15 ロングボトムの仕立て屋/シャボンディ諸島

ブルックが正式に仲間となり、翌朝、ここに彼の仲間のお墓がつくられた。この島はブルック達の故郷、西の海から来た島。故郷の土なら安らかに眠れるだろう…その想いでここに墓を建てることにしたようだ。本当に彼らとはもうお別れとなる…ブルックはかつての仲間たちに曲を送った。

「ゾロ!!!勝手に動いちゃダメだって言ったじゃない!!!」
「はぁ?うるせぇよもう動けるんだ」

本当はもっと体を休めていてほしかったのに、目が覚めたとたんウロウロと動き出すゾロ。さらに体がなまっちまったとトレーニングを始めてこれにはさすがの名前も呆れてものが言えなかった。

「もーーーーっ、折角傷口塞がったのに!!また開いちゃうじゃない馬鹿!」
「馬鹿とはなんだ馬鹿とは!?」
「アホじゃないの!?もう心配したんだよ!?」
「もう大丈夫だっつってんだろ!?」
「へ~~~~そうですかこれで大丈夫なんですね~~~????」

ぎゅうううと包帯の巻かれた箇所を握ると悲鳴を上げるゾロ。

「いでででてめぇは鬼か!?」
「魔女よ!!!」

でも、本当に、ゾロが目覚めてよかった。
今回は特に自分の無力さを思い知らされたと思う。包帯がほどけそうになっているのを見つけ、呪文を唱える。

「もう、本当にびっくりしたんだから…普通だったら死んでたよ、あの出血量は」

チョッパーが必死になって治療してくれたんだからね。だからおとなしくしてなさい、と背中をたたくと再びゾロは小さくうめき声をあげた。

「ヨホホホ…それにしても、すごいですね、魔法って」
「ブルック…ごめんねうるさくして…私も一緒に祈らせてね」

どうか、安らかに。目を閉じる。
そういえば、少し懐かしい夢を見ていたような気がしたけれども、夢の内容は忘れてしまった。目を開くと、彼らの笑顔が見えたような気がした。

朝、宴が終わると一行はまぶしい日差しを受けながら、スリラーバークと別れを告げた。旅立つ直前、ルフィの兄、エースからもらったビブルカード“命の紙”が消滅寸前で、彼の命がそれほどまでに危険だという状態に陥っているという事を知ったが、ルフィは海賊だから、と気にする素振りを見せなかった。内心は絶対に兄を助けに行きたいと思っているはずなのに、ルフィは仲間を選ぶ。ルフィのお兄さんを助けてあげたい…しかしルフィがそれを望まない以上、話すべきではない。

「―――ルフィ…」
「どうした名前、そんな顏すんじゃねぇよ」
「うん…」

この先、もしルフィがお兄さんを助けに行くと決めたら、もちろん全力で助けに行くつもりだ。しかし、今回の戦いで自分の無力さを改めて実感させられた名前は、より魔法を効果的に使えるようにならなければ…と思った。

世界を分つ、赤い大陸“レッドライン”が見えた頃、魚人島の行き方について悩まされていた。ログポースは下をずっと向いており、立ち往生していると巨大な“海獣”が船を襲う。海獣はルフィが倒してくれたが、ウサギのような、魚のような不思議な生き物だったなぁと今更ながらに思う。

「人魚…ココロさんと同じね!」
「名前ちん、ほかの人魚にあったことがあるの?」

海獣の口から、人魚と人語を話すヒトデが現れた。もうすぐで消化されるところだったの、とのんきに笑う彼女は人魚のケイミ―。若い人魚のようで、尾ひれが分かれていない。

「うん、ウォーターセブンっていう街でね…」
「やめてくれぇえええええ!!」
「…はぁサンジ…」
「まぁ気持ちはわかるぞ」

どうして彼らはココロさんに対してこんなに失礼な態度をとれるんだろうか。彼女は命の恩人だというのに。これにはナミもロビンも同じ気持ちのようだ。ほかの仲間たちがケイミ―と話をしている間、名前は一番気になっていたヒトデのパッパグの隣にいた。

「人語を話すヒトデなんて生まれて初めて見た!」
「へへ、驚くことなかれ、俺はガキの頃、自分を人間だと思っていたんだ、気が付いたら人語を話すようになっていた」

先ほどルフィたちに無視をされ、落ち込んでいた“ペット”兼“ケイミーの師匠”であるパッパグだが、自分に注目してくれる彼女に対して気分を良くしたのか嬉々として語り始める。
ちなみにケイミーの周りで例のごとく不思議な動きをしているサンジの事は気にしない方針だ。

