リーマスとのパトローナス特訓をして3日が過ぎた。名前 は父親の言うとおり本当に3日で習得してみせた。守護霊はバジリスクでそれにはリーマスも驚いていたが、それ以上にこんな幼い年齢で会得してみせた名前 の才能に驚かされた。
大人の魔法使いでも難しいと言われているパトローナスをわずか3日で習得できたのもただ才能があったからだけではない――――心も強いからだ
「・・・・・・君は、本当にすごいね」
「リーマスの教え方が上手だったんだ」
「僕の力じゃないよ、僕はただ背中をそっと押しただけ―――本当に君は凄い。こんな優秀な生徒、もう一生会えないだろうね」
リーマスは名前 の才能と心の強さに驚き、関心していた。才能があるのもそうだが、子供なのにこんなにも心が強くて・・・しっかりと前を見ていて。リーマスにとって名前 はかなり眩しい存在だった。
「・・・今日でもう終わりだけれども・・・・・・あと数日経てばホグワーツでも会える。何かあったらすぐおいで、力になるよ。それとハリーを支えてくれたら嬉しい」
「・・・あぁ」
ハリーは恐らく名前 よりも弱いだろうから。頭ではなく、心が――――――
「わかった・・・」
「君も、無理をしないようにね・・・・・・君にはどうやら持病があるらしいから」
「・・・ありがとう」
リーマスと最後の語らいをし、玄関まで送っていったときである。家に日刊預言者新聞がきていることに気付き、ふと読んでみると相変わらずシリウスの記事ばかりだった
「・・・名前 気をつけるんだよ、シリウス・ブラックには」
リーマスの口から、そんな言葉・・・聞きたくなかった
「――――本当に、そう思っているのか?」
「っえ?僕は君を真剣に心配―――――」
「違う、そういうことじゃない――――リーマス、そんな事を言ってはいけない。何故信じられないんだ、友人を――――」
「―――ッ知ってたのかい・・・?彼と僕らが・・・」
「・・・知っていた。」
「・・・それもそうだよね、だって君はあのセブルスの息子だ・・・・・・知らないはずは無いよね」
リーマスの瞳は揺れ動いていた。
「・・・僕は、シリウスが人を殺すような奴では無いと信じている」
「――――――え」
いつも通りシリウスとついつい呼んでしまったが、どうやらリーマスはそれには気付いていないようだ。
「シリウス・ブラックは、そんな人間じゃない」
「―――ッ君に、何が分かるっていうんだ!」
リーマスの叫び声が静かなスネイプ邸に響く。そしてはっと我に返ったリーマスは勢いよく名前 に謝った
「―――ごめんッ、じゃあまた新学期」
リーマスはそう言うと姿くらましをして帰っていってしまった。ちゃんとお礼も言いたかったのに・・・
「―――さっきの言葉、まるで同じだった」
“君に、何が分かるっていうんだ―――”
その言葉は以前、リーマスに投げかけられた言葉だった。
雰囲気は違えど、やはりリーマスだったのだ。あの孤独な世界で彼らに助けられたのだから今度は此方がリーマス達を助ける番だ――――
名前 は心の中から急に勇気がふつふつと湧いてくるのを感じた―――そうだ、いまだ。今こそ彼らを助けて・・・・・・・・・シリウスの無罪を証明しなくてはならない
そうと決めた名前 は足早に書斎へと向かった。そして過去起きた悲惨なあの出来事のことについて記されているものを読み漁った。大きな羊皮紙はあっという間にこまごまとした字によって埋め尽くされて行く。
しかしどの本を見ても核心に近づいて行くようなことはなかった。やはりこれはリーマス達に直接話を聞かなくてはならないのだろう・・・いや、ダンブルドアでもいいだろう
今リーマス達にこの話をするのは随分不躾な話だ。ダンブルドアなら・・・名前 の本心を理解してくれれば教えてくれるはずだ。それにダンブルドアも絶対にシリウスを無罪だと信じているに違いない―――名前 は何故かそう確信できた。
