06 それこそが、真実/賢者の石

最近父上の様子は明らかにおかしいものだった。やはりあの闇の魔術をかけたものが父上の近くにいるのだろうか?だとしたら誰が・・・?まず教師はありえないだろう、あのダンブルドアが闇のものを受け入れるはずがない。生徒に紛れ込んでいるのか?それもないだろう・・・第一ホグワーツに闇が潜んでいるとしたらダンブルドアが最初に気付くはずだ。気付かず何も対処されていないとはずいぶんおかしな話だ。

「名前、最近のスネイプ教授はなんだかおかしいと思わないか?」

「ドラコもそう思うか?僕もだ・・・時々不安になる。大きな悩みを抱えているのだろうか」

「それはホグワーツの教師でもあるしスリザリンの寮監でもあるから当たり前だろう?君の様子も十分おかしいと思うけどね・・・あのポッターどもと付き合い始めてから―――」

気付けば話はそれて僕の説教からハリー達の罵倒へと変わっていった。思えば未だにハリー達と出会っても目さえあわせてくれてない状況だった。ま、とりあえずいいかと思いドラコの話を頭の隅で聞き流しながらも僕は改めて最近のホグワーツの事を考えていた
ずいぶん前にグリンゴッツのとある金庫に侵入してきた者がいた。日刊預言者新聞でも話題騒然になっていたし、ホグワーツでも最初は皆それのことで大騒ぎだった。次に・・・トロールがホグワーツに侵入してきた。そして父上のあの酷い足の怪我・・・・・・恐らくはその何かに対抗するために負った傷なのだろう。そして今回のハリーの箒に闇の魔術がかけられた件――――すべては繋がっているのだろう何故だかそう確信できた名前であった。

十二月にさしかかり、クリスマス休暇も近づいてきたある日のことだった。今は魔法薬学の授業中・・・ドラコは懲りもせず相変わらずな様子だった。

「かわいそうに、家に帰ってくるなと言われてクリスマスなのにホグワーツに居残る子がいるんだね」

クラッブとゴイルが他のスリザリン生と一緒にクスクスと笑う。名前だけは1人魔法薬に専念しているようだったが・・・・・・

「次の試合には大きな口の『木登り蛙』がシーカーになるぞ」

これは流石に誰も笑わなかった。あの時のハリーは皆も感心する程だったのだろう
しかし懲りずにハリーにちゃんとした家族がいないことをあざけ笑うように言った。
妙な苛立ちが沸き起こるが魔法薬学に専念することで聞き流す事が出来た。無論そんなドラコをセブルスが咎めるわけでもなく・・・そして授業は終わった。ハリー達はハグリットの所へと向かったらしい、それを確認するや否やものすごい力でドラコに腕を引っ張られてそこまで連れて行かれてしまった。

「すみませんが、そこをどいてもらえませんかね?」

ドラコも懲りないな・・・恐らくはクイディッチのことも引きずっているのだろうけど・・・

「ウィーズリー、お小遣い稼ぎですかね?君もホグワーツを出たら森の番人になりたいんだろう―――ハグリットの小屋だって君たちの家に比べたら―――――ッ」

ドラコの言葉を遮るように、苛立たしげに名前はドラコの足を踏んだ

「何をするんだ!痛いじゃないか!」

「・・・いい加減にしろ、クイディッチの事を未だに引きずるのはよくない・・・男ならもうすこしさっぱりすべきだ、それに家名の悪口はあまりよくない・・・・・・お前も同じはずだドラコ、マルフォイ家の悪口を言われて嬉しいか・・・?」