「へぇ~面白い進化だね!ちょっと気になるなぁ…あ、触覚はあるの?ちょっとちぎらせてもらってもいい?ヒトデの触覚って魔法薬の材料になるんだよね~~」
「助けてくれケイミー!!!!!俺殺される!!!!!!」
「あ~ごめんごめん、ほんのちょっとでいいんだ!」
「ケイミィイイイイイイ!?俺すげーピンチなんだよ~~~~!?どうしてそっちで楽しそうに笑ってるのかなぁ~~~!?」

向こうは向こうで盛り上がっている様子。
怯えるパッパグの様子をみて、流石に初対面で失礼な事を言ってしまったかな…と名前は反省する。彼に謝罪をし、彼とは同業者として情報交換をすることにした。

「私、ここで仕立て屋をしてるの、さっき“クリミナル”のデザイナーだって言ってたよね?」
「お、おう!よくぞ聞いてくれた!俺様は人気スーパーデザイナーなんだぜ!」
「まさかデザイナーの人に会えるなんて嬉しい!ウォーターセブンでも女の人に人気だったから名前を聞いたときは驚いちゃった!」
「へへへ…照れるぜ…お前は仕立て屋っつーことは、同業者だな?」

やっぱり、同業者同士気が合いそう。ケイミー達が別の話で盛り上がっている中、名前はパッパグと魚人島のトレンドについて話し合っていた。

「よろしくね!ところで、魚人島でのトレンドは何なの?」
「そうだなぁ~やっぱりカラフルさじゃねぇかな?」
「そっか~やっぱり原色系がトレンドか~」

土地によってトレンドは変わるものの、こちらのカラートレンドは基本的に鮮やかな原色のような気がする。ドレスも派手なのが人気だったので、世界中でそういう流行になっているのだろう。

「どんなパターン持ってる?いろんなパターン用意しないと洋服作れないから、パターン入れてる引き出しなんてもうすごいことになってるよ~」
「おお、なら、人魚と魚人族のパターン、分けてやろうか?」
「え!いいの!!」

彼は魚人島の一等地、“ギョバリーヒルズ”にて大きな店を持っているらしく、島に戻ればたくさんパターンを持っているので分けてくれることとなった。さらに、魚人島でしか手に入らない生地も分けてくれるんだとか。海の中で生活をする人たち用の生地なので、地上では絶対に手に入らないし、水に強い服を作れることに興奮を覚えた。根っからのファッションオタクである名前は、新素材の生地が世界で作られるたびにマグルに扮して仕入れ会に参加していたが、それも今となっては懐かしい思い出だ。

ケイミーたちを助けたお礼として、たこ焼きをご馳走してくれることとなり、たこ焼き屋の店主はっちんなる者に連絡すべく電伝虫をかけたまではよかったが、出てきた相手は謎の男。どうやらはっちんなる者は悪い人たちに捕まってしまったようだ。

この先にはシャボンディ諸島というところがあり、そこでは人身売買が横行されているようで特に人魚は高値で売れるそうだ。今回はっちんとやらが捕まったのも、ケイミーたちが彼らに捕まったと勘違いして、乗り込んだためだと推測される。
少し気がかりなのは、はっちんがもし、ナミたちの知る人物だった場合―――。グランドラインに出る前、ナミはとある魚人海賊団に支配された村で暮らしていた。そこで大切な人を失ったナミにとって、そこに所属していた魚人たちは育て親の仇。もし、今回ケイミーの言うはっちんとやらが“ハチ”という魚人だった場合、助ける義理もないと考えている。しかしケイミーの友人を一度助けると言ってしまった以上は、確認する必要があった。

「ボスはデュバルという鉄仮面の男、その素顔は誰もしらねぇ」

トビウオライダーズという男たちがこのあたりでは幅を利かせているらしく、今回ハチをさらった悪い奴らと彼らが組んでいるらしい。デュバルという男はなんでも人を探しているらしく、ここらを通る船すべてをチェックしているんだとか。
ハチの居場所を魚たちに教えてもらい、一行は海を進む。魚と会話できるなんて、神秘的な存在だなぁ。彼女の横顔を見て思う。

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