67 それこそが、真実/死の秘宝

その後、倒した死喰い人から重要な情報を得た。ハリー・ポッターがホグワーツに来ている、と。
クライヴと名前は急いでホグワーツへ駆けつける。ホグワーツには強力な守りの魔法がかけられており、外から入るのは難しかった。

「・・・地面から行くぞ」

「まさか、モグラのように地面を掘り進めるのか・・・?」

「ああそうさ、地下ならば、そんなに強力な魔法はかかっていない。それに、森へ入れればいいだけの話だ。さあ、掘るぞ!」

クライヴは杖をひと振りさせ、瞬く間に地下通路を作っていった。
地下通路を出たとたんに、一番会いたくなかったあの人に出会ってしまったのは計算外だった。

クライヴは名前を守るような体制で、オリオンに杖先を向ける。
オリオンもまた、二人に向かって鋭く杖先を向けた。

「久し振りだね、名前・スネイプ。君は殺さないから安心してよ、だから、さっさとこっちにおいで。僕に用があるのはそっちの男さ――――ねぇ、クライヴ・S・レーガン・・・」

整った顔を歪めさせ、クライヴをにらみつける。

「お前は、オリオンか?それとも【オリオン】か?」

「ははは、そんなの愚問さ。僕は僕、オリオンも【オリオン】も同じ僕、さ」

オリオンは濃い紫の何かがに包まれている。その霧はオリオンが動くたびに不気味にうごめいた。

「オリオンは、【オリオン】と似たような境遇にあったからな、お前たちが共鳴しあうのもわからなくはない、だが、オリオンを返せ、【オリオン】!」

「はははははは!!!まったく、傑作だよ!!!確かに僕らは同じような境遇だ、だが、残念なことに僕がオリオンだよ!【オリオン】は力を僕に分け与えてくれただけだ、そして、レーガン家の秘密や、すべてを教えてくれたよ」

あまりの頭痛に吐き気がしそうだった。だが、ここで踏ん張らなくてはならない。

「名前、そこにいろ。俺はこいつを・・・・」

殺す、その言葉がどうしても出てこなかったのか、最後まで言う前に戦いが始まってしまった。
名前はクライヴに言われたとおり、周りに警戒しながら身を隠した。

オリオンの笑い声に数人の死喰い人が駆けつけてきた。
だが、オリオンはこの状況を邪魔されたくなかったようだ。隙を見て、自分の部下たちに死の呪文を放った。

「・・・オリオン、お前、そこまで堕ちたのか・・・・!」

怒りで声を震わせるクライヴを、オリオンは楽しそうに眺める。

「堕ちた、ねぇ・・・誰が僕をこうさせたんだい?兄さん、あなたは僕をかばってはくれなかった―――」

「お前をかばい切れなかったのは悪かったと思っている!俺も、父上に猛抗議したんだ!」

「今更そんな苦し紛れの言い訳なんか聞きたくない―――許してほしいんなら、今すぐ死ね、兄さん」

実の兄弟同士が今、殺しあっているのだ。こんな残酷な光景、正直見ていたくなかった。目を背けたい、だが、最後まで見届ける義務が名前にはあった。
閃光が飛び交うたびに胸が苦しくなる。同じ母から生まれてきた唯一の存在なのに、何故こんなことにならなければならないのだろうか。

始まりをさかのぼれば遡るほど、頭が痛くなる。ずっと続いてきた憎しみの連鎖。
今、ここですべてが終ろうとしているのだ。

目をつぶったその瞬間、オリオンが目をカッと見開き、音を立てて倒れた。
倒れたオリオンの元にすぐさま駆けつけたのはクライヴだ。ここは、僕の出る幕じゃないな・・・

「・・・オリオン・・・・・・・・ごめんな・・・・」

「僕を・・・・愛・・・して――――」

オリオンの瞳からは一粒の涙がこぼれた。
確かにつぶやいたその言葉に、名前は静かに顔をうつむかせた。

「・・・ン、もうすぐ・・・・・な・・・・」

クライヴの声は小さすぎたので、何を言ったかよく聞こえなかったが、彼の弔いはクライヴが行ったようで、オリオンの亡骸はその場からなくなっていた。
オリオンが常に肌身離さず持っていたロケットを残して・・・。