「ッそんな訳無いだろう!・・・今日は運が良かったと思えポッター!」

ドラコは苦々しげにそう言うとクラッブとゴイルを連れて物凄い勢いで去ってしまった。その場にはありえないといった表情のハリー達とどこか吹っ切れた名前だけがいた

「・・・名前、よぅ・・・・・・・ロンを庇ってくれてありがとな」

「例には及ばない、ハグリット。」

「・・・君達、知り合いなの?」

ハリーがようやく一声出した。

「あぁ、小さい頃から知っとる」

「へぇ・・・その、かばってくれてありがとう」

思えばハリー達と会話なんてずいぶん久々なものだ。そのお陰で先ほどからのむしゃくしゃが少しは静まった気がする

「・・・誰だって家を貶されて嬉しいものはいない・・・・そうだろ、ロン」

「・・・そりゃぁ・・・・・・うん、ありがとう名前」

「さっきはかっこよかったわよ!男ならさっぱりしろって確かにそうね!」

「だが、ドラコのグリフィンドールアレルギーは今に始まったことではないからな…」

「名前を見習えばいいのにね。それより僕ら、君に謝らなくちゃならない事があるんだ―――」

ハリーが今まで名前を無視しつづけていた理由を教えてくれた。

「そうか・・・それで僕は息子だから、か」

「「「ごめん」」」

3人は一斉に名前に謝る

「おめぇら、まだその事を・・・・・・謝った事はいい事だが本当にスネイプ教授がやるはずない」

「・・・別に気にしてないからいい。だが父上のことを何と言おうとハリー達の発言の自由だ・・・ドラコみたいにな」

最後のは流石に聞き取れなかったが、ハリー達は名前の前ではなるべくスネイプの悪口を言わないようにするとかたく決意をした。

「・・・最近の父上の行動は確かによく分からない、ただ何かにせわしなく警戒しているような―――」

横で話を聞いているハグリットは汗だくだ。明らかに何かを知っている・・・・・・

「・・・ハグリット、父上は危ない事をなさっているのか?」

「・・・・・・すまねぇ名前、これだけは言えねぇんだ」

ハグリットは申し訳無さそうにうつむき、話をクリスマスの事へと無理やり運んでいったのだがハリー達が無残にも話を元に戻してしまった

「ねぇ名前、ニコラス・フラメルってどんな人か知ってる?」

ハーマイオニーが目をきらきらさせながら聞いてきた。それを聞いてハグリットはさらに大粒の汗を流し話をクリスマスの話へ戻そうとするのだが・・・その努力も虚しく終わった

「―――確か錬・・・」

「Mr.スネイプ!」

急に広間にバリトンが響いた・・・それは紛れも無く物凄い形相をした父親の姿だった。
あまりの形相にびっくりしてその場で動けなくなってしまった

「何故、医務室へ行かなかった」

「・・・ス、スネイプ教授・・・・・・」

「医務室へ連れて行く、この後の用事は全て断れ。」

そう言い名前はスネイプに腕をひっぱられずいずいと医務室へ連れて行かれてしまった。その場にはぽかーんとした表情のハリー達が不思議そうに後姿を眺めていた。

「何故色が変わっているのに我輩の元へ来なかった?何故発作が起きたのに我輩に知らせなかった!?」

左眼の色が真っ赤に変わっていたのだった。いつも左側は前髪によって隠れていたので自分でも気付きもしなかったし一度、身内のひとりの死を予兆した時・・・それ以来でもあったから尚更だ。正直名前自身も驚いている。
あまりの痛みで立眩みがしたがなんとか持ちこたえていたというのに。父上は何もかもお見通しなのだな。

「・・・すみませんでした――――平気だと勝手に自己判断してしまいました」

「・・・・・・ばか者!」

「―――・・・・・・」

父上に余計な心配事を負わせたくなかったから・・・ただでさえ忙しい身、これ以上荷物になりたくなかった―――僕にできることは、僕のために余計な心配事をしないようにすることだけ。

「―――お前は・・・我輩の嫌な所ばかり似おって・・・・・・閉心術を使ったとしても、我輩には無意味だぞ」

セブルスは名前の左目に目薬を指しながら言う。

「―――お前は我輩に似て不器用だ・・・そうやって余計な心配をさせないようにするために自分を偽る・・・・・・・・・だがそれこそ心配の種だということに気がつけ」

・・・父上?

