茶を出してくれた
「…起きたのか」

「親子揃って同じこというな~。起きたのはさっきだよ」

「そうか。名前、レポートはここに置いておくぞ」

「ありがとうございます父上」

どさりと大量のレポート…ふつうの生徒なら自殺したくなるほどの量だが、残念ながらここの部屋には普通レベルの頭脳の持ち主はいなかった。名前は静かにレポートの山を見つめ、すでにどういう内容にするかを頭の中でまとめていた
「うひゃー懐かしいなぁ。俺、学生のとき勉強嫌いだったなぁ~」

「成績優秀、学年で1番の成績を誇るお前がか?」

「…どこでそんなこと調べたんだよ。あ、アルバスからだな」

セブルスだって成績は決して悪くはなかった。むしろ頭のいい類に入っているほどに。つまりここの部屋は秀才の集い…そんなもんだ。
ちなみに名前の成績は現在もハーマイオニーを上回るトップ成績をキープし続けている。しかしクライヴとトム・リドルの成績なんてもっと高いのだという。目の前でへらへらとやんちゃに笑うクライヴがどうしてもそういった類の人間だとは思えなかった

「…何で俺をにらみつけるんだよ」

「…睨んではいない、考え事をしているんだ」

「あーそうそう、この間階段からブランデーこぼしちゃって…下のリーマスにぶちまけちゃってさ、ほんと、死ぬ思いをしたよ~あー、思い出すだけで鳥肌が立つね!」

………本当にこの男がホグワーツ始まって以来の天才のうちの一人なのか?
「久々のホグワーツでも楽しもうかね」
このクライヴの発言を聞いた瞬間、妙な汗が流れたのは事実だ
そしてこれから起こりうるであろうことも…

「…教師以外の大人がホグワーツをうろちょろしていると怪しまれるぞ」

「それもそうだったな。よし、生徒になり済まそう!そうと決めたら~名前の上の学年がいいよな♪」

セブルスと名前の制止の声虚しく、クライヴは着々と学生へ変身していった。終いには本当に在学しているかのようにも見えるクライヴ…。目もとのクマや、やつれたぼさぼさの髪は魔法で整えているから近くから見ても17か16歳の青年にしかみえない。
大人になってここまで学生服が似合う人なんて今後一生見れないだろう。名前はしっかりとクライヴのこの姿を呆れつつも目に焼き付けておいた

「かんせい~♪」

「…頼むから面倒事だけは起こさないでいただきたいものだが」

「わかってるってセブりん」

「その呼び方もやめろ。少なくともお前は我輩の寮生であり生徒なんだからな」

「へいへーい。じゃ、俺は一足早くシャバの空気を味わってくるぜ!」

どこの不良息子だ、なんて口には出さないがクライヴを見て短く溜息ついた
いや、でも正直なところクライヴが自ら休みを取ってくれるのはセブルスたちにしてもうれしいことだった。毎日毎日無理をしているのだから、今回くらいは休 んでもらいたい。それにホグワーツのことを生き生きと話す彼の姿はとてもまぶしかった。こんなに生き生きとしているクライヴを見たのは初めてかもしれない

「ダンブルドアに今手紙を出してきたところなんだけどよ…しばらくはこの姿のままでいいってさ~。監督生には今まで病気でこれなかったって言ってあるってさ」

「…ずいぶん準備のいいことで・・・とりあえず、我輩たちに迷惑をかけなければそれでいい。」

たち、というところを強調して言うセブルス
やはり彼は父親なのだ

「へいへーい。でも名前はしばらく授業出れないんだろ?」

「…あと一ヶ月は無理だろう。薬を煎じるのにそれぐらいはかかる」

最初は1週間くらいだと思っていたが、まさかここまで長くなるとは思ってもみなかった…………名前は絶望したい気持ちになった
そんな名前に気を配ってか、クライヴはそっと肩を叩いた