「こいつが、すべての元凶だ。これを壊してしまえば、この世に残っている【オリオン】の遺志は消滅する」

そう言い、ローズの杖でロケットを真っ二つに砕く。ロケットからは叫び声のようなものが漏れ、生前のオリオンと【オリオン】の記憶が目まぐるしく頭を駆け巡った。

始まりは、ローズが生んだ息子、【オリオン】がスクイブだと父親に言われた時だ。
ほかの兄弟たちは魔法を使えるのに、【オリオン】だけが魔法を使えずにいた。

親族たちは【オリオン】を厄介者のように扱う。気高きレーガン家に、スクイブが生まれたなんて、そんなこと公にできるはずがない、と。
ほかの兄弟たちとは別の部屋で食事を取り、外へ出ることも禁じられた。ほかの兄弟たちとかかわることも禁じられ、彼は本当の孤独の中、生きていた。
だが、そんな彼を唯一愛してくれたのは、母であるローズだけだった。
ローズは父親たちの目を盗んで、こっそり【オリオン】の部屋へ行ったりしていた。何故ならば、この行為が夫たちに見つかれば、もう二度と【オリオン】とは会えなくなってしまうかもしれないからだ。
彼らの狂ったような絶対思考が、下手をすれば【オリオン】を殺しかねないからだ。そうやって過去に消された子供たちはローズは知っていた。だから、毎回慎重に【オリオン】の元へ行っていた。

「母上・・・見てください、母上と、僕が、薔薇園にいる絵を描きました」

もちろん、実際は外へ出れないので、固く閉ざされたガラス窓から見える薔薇園を見ながら描いた訳なのだが。
幼いながらもこの画力はすばらしい、ローズはこれを夫に見せればこの子を魔法使いではなく、画家として認めてくれるのではないかと考えた。
しかし、夫であるクライヴはスクイブの描いた絵なぞに何の価値も無い、と絵を破り捨ててしまったのだ。

「ああっ・・・私は・・・どうしたらいいの・・・あの子を・・・・どうやったら救えるの・・・・!」

悩みに悩みつかれたローズは、ついに重たい病にかかってしまった。あと生きて3か月と勧告され、一番ショックを受けたのは言うまでもなく【オリオン】だった。
唯一自分を愛してくれた母がいなくなってしまったら、自分はどうなってしまうのだろうか。母がいない日常なんて考えられるはずもなかった。
【オリオン】の世界の全てはローズそのものと言っても過言ではない。

しかし時は残酷にも過ぎ去り、ローズ・S・レーガンは悔いをのこしながら亡くなった。
彼女が一番心配していたのは言うまでもなく【オリオン】のことだ。自分がいなくなってから、あの子はどうなってしまうのだろうか、と。死ぬ間際すら面会できなかった【オリオン】は心の中がまるでドリルで穴をあけられたかのような、そんな心境に陥っていた。
屋敷僕から出される食事もろくに喉を通らない。大切な人が、自分の世界が今、失われたのだ。
そのショックか、【オリオン】はある日、魔法が使えるようになっていたのだ。父親はこれを喜ぶだろうか、だが、そう考えた自分が愚かだったのだ。
父親は「お前がローズの魔力を奪った、だからローズは死んだのだ、お前がローズを殺したのだ」と【オリオン】に怒鳴り散らした。
今まで父親に抱いていた感情が、その瞬間憎しみへと変化した。
その後、魔法学校に通うようになった【オリオン】は、魔法の勉強に勤しんだ。いつしか、高い魔力を身に着け、ローズの笑顔を取り戻すために。

【オリオン】が学校へ通うようになってしばらく、クライヴは頭がおかしくなったかのように、最愛の妻を蘇生させるための禁術の研究に走った。部屋にはこもりっぱなしで、誰とも会おうとはしなかった。
子どもたちは魔法省に努めたり、立派な職についているにも関わらず、父親はなんの労いの言葉もかけることはなかった。だが、子どもたちは胸の中で、それはローズが死んだ為、だとわかっていた。
父親をこれ以上悲しませないよう、彼らは様々な勲章を得た。一人、取り除いて、だが・・・・