「我輩も不器用だ・・・・・・だがそんなにもお前の父親は頼りないのか?」

―――父上が、ご自分の事を・・・

「いいえ・・・!そんな事はありません!」

「・・・ならばもっと父を頼れ。ほんの些細な事でもいい・・・我輩に話してほしい」

いままで、そうしてやれなかったのだから。

「・・・はい!」

つまり僕がしてきた今までのことは・・・空回りだったということか。だが、父上がこんな事を言うのは初めてかもしれない・・・、いやあれ以来だろうか―――母上が・・・・・・

「・・・っつぅ!」

「ばか者!こんなになるまでほったらかしにしおって・・・!」

いくら目薬をつけたとしても、痛いのには変わりないな。

「この目は呪いだ…今まで病だとばかり考えていたが…何者かが、お前の母方の一族に解けぬ呪いをかけた…そして、お前も、あいつも―――その呪いで苦しまされているということか。」

もしもの時のためにと、名前はセブルスから目薬の瓶を受け取った。この目薬は新鮮でないと効果がないために2日が使用限度だったりする。目薬の他に、小さな小瓶に入った飲み薬を少し。痛みがひどい時はこれをよく飲むが、酷い味がするので今でも苦手だ。

「・・・これで左眼の痛みは大体治まる。だが、あまり使いすぎると薬の耐性ができてしまう。」

「・・・ありがとうございます」

「鏡で自分の左眼を見てみろ」

スネイプに渡された鏡で己の左眼を恐る恐るのぞいてみる。先ほどよりかは赤みは薄くなったような気がする。

「・・・父上、ありがとうございました。」

「明日からは運がいい事にクリスマス休暇だが・・・その薬には副作用がある。前飲んだ薬からだいぶ改良されていて強力になり効能が上がったのだが・・・・・・やはり体には負担がかかる」

「・・・はい」

「しばらくは医務室で安静にしておくように。マダムには我輩が全てを伝えておく・・・」

「はい。何日ぐらい入院していればいいですか?」

「・・・クリスマス休暇が終わるまでだ」

それを聞いて正直ショックだったが、まぁ仕方ないだろう、自己責任だと言い聞かせてどうにか頷いてみせた。スネイプは古そうな魔法薬の本を数冊置き(つまりはこれで暇つぶしをしていろという事だ)大人しくしているんだぞと名前に言い聞かせ医務室を去っていった。

・・・はぁ、まさかクリスマス休暇が入院で潰されるとは・・・・・・でもまぁ、僕のせいでもあるんだ・・・クリスマスの料理を少し期待していたのにな―――
自分にどうにか言い聞かせ、大人しくスネイプが置いていった本を読む事にした。
クリスマス休暇の朝がやってきた。名前は一晩痛みに苦しんだが朝になるとその痛みが嘘のように消え去っていた。改めて自分の父親に感謝した。

「Mr.スネイプ、朝食ですよ」

「・・・ありがとうございます」

マダムポンフリーから朝食を受け取り食べようとしたとき、誰かが勢いよく医務室に駆け込んできた。マダムポンフリーはその生徒に激怒したがその生徒も生徒でそれどころではないようだ。

「名前!君、何で入院した事を黙っていたんだい!?」

「・・・ドラコ、医務室は走るな」

やってきたのはドラコだった。いつものしっかりセットされた髪型は少し乱れていて、相当慌ててこちらまでやってきたのだろう。そう思うと改めて親友の存在に感嘆を覚えた。

「まったく!君は・・・!でもまぁ名前が元気そうで何よりだ・・・・・・」

「・・・ドラコ、お前確か家に戻っていたんじゃないのか?」

「父上の用事ついでに着いてきたんだ、もう戻らなくちゃならないけどね・・・」

「Mr.マルフォイの・・・?そうか、クリスマス休暇楽しめよ」

「これは母上からだ・・・名前にお見舞いとして渡すよう言われた」

ドラコはそう言うと高級そうな包みを名前に渡した。

「・・・ありがとうございますと伝えておいてもらえるか?」

「あぁ、いいだろう。ともかく無茶はするなよ・・・・・・」

ドラコはそう言い残し名残惜しそうに出て行った。名前のベッドの周りを見てみると誰かが名前が入院している事を知ったのか、お見舞いの品々がずらりと置いてあった。その中には無論“親衛隊”から送られてきたのもあって・・・
フレッドとジョージ、リー達からもご親切に悪戯グッズらしきものが送られてきていた。
手紙が入っていたので早速読んでみた