「まぁあと一ヶ月なんてあっという間だよ、うん。俺がお前の分までホグワーツを楽しむからさ」

「…ありがとう」

慰めになっていないけれども今はその気持に感謝した

「じゃーなー。俺はこれからセブりんと一緒に広間へ行くから。あ、あと俺…レーガンの名前を名乗るといろいろと厄介だからトム・スミスって名乗るからさ!」

「…あぁわかった」

しかしなんともありがちな名前だな…そう言うがすでにその場に二人の姿はなかった。
名前の声がむなしく部屋の中に響く

「…それにしても一ヶ月とは痛いな」

今年に入ってから急激に魔力のコントロール力が落ちたのはきっと今年何かが起こるからだ。今自分が部屋で静かにしていないといけないのはきっと何か理由があるからに違いない

きっと、ほんの些細な出来事の一つ一つに意味がある
名前は部屋から持ってきていた呪文集(名前オリジナルの)を取り出し、呪文を勉強し始めた。一つでも多くの呪文を…一つでも誰かを守れる呪文を、と

そして久々に夢を見た――――――――

そう、あのひとの夢を………
『…やぁローズ、今日もいい天気だね』

美しい黒髪の女性は虚ろな目をくるりと食事を持ってきた男性へ向けると一言放った それはとても残酷な言葉

『…殺して頂戴、わたしを殺して…』
(死にたいの…お願い、セブルス………)

この女性の言葉がどうしても母親の最期の言葉とかぶって聞こえる
嫌だ、聞きたくない、やめてくれ、思い出させないでくれ

『愛しているよローズ、お願いだからわたしの名前を呼んでくれ・・・』

男はそのやつれた手をぎゅっと握るが…

『―――…恨むわ、恨みますわ…あなた方一族には死よりも恐ろしい呪いを――――一生この呪縛から逃れることはできません』

『…ローズ!』

『あなた方一族は絶望という淵に縛られるでしょう、一族は長生きせず、子供には恐ろしい夢が降りかかるでしょう…』

その口からでてくる言葉はすべて心のこもってない…機械のような言葉だった
それでも尚、ローズに泣きついてくる男・・・恐らく初代当主のクライヴ・S・レーガンその人

もうこの女性の中には魂なんてもの、入ってはいないだろう
虚ろな目がそれを物語っている

(セブルス…お願い、わたしを殺して………もう、嫌なの…生きることが)

やめてくれ

(もう…夢に蝕まれていくのは嫌……だからお願い、)

やめてくれ・・・やめろ!やめるんだ!!

母親…アリスの最期はまるでローズの状態とさほど変わらなかった
瞳にいつも宿っていたあの暖かな光も消え、空っぽな心、虚ろな瞳

(お願い………………コロ・・・・シテ?)

うわぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!

がばっと起き上がる
部屋を見回す…よかった。これは夢だった

それにしても―――――――

「なんて…悪夢だ」

一番見たくない母親の最期が再び夢で現れるなんて…
名前は汗でびしょぬれの部屋着を脱ぎ、洗面所へ向かった

ゾクリ

「…な、何なんだこれは」

薬で抑えてあろう左目が…いや、両目が不気味な赤さを灯していた
その瞳はまるで…そう、ヴォルデモート卿のような……

その瞬間、再びあの嫌な痛みが左目を襲う
今回のは酷いものだった………まるで左目が今にも爆発しそうなくらい

「ぐ…あぁぁあああ………!!!」

酷い痛みだ
いや、酷いという言葉で表せるものじゃない

まだ試作品の段階だからあまり調整はできていないので、相当な時以外使うなと言われていた薬の瓶の蓋を勢いよくあけ、がぶりと飲み干した

パリン

瓶の割れる音が冷たい地下室に響き渡る

「…はぁっ……はぁっ…」

たった数分がまるで何十時間にも感じ取られる悪夢の時間
足に力が入らなくなってずるりと倒れこんだ。瓶の破片が薄暗い地下室の中できらりと光るのがわかった。そして・・・どどどどどと誰かの走ってくる音が聞こえる

