11 こんにちはそれぞれの世界 Type:N

波の国から帰ってきてからというもの、ナルトくんとサスケくんが妙にギクシャクしていた。あの戦いで、成長したのはみんな同じではあるが、特にサスケくんの伸びが大きかった。その差が、戻ってきてからの任務でも顕著にあらわれ、ナルトくんは焦りを感じている様子。だから、特に最近はサスケくんにナルトくんが突っかかることが増えていた。

 

「……だから、最近落ち込んでるんだ」