そして9月1日はついにやってきた――
大きなトランクを持って9と4分の3番線へ向かうと随分懐かしい人たちと出逢う事ができた
「―――名前 !!」
ハーマイオニーは嬉しさのあまり名前 に飛びついた。
「ハ、ハーマイオニー、久しぶりだな」
「えぇ、元気そうで何より!!よかった!貴方が無事で!」
ハーマイオニーは顔を見上げたとたん、ようやく名前 と顔が近いということに気付き顔を真っ赤にして離れた
それを見ているロンは何故か面白くなさそうな顔をしていた。
「・・・ありがとう、もう平気だ。」
「よかったよ本当に、去年は本当に大変だったんだよ。名前 には一晩中聞いてもらうからね!」
どうやらハリー達は相当去年冒険したようだ。1年生の時もかなり冒険していたような気もするが・・・
「あら、此方は・・・?」
ようやくそこにはハリー達以外の人がいることに気付いた。髪は赤毛で・・・そしてこの雰囲気は恐らくウィーズリー夫妻といったところだろう
「・・・初めまして、名前 ・スネイプです」
「まぁ貴方がセブルス・スネイプの息子―――!?」
「本当に君が!?」
2人は驚いたような表情で名前 を見つめた。初対面の人には名前 のメッシュのような赤い毛と赤いメガネは少し不良に見えたに違いない。ホグワーツでは髪染めは禁じられている
「・・・髪は病気なんです」
そう言うと2人は申し訳無さそうに謝った。
「あらっ、ごめんなさい―――そんなつもりじゃ」
「すまない・・・!」
「もうママ!」
ロンは盛大にため息をついた。
「・・・いや、気にしてないから平気です。ありがとうロン」
気まずい雰囲気を流すかのように、列車が時期に出発すると合図の汽笛が鳴った
「―――あっ大変だわ!もうじき出発ですって!」
ハーマイオニーがその音に気付き慌てると、2人は名前 に「今度遊びにいらっしゃい」と微笑みかけた。
「―――はい、是非」
名前 はハーマイオニーに引きずられながら答えた。
急いで列車に乗り込むと空いているコンパーメントを探した。
「・・・僕はここで」
「えっどうしてだい!?」
ロンがひょんな声をだすとハーマイオニーとハリーはその意味を理解したらしく、わかったと頷き未だに現状理解できていないロンを引きずりその場を後にした。
名前 はそんな2人に感謝しきれなかった
「―――ここ、いいか」
「名前 、待ちくたびれたぞ。勿論、君が来ると思って席を空けておいたんだ」
ドラコの隣に座ると目の前には一昨年よりも体格がよくなった2人がいつもと同じくがつがつとお菓子を食べていた
「・・・久しぶりだな」
「あぁ、名前 !君大丈夫なのか?」
「あぁ、心配させてすまなかった」
「ほんとうに僕たち心配したんだ・・・だけど無事でよかったよ」
「心配なら食べ物も喉に進まないはずだけどね?」
ドラコが皮肉をこめて言うと2人は黙ってしまった。
「・・・っぷ」
わははははと急に名前 が笑い出した。目の前の2人は名前 が声を上げた笑ったのを初めて見たのか、唖然としていたがドラコにしてもそんなようなものだ。親友のドラコですら名前 が声を上げて笑う姿なんて滅多に見られない
親友の声を上げて笑う姿が嬉しいのか、ドラコもははと笑う
「・・・相変わらずだな、僕はお前たちと再会できて嬉しい」
「僕は君が無事で本当に良かったよ・・・」
このまま、幸せな気持ちで1年間過ごせていたら――――そんな事を夢見ていた矢先であった。
「・・・!?」
「何だ!?」
急に列車が止まったのである。ホグワーツ特急が途中で止まるなんて珍しいことだ。線路の上に石でも置いてあったのだろうか・・・
ドラコはそんなことを考えていた。しかし名前 だけは感じていた―――これから訪れる恐怖を
