57 それこそが、真実/謎のプリンス

記憶はフェードアウトしてゆき、いつもの校長室にもどっていた。ちょうど同じタイミングでハリーとダンブルドアが現実世界へもどってきた。

「…あの小屋の娘はどうなったんですか?メローピーとか、そんな名前でしたけど?」

「おう、あの娘は生き延びた」

ダンブルドアは机に戻り、ハリーや名前にも座るように促した

「オグデンは姿現しで魔法省に戻り、15分後には援軍を連れて再びやってきた。モーフィンと父親は抵抗したが、二人とも取り押さえられてあの小屋から連れ 出され、そのあとウィゼンガモット法廷で有罪の判決を受けた。モーフィンはすでにマグル襲撃の前科を持っていたため、3年間のアズカバン送りの判決を受け た。マールヴォロはオグデンのほか数人の魔法省の役人を傷つけたため、6か月の収監になったんじゃ」

どうやらダンブルドアとハリーのほうも大体同じ時間枠の記憶を見てきたらしい
名前はダンブルドアの話と先ほど見てきた記憶を掛け合わせ、考えを巡らせていた

「マールヴォロ…あの老人がマールヴォロ・ゴーント…僕の親戚にあたるのか…」

その一言にハリーは驚きの声を上げる

「え!?親戚!?」

「…知らないのも無理はないが、レーガン家とゴーント家は昔から深いつながりがある…といっても、ある日突然関係を断ち切ったんだがな・・・。」

「知らなかった…」

「メローピー、あの女性は闇の帝王の母親ですね」

「ふむ、流石は名前じゃ…物わかりが速いの」

さらにハリーは驚きの声をあげる

「そして父親はまさか、あの馬車にのってたマグルですか…?」

ハリーは恐る恐る聞くと、ダンブルドアは静かに頷いた。名前のほうの記憶だとそのことは一切触れていないのでなんのことかわからなかったが、ハリー達がヴォルデモート卿の父親と母親を見てきたことだけはわかった
それからしばらく、二人が見てきたことと憶測を聞き、今度は名前の番がやってきた。

「名前はどんな記憶をみてきたんだい?」

「おそらく時間枠は大体同じだろう…僕のほうは、祖父の父のフィガモネットがマールヴォロ・ゴーントにとあるものを求めていた、そしてメローピーに子供を産ませるな、と・・・予言者に言われたそうだ。」

その理由は今となれば分る。時渡り人だ――――――あれは常に禍の元なのだ。彼らは何らかの理由で命を絶たれてしまう
それは、スリザリンの血筋のものを滅ぼすという迷信かもしれないようなことを信じたものたちのせいでもあり、悲しき歴史でもあるのだ。

「…ハリーには言っていなかったが、ヴォルデモート卿には妹がいる」

「ええ!?」

今日ハリーは何度驚きの声をあげただろうか…
こんなに自分の家の話をするのは生まれて初めてかもしれない
もともと謎が多い一族なのだ…ダンブルドアですら手探りなのだから。しかしレーガン家とゴーント家にすべての答えが隠されているような気がする

「君が…スリザリンの血を引いてるのは知ってたけど……改めて君ってすごい生まれなんだね…」

「…そうか?偉大な血はその分一族を縛り付ける、あらゆることに対して制限がうまれるんだ…平凡に暮らしたいひとはマグルに生まれてくることをお勧めするよ」

純血家は少ないからこそ、大変なのだ。それの維持に
維持しなくてもいいとは思うがやはり守っていかなくてはならないものもある…レーガン家のように
血ぬられた歴史だとしても

「でも今回ヴォルデモートの過去を知るのは必要なことだったんですか?」

「もちろんそれは必要だ、ハリー」

ダンブルドアの代わりに名前が答えた

「未来を知るには過去をしる必要がある…どういう生まれをしてきたかを知るのは重要だ」

「…そうなのかい?」

ハリーは半信半疑だ

「いずれ分る…困った時に、今見た記憶がお前を救ってくれるだろう」

もう遅いので、もう眠るようにといわれた名前とハリーは各自寮へ戻って行った。グリフィンドールの談話室ではハーマイオニーたちが待ち受けていた。

「ハリー、おかえりなさい」

「どうだった?」

「…うん、多分収穫はあったと思う。」

「名前もいたんだろ?聞いたか?クライヴのこと…」

ロンに言われてようやく気がついた。そうだ、名前にクライヴは本当にヴォルデモートの親友だったのかと聞くはずだったのだ

「忘れてた…」

「だめじゃないのハリー、一番重要なことよ…もし、クライヴとヴォルデモートが繋がっていたら…」

「―――たぶん、それはないと思う」

「何でそう言えるんだい?君だって疑ってたじゃないか!」

「…なんでだろう…今日の名前を見たら、今までの自分の考えが馬鹿らしくなってきたんだ……名前は僕らの味方、なんだと思う」

「――――ほんとかい?でも僕はまだ疑っているからね」

そう言い捨てるとロンはすぐさま男子寮へ戻って行ってしまった。そこへ残るのはハーマイオニーとハリーだけ。

「…名前が敵でないことは確かよ、いくら闇の印があったとしても…名前は私たちの仲間よ。だけどきっと今あの人は両方の立場で揺れているんだと思うの…」

闇側にいる親友と、ダンブルドア側にいる私たちの間で…
ハーマイオニーの言いたいことは分る。僕だってロンが闇側だったら………ありえないけど…

そこでようやく名前が苦しい立場にいることをハリーは悟った。なんで今まで気づいてあげられなかったんだろう、と

「名前はシリウスの友達でもあるんだ…名前は今まで僕らを裏切ったことはない……どうして僕、今まで名前にひどいことばかり考えてたんだろう…」

「…私も少し頭がおかしかったわ」

二人はこれからはもっと名前にやさしく接しようと決意した。
そして月は眠り、太陽が目を覚ます

「…クライヴ……」

久々に夢をみた。クライヴがレーガン家の跡地で何かを掘りあてようとしている夢
何を必死に探しているのかは分らなかったが、夢の中のクライヴはあまり元気という言葉にはかけ離れていた
一体、何をそんなに必死に――――――いや、まさか、分霊箱…か?