【オリオン】が学校を卒業したある日、母の眠る墓を暴き、母の骨を一本頂戴した。それでより強力な杖を作るためでもあったし、母と共にいるような錯覚をするからだ。

ある日、禁術の完成に成功したクライヴは、妻を蘇らせるために術を発動させた。その日は長男の出世祝いで、多くの親族が屋敷に集まっていた。
親族たちはここの家長が部屋に閉じこもっている理由をしらない。ただ、ショックで寝込んでいると思っていたばかりに、そのあと起こる悲劇に気が付くことなく過ごしていた。

【オリオン】は不思議な何かを感じ、普段ならば入らないであろう父親の研究室を訪ねた。部屋にはうす紫色の霧が広がっており、薬品のにおいが鼻をついた。

そこには信じられない光景が広がっており、父親が死んだはずのローズを抱きかかえていたのだ。
だが、そのローズには生気が無く、人形のように腕をぶらんとさせていた。

「わたしがわかるか、わたしだ―――お前の夫のクライヴだ・・・おかえり、わたしのローズ…っ」

「・・・て・・・」

「―――ローズ、わからないのかい、君はいま、死を、克服したんだ!」

「・・・・し・・・て・・・」

父親はこの部屋に【オリオン】が忍び込んだのに気が付いていないようだ。

「・・・ろ・・・て・・・」

殺 し て

そう呟かれた言葉に、雷を打たれたかのようにクライヴは壁にもたれかかった。

「お前は、誰、ここは、どこ――――死にたい・・・殺して・・・・」

「あああ・・・!なんということだ・・・・!ローズううううう!!!」

泣き叫ぶクライヴの声が外に聞こえることはなかった。何故ならば、ここは何重にも呪文がかかっているため、そう簡単には侵入できないからだ。
いともかんたんに侵入してみせた【オリオン】は、それだけの魔力を蓄えた、ということになる。
変わり果てたローズの姿に、【オリオン】は怒りをおぼえた。そもそも、母が死んだのもこの男のせいなのだ。

「―――許さない、許すものか・・・」

「オリオンか・・・っ、ローズが、ローズがあああああ」

もはやショック状態になってしまったクライヴに、その場の状況を理解することは不可能だった。
ローズの骨でつくられたその杖を父親に向け、緑色の閃光をはなった。父親は目をカッと見開き、ローズに向かい合うようにして倒れた。

人形のローズは、静かに杖をむけられ、【オリオン】に優しくほほえんだ。

「ありがとう・・・」

そう言い、涙を流すローズに【オリオン】は辛そうに呪文をはなった。
もう、この一族をおわらせなくては。この命を使い、一族に呪いをかけよう。

レーガン家の者はもう二度と、繁栄することはないだろう。この呪いで、お前たちは魂もろとも食い殺されろ、己に殺されるくるしみを味わえ、お前たちはこの悪夢からは逃れられないぞ―――
【オリオン】は抜け殻となったローズと一体化し、一族に強力な呪いをかけた。
父親がしんだことによってとかれた魔法は、息子たちをこの部屋へと到着させた。まずはじめに駆け付けた三男を呪い殺した。まだ生き残っている者たちに、こう言い残して。

「わたしはお前たちを恨み続けるだろう」

【オリオン】の記憶はそこでとぎれた。

「父さん、嫌です!こんなところに、閉じ込めないで!」

「・・・掟をやぶった罰だ・・・!」

幼き頃のオリオンだ。オリオンは家の倉庫で眠っていた【オリオン】のペンダントをぬすもうとした罰で、もうじき父親に殺されようとしているときだった。
小屋の外からはクライヴと母親が説得している声がきこえてくる。