――――続きはクリスマスプレゼントにて
                 フレッド・ジョージ・リーより

・・・クリスマスプレゼントにて?嫌な予感がするな―――――
思えば今日はクリスマスだったんだな・・・部屋に戻ってプレゼントを見てみたいがマダムポンフリーの眼下じゃ医務室から出るなんて事、出来ないだろうし・・・さて、どうしたものか。そんなことを考えながらミルクを飲んでいると医務室へなにやら騒がしい音が近づいてきた。マダムポンフリーは青筋を立てて医務室の入り口で仁王立ちしていた

「まったく!貴方達、ここが医務室だとお分かりですか!?」

「「ごめんなさい!すみません通してください!」」

ハリーとロンの声が聞こえてきた。彼らも名前入院の話を聞き急いで駆けつけてきてくれたのであった。

「今回だけですよ!まったく・・・ぶつぶつ」

「ありがとうございます、マダムポンフリー」

「Mr.スネイプ、この無神経な方たちによーく注意をしておいてくださいね!」
そう言うとマダムポンフリーはどこかへ引っ込んでしまった。それを確認したハリー達は急いで名前のベッドまでやってきた

「名前、大丈夫かい!?」
「名前気をしっかり!!」

・・・そんなに心配しなくても。それにロン、僕はそこまで重症じゃないぞ。

「・・・2人とも、ありがとう。僕はこの通り大丈夫だ」

「入院してどこが大丈夫なんだよ!医務室へ連れていかれてたけどまさか入院する程だったなんて・・・」

「まさか、だよな。」

ハハハと笑うと笑い事じゃないよと2人に思いっきり怒鳴られてしまった。だが今日はクリスマスだ、3人は早速その話題へと入っていった。

「ほら見てくれよ名前!これ僕のパパのもので・・・透明マントっていうんだ」

ハリーは透明マントをかぶって名前に見せてみた。びっくりするかと思い早速首だけだして名前を見てみると・・・

「・・・ほう、それは便利なものだな。」

そうとしか言わない冷静な名前のリアクションに少し落胆した2人であった。
その後も久々に3人で仲良く談笑していた。ロンには毎年何故か栗色のセーターが来る話などをしてクリスマスムードを楽しんだ

「時に名前・・・ニコラス・フラメルって知ってる?聞きそびれちゃって・・・」

ハリーが聞いてきた

「ニコラス・フラメル?あぁ・・・そう言えば答えが途中だったな・・・・・・」

名前は答えを思い出そうとしたが――――時間が経ってしまったせいか、忘れてしまったのである。

「・・・すまない、眠ったら忘れてしまった」

「あ、そっか・・・名前でもそんな事あるんだね」
ロンはものめずらしそうに言う

「・・・流石に昨晩は痛みが酷かったからな、すまん」

「いやいや気にしないでくれよ、今度思い出したら教えてね!それとクリスマスプレゼントありがとう!」

ハリーのクリスマスプレゼントには事前に通販で頼んでおいたブランド物の箒磨きセットを、ロンにはハリーと同じく通販で頼んでおいたブランド物のトランクを送ったのだった。

「僕からもありがとう!あんな高級そうなの・・・なんだか悪いよ。それに比べて僕のは・・・・・・」

ロンは申し訳無さそうにため息をつく。名前はプレゼントは気持ちが大切だと言いどうにかロンを元気付けた

「まだ見てないが、ハリーとロンの気持ちは十分に受け取った。今ここに来てくれた事も本当に感謝している・・・ありがとう」

「僕たちたいした事してないよ・・・それにしてもあのトランク、すごい量が入るんだね!」

どうやらいろいろと入れてみたらしい。確かにあのトランクは魔法界の一流ブランド品でもあり品質は最高ランクだ。無論、どんな量の荷物を詰めても不思議に重たくならないのだ。ちょうどぼろぼろのトランクを使っていたロンは名前に感謝しきれないほどの感謝をしていた

「本当にありがとう!あの箒磨きセットでニンバスを磨かせていただくね!」
ハリーも同様に名前にお礼を言った

「・・・気に入ってくれたならそれでいい、僕としてもうれしい」

何よりも、ハリー達とこんなに長く話すのは本当に久々かもしれない・・・
名前にとってこんなにも楽しいクリスマスは母が死んで以来、初めてだった。