ああ…もうだめだ

名前は意識を手放した。
とりあえず今回、病気が少し軽くなったという嘘でホグワーツに学生としているクライヴは先生方に挨拶をしている時だった

「…あら、あなたがMr.スミスですね、校長から話は聞いています…」

「よろしくおねがいします」

…おい、これってもしかしてミネルバだよな?グリフィンドール監督生の…老けたなぁ。

騎士団員だが、実は面会したのは今日が初めてだったりする
マクゴナガルはクライヴの考えていたことを察したのが、ほかの先生にわからないように睨みあげた

…相変わらずこえぇよ!なんせグリフィンの雌豹…いや、なんでも

クライヴは鋭い視線を感じながらも着々と挨拶を終え最後に…

「Mr.スミス、よろしく。わたくしはアンブリッジですわ、お互い仲良くしてゆきましょうね」

…この笑顔がスリザリンくせぇな。つかこのオバサン何?この斬新なファッションは一体……昔トムにいたずらで着せた服にそっくりじゃねーか(その後殺される寸前になったけど)

「あら?どうかなさったの?」

「あ、いいえ。こちらこそよろしくおねがいします」

軽く会釈し、部屋を後にした。
セブルスたちからは厳しく「何もするな」と言われているので何かしなくてはならないという義務感で心はいっぱいだった。ああ、何をしようかな!!

微妙なスキップをしながらホグワーツを歩いていると早速生徒たちがたくさんいるところに出た。クライヴを見て何やらひそひそと話している女子生徒を無視し、ハリーたちのところへ向かう

「…!あなた……まさか」

「よっす、ちょっと遊びに来たんだ。へーきへーき、ちゃんと許可取ってるし!」

やはりここにクライヴがいることに驚いていた。ロンなんか口をあんぐりとあけて面白い表情をしている

「ちょっと潜入捜査も兼ねてるんだよね……だから秘密な!俺、ちょっとの間ホグワーツにいるから何か困ったことがあれば何でも聞けよ!」

そう言い彼らが何かを言う前に足早にその場を去っていってしまった

「あ、やべ、名前かえてるこというのわすれてた・・・・・・ま、いいか!」

クライヴが去った後、相変わらずロンは口をあんぐりとさせていた。
ひとまず談話室に人がいないことを確認して静かに話し始めた

「…どうしたんだいロン?」

「ねぇ…まさかクライヴってすごい昔の人だったりする?」

「…え?そりゃぁそうだよ……ヴォルデモートの杖に封印されていたらしいんだ。だけど僕も不思議で仕方がないんだ。きっとヴォルデモートはクライヴに特別な力があると思って封印してたんだよ」

「そうとは限らないわ…」

ハーマイオニーは一刀した

「え…?どういうことだい?」

「そう読むこともできるかもしれないわ・・・だってクライヴは魔法省が崇拝するレーガン家の人間ですもの。だけれども…もし違ったとしたら?」

ハリーとロンはレーガン家が魔法省に崇拝されていることに驚きエー!と声を上げたがハーマイオニーはそんな2人を無視して話を続けた

「あぁ!私ったらなんでこんなことに気付かなかったのかしら!!もう!」

「ええ?え?どういうことだよハーマイオニー」

「だーかーら!・・・・・・・クライヴがもし、もし、よ?例のあの人の友達だったら…?」

「…そんなはずはないよ、トム・リドルは友達なんか作るやつじゃないよ、それくらいわかるだろ?あいつに心なんて存在しない」

秘密の部屋でのトムリドルを君たちは見ていないからわからないんだ、とハリーは続けたがそれを意外な人物が遮った

「・・・・もしかしたら本当かもしれないよ、ハリー」

「ロン、君まで僕のいうことがわからないのかい!?」

「聞いてくれハリー。僕、ちょっと昔にウィーズリー家のアルバムみたいなのを見つけてみせてもらったんだ。ちょうど50年くらい前の写真だったと思う…僕 のおじいさんの写真の中にクライヴにそっくりな人を見つけたんだ…絶対クライヴだと思う。しかも周りはみんなグリフィンドールなのに、その人だけがスリザ リンなんだ…」

「…それ、本当かい?でもどうしてそれでクライヴがヴォルデモートの友達なんだい」

「おじいさんが教えてくれたんだ…この写真に写っているスリザリン生には大親友がいて、その人はスリザリンの監督生なんだって。その監督生はホグワーツでも有名ですごく女の子にもてたんだって…それに、悪い噂もあった・・・・・・・」

2人の生唾を飲み込む音が談話室に響いた。