「―――窓が、凍ってる・・・」
窓が凍り始め、車内も凍えるような寒さに包まれる。まるでこの寒さは―――――ディメンターがやってきた時のものだ
「・・・来る」
「ひぃ!」
ドラコは恐怖のあまり、名前 にしがみついた。しかし名前 もそんな親友に気を配っている所の話ではなかった
「・・・とりあえずここは動かないほうがいい」
名前 が3人を落ち着かせるように言うと、3人はこくこくと頷き身をひしめき合って座った。名前 だけは扉の入り口に立ち、訪れるであろう恐怖に対して準備をしていた
「――――来る!皆、身構えろ!!」
やってきた――――ほら、幸福を飲み込みに・・・
希望を飲み干しにやってきた
「――――エクスペクト・パトローナム!」
一番幸せだった記憶―――過去の世界にいたときの記憶をしっかりと浮かび上げ、力強く呪文を唱えた。すると名前 の杖からは巨大なバジリスクが現れ襲ってきた数人のディメンターを追い出すことが出来た。
「・・・も、ももうだいじょうぶなのか・・・?」
ドラコもクラッブもゴイルもガタガタと歯を鳴らしている。ディメンターと遭遇してしまった後はチョコレートを食べるのが何よりも効果的だと本には載っていたので、名前 はポケットに念のため入れておいたチョコレートを3人に渡すと食べるように言った
「・・・ありがとう・・・・・・なんだか心があたたまるよ」
「うん・・・」
「ありがとう名前 」
「いいや、気にしなくていい。僕はこれから他のところも見回ってくる・・・ドラコ達は此処から出ないように」
そう言うと名前 は足早に各コンパーメントを見て回った。皆やはり歯をがちがちと鳴らし凍えていた。袋いっぱいに詰めてあるチョコレートを凍えている生徒に渡していきながら歩いている途中、ばったりと同じ事をしているリーマスと出くわした
「・・・名前 、無事だったかい?」
「あぁ・・・呪文が効いたみたいだ。リーマスが言っていたとおり、本当にホグワーツにディメンターが・・・・。だから念のためにチョコを持ってきておいたんだ」
「あぁ、君は本当に・・・賢い子だよ。もう向こうの子達は大丈夫、そっちは平気かい?」
そう言ってリーマスは名前 の頭をくしゃりと撫でた
「あぁ・・・それより、ハリーは・・・・・・」
「ハリーなら・・・平気だったとも言えないかな」
そう苦笑するリーマス。あぁ、そういう事か・・・つまり練習の時の自分と同じ状況に陥ったということなのだろう。リーマスはこれから車掌の元へ行くといい、名前 と別れた。名前 はハリーが心配でそのコンパーメントへ向かう事にした
「大丈夫かハリー」
「あぁ名前 !ハリー・・・気絶しちゃったのよ」
「・・・やはりか。ディメンターに幸福を吸い取られたんだ」
「ディメンター・・・なんだい・・・それ」
よろよろとハーマイオニーに支えながらもハリーが起き上がってきた。
「吸魂鬼・・・幸福、希望、魂を好物とする闇の生き物達だ。ハリーしが倒れていないのは、ハリーが過去に大きな”不幸”を抱えたからだ」
淡々と言う名前 の言葉は、今やハリーの頭には届いてないのだろう。まだ身体に力が入らない様子だ
「そうなんだ・・・。僕、女の人の声が聞こえたんだ――――だけど皆聞こえなかったって」
―――ハリーも、母親の最期の声が聞こえたのだろうか・・・
「僕・・・」
「・・・もういい、ハリー。喋るな。列車はすでに発車しているからすぐにでもホグワーツにつくだろう・・・だから安心しろ」
「・・・・・・うん」
「・・・2人も、出来るだけハリーの側にいてやってほしい」
名前 がそう言うと2人は「勿論!」と力強く頷いた。もう此方は安心だろう・・・そう思い自分のコンパーメントへ戻っていくことにした。しかし何故だかドラコ達の姿が見当たらなかった――――