夜になり、寒さにふるえながらまるまっていると、見知らぬ男の声が頭にひびいてきた。きがつけば足元には倉庫にもどされたはずのペンダントがころがっていた。

「・・・君も、僕とおなじ『オリオン』なんだね・・・僕は、君のために僕のすべての知識と力を与えよう。」

ペンダントの声は優しく囁く。

「僕を・・・助けてくれるの・・・?」

「ああそうさ、君に僕の知る限りの魔法をおしえてあげるよ」

その夜、オリオンは家から逃げた。まだ子供であったオリオンの行き場所といえば、どこかの飲食店の雑用しかなかった。
ボージン・アンド・バークスで働いてかなりの歳月がすぎた頃、店に新入りが入った。オリオンは【オリオン】のおかげもあって魔法や知識に困ることはなかったし、裏取引をおこなっていたので資金に困ることはなかった。
ここで働いているのは一種の趣味のようなものだった。呪われた品々を見るのは嫌いではない。
だが、その新人が驚くべきことに自分は兄のかつての友人だと言う。
その話がきっかけとなり、オリオンはトム・M・リドルという人間に惹かれていった。気がつけば、彼の思考を崇拝までもしていた。
自分はレーガン家の出で、ゴーントの血がながれているあなたとは親戚なんですよ、そういうと彼は更に満足そうにほほえむ。

お互い親のことはきらっていたし、随分いいチームワークだと思った。
それからある日、彼の真の野望をきいたとき、この人の為に働こうと決意したのだ。オリオンはヴォルデモート卿の忠実な部下として、彼の傍にいるようになる。オリオンは優れた頭脳で様々なことをヴォルデモートに提供してゆく。
次第に死喰い人たちは増えてゆき、死喰い人のなかでもオリオンは特別な存在となった。

そして、ヴォルデモートの実の妹、キリクがローズの生まれ変わりであることと、時渡り人であることを知った。
このときから、どちらのオリオンが自分なのか、わからなくなっていた。気がつけば闇に取りつかれたかのように、残虐非道な行いを毎日していた。

ヴォルデモートの妹が死に、ヴォルデモートがハリー・ポッターによって倒された日、オリオンはしばらく機を見ることにした。
アルバニアの森でゴースト以下になっている状態の彼を見つけ出し、その辺にいた適当な男を、ヴォルデモートの魂を入れる器とした。

彼の復活の準備もオリオンが指揮を執った。複雑な呪文も見事に完成させ、ハリー・ポッターの血を注ぎこみ、彼を完全復活させることができた。
だが、それまではよかったのだ。兄が杖に封じられていることは知っていたし、別にふうじられているならばなにも問題はないだろうとおもっていた。
悔しいことに、ポッターとの戦いで杖の逆噴射により、クライヴの封印がとかれてしまったのだ。
それから、オリオンの復讐の念はさらに強まった。が、結果的にその復讐の念が己を殺してしまったのだ。
すべての記憶をみおわったとき、クライヴは近くの木でうなだれていた。

「・・・母さんが助けたんじゃなかったのか・・・俺はてっきり、母さんがオリオンをにがしたのかと・・・・」

独り言のようにつぶやかれる言葉に名前は口ごもった。そうだ、今はいろいろとかんがえさせてあげなくては。自分もそうしてもらったように・・・。
それにしても、【オリオン】にせよ、オリオンにせよ、随分と悲しい道を歩んでいたんだな。

「・・・かなしみにくれている暇はない、さぁ、行こう」

魔法で受けたきずをさっと治すと、二人はハリー達がいるであろう場所へむかった。

とある部屋で、ヴォルデモートはその青白く長い指でテーブルの端と杖をもてあそんでいた。
セブルスはヴォルデモートの前で屈み、何かを話している。

「わが君、抵抗勢力は崩れつつあります」

「・・・しかも、お前の助けなしでもそうなっている」

甲高くはっきりした声で言う。

「熟達の魔法使いではあるが、セブルス、いまとなってはお前の存在もたいした意味がない。我々はもう間もなくやり遂げる・・・間もなくだ」

「小僧を探すようにお命じください。私めがポッターを連れて参りましょう。わが君、私ならあいつを見つけられます。どうか」

ナギニは主人の横で舌をひょろひょろと出す。

「問題があるのだ、セブルス、この杖は何故俺様の思いどおりにならない?俺様は時間をかけてよく考えた。俺様が、なぜお前を戦いから呼び戻したかわかるか?」

椅子から立ち上がり、その冷たい赤でセブルスを見下ろす。
セブルスは必死にポッターを探し出す許しを、と乞うがヴォルデモートは一喝する。

「ポッターを探す必要などない。それに、クライヴもだ・・・あやつらはかならず、俺様のところへやってくるだろう。お前の一人息子もクライヴの庇護のもとにいるに違いない。あやつらの弱点を俺様は知っている―――」