彼が1年前から必死に何かを捜しているのは知っていたが、具体的に何を捜しているのかは分霊箱以外知らなかった。だが、きっとあれを破壊するのはハリー。なんとなくそんな気がする。
『そこには何もないよ、クライヴ』

―――るせぇやい、わかってる、そんなこと

『50年以上も前だからね、もしかしたらあんなポンコツ、なくなってるかもね』

あれはポンコツなんかじゃねぇ…あれは…

もう何日もこの薄暗い洞穴の中で生活をしている
名前やセブルスにも手紙を一切出していないし、ましてやダンブルドアにさえも

あの杖さえあれば、俺は自分の本当の力を発揮できるんだ…こんな、仮の杖なんかじゃなくて―――

クライヴは首からぶら下げた小さな水晶玉にずっと話しかけていた
9月に入ってからずっとこうだ。話し相手と言えば、水晶玉にいるあいつだけ

『話し相手が水晶玉なんて、ずいぶんさびしい人生ねクライヴ』

「うるせぇっつーの、キリク。それより早く俺の杖を捜してくれ」

『…はいはい』

あいつ、もといキリクと呼ばれた水晶玉は青い光を放ち始めた

「お、もうすぐだな」

『違うよ、どこからか忍び込んできた子鼠どもがいるよ』

クライヴは鋭い眼光を宿し、背後を見つめた。感じる、3人の死喰い人がやってきた、と
魔力も平均的で…これならばあまり魔力を消費しなくて済みそうだ。しかしなぜ網をくぐってやってこれたんだろうか…
それほどまでに自分の魔力は弱まってきたのだということだろう

こりゃやべえな…

杖をすっと暗闇に向け、間を空けず呪文を唱えた
緑色の閃光が壁に、魔法障壁にあたりはねかえる。相手からも魔法が飛んでくる

「お前たちのボスに言われてるだろーけど…俺、決闘で負けたことないんだぜ?」

にへら、と笑う口元
その姿はまるで三日月に潜む悪魔のよう

俺が、お前たちなんかにやられるとおもったら大間違いだぜ、トム

杖を捨て、瞳を閉じるクライヴを死喰い人は不審に思った。何故こんな時に杖を捨てるのだろうかと

『バジリスクよ、そいつらを噛み殺せ』

死喰い人にとってそれは恐怖を意味することと同じで、また崇高なるかの者を連想させるものでもあった
小太りの男は最後に帝王と同じくらい恐ろしく、美しい笑みを浮かべる男を見た。ああ本当だった。あの人が言っていたことは本当だった
あの帝王が、自分と同等に力を持ち、自分と同じ闇を抱えるとおっしゃっていたのを今でも覚えている
あの帝王がアルバス・ダンブルドア以上に恐れる男―――――最初から無理だとわかっていた。だけどあのお方の命令だけは逆らえない、でも杖を握った瞬間、妙な安心感が襲ってきた
それがいけなかった。俺はこのまま、うまくいけばその男を捕えることができると思えた。でもそれこそがその男の――――クライヴ・S・レーガンの魔法だった
俺は自信過剰になっていた。あの時逃げていれば――――今となっては無駄な足掻きだ

今、目の前に死を纏った男が俺を見下ろしている

「ごめんな、俺、他人に優しくねぇんだ」

そう言い、にこりと笑う男
その瞬間彼の頭と体は別れを告げ、底なしの闇へと飲み込まれていった
「思えば今日は11月か…?そうか、トムと名前の誕生日まであと1か月くらいか」 クライヴは冷たく息絶えた死喰い人を見下ろしながら言う 『おっそろしい光景だね、兄貴が恐れるのも無理は無いね』 水晶玉はクックックと楽しそうに笑い声をあげる。生半可な気持ちじゃトムに勝てないことくらいわかっている、そして時間がないことも――― 「もう俺にあまり時間は残されていないようだ…呪いの進行が早まった……」 『…知ってたよ、だってあんたの瞳―――――』 俺の瞳がすべて紅に染まる前に決着付けないといけないことぐらい、わかってる。
あの帝王が、自分と同等に力を持ち、自分と同じ闇を抱えるとおっしゃっていたのを今でも覚えている
あの帝王がアルバス・ダンブルドア以上に恐れる男―――――最初から無理だとわかっていた。だけどあのお方の命令だけは逆らえない、でも杖を握った瞬間、妙な安心感が襲ってきた
それがいけなかった。俺はこのまま、うまくいけばその男を捕えることができると思えた。でもそれこそがその男の――――クライヴ・S・レーガンの魔法だった
俺は自信過剰になっていた。あの時逃げていれば――――今となっては無駄な足掻き、だ。今さらの後悔は地獄への餞のことばのよう

今、目の前に闇を纏った男が彼を見下ろしている

「ごめんな、俺、他人に優しくねぇんだ」

そう言い、にこりと笑う男
その瞬間彼の頭と体は別れを告げ、底なしの闇へと飲み込まれていった。