一人息子、ということばに一瞬セブルスは震えあがった。どうか、安全な場所に身を隠していればいいが・・・。
あの子だけは、失うわけにはいかないのだ。何がなんでも、大切な――――最愛の息子だけは・・・・

「ほう、一人息子の話題で動揺しているようだな・・・あの日、お前の一人息子を屋敷から出したのもクライヴだろう。だが、クライヴがここに来たとしても、あやつが既に殺しておる頃だろう・・・」

体の震えをどうにか押さえた。怒りが沸沸と湧き上がるが、ここで素性をさらしてしまえば今までのことは無意味となる。

「ところで、俺様の杖が二本ともハリー・ポッターを仕損じたのは何故だと思う?」

「わ・・・わたしめにはわかりません、わが君」

「わからぬと?」

ヴォルデモートの怒りを肌で感じたセブルスは、倒れそうになる体をどうにか腕でささえる。

「俺様のイチイの杖は何でも言うがままに事をなした、が、ハリー・ポッターを亡き者にする以外はな。あの杖は二度もしくじりおった。オリバンダーを拷問し たところ、双子の芯のことを吐き、別な杖を使うようにと言いおった。俺様はそのようにした、しかし、ルシウスめの杖はポッターの杖に出会って砕けた!」

「私めには・・・わ、わが君、説明できません」

セブルスはもはや、ヴォルデモートを見てはいなかった。その瞳で、遠くにいるであろう一人息子のことを見つめていた。自分は結局、あのこにたいしてなんにもしてあげることができなかった。後悔の念が押し寄せる。

「俺様は三本目の杖をもとめた、ニワトコの杖、宿命の杖、死の杖―――前の持ち主から俺様はそれをうばった。アルバス・ダンブルドアの墓からそれをうばったのだ。この長い夜、俺様が間もなく勝利をしようという今夜、俺様はここに座り・・・」

ヴォルデモートは囁くように言う。

「考えに考えぬいた、なぜこのニワトコの杖はあるべき本来の杖になることを拒むのか、なぜ伝説どおりに、正当な所有者にたいして行うべき技を行わないのか、そして、俺様は答えを得た。」

セブルスの額にはうっすらと汗が滲んでいる。

「ニワトコの杖が俺様にまともに仕えることができぬのは、セブルス、俺様がその真の持ち主ではないからだ。ニワトコの杖は最後の持ち主を殺した魔法使いに 所属する。お前がアルバス・ダンブルドアを殺した。お前が生きている限り、セブルス、ニワトコの杖は、真の俺様のものになることはできぬ!」

セブルスは声をあげ、抗議するが聞く耳もたずでヴォルデモートは無慈悲にも、セブルスに杖先をむけた。

「セブルス、俺様はこの杖の主にならねばならぬ。杖をせいするのだ、さすれば俺様はついにポッターを制する!」

無慈悲にも、死の宣告をされたセブルスの頭の中では、走馬灯のように息子たちと過ごした日常が蘇ってきた。よく呪いのせいで入院していたりもした、ずっと 仕事におわれ、息子ともまともに会話をしたことがなかった。好きな科目は何なのか、好きな食べ物はなんなのか、好きな子はいるのか、ほかにも、たくさん話 したいことが山のようにあった。
仕事の都合上、家を空けることが多かった。だから、きっとあの子にはとても寂しい思いをさせていただろう。自分が不器用なあまりに、息子にろくな言葉もかけてやれなかった。
妻のアリスが死んでからというもの、笑わなくなってしまったし、自分もどこかその寂しさを紛らわすかのように仕事に没頭していたような気がする。結局は自分のことしか考えていなかったのだ。こんな自分は、あの子の父親と名乗る資格もない。
あの子は自分と似ていて、辛いことも悲しいことも常に隠し通していた。息子の心を開いてやれなかった。
だが、ホグワーツに通うようになってから、顔を合わせることも多くなったし、友人も増えたようで、昔の笑顔が戻ってきたような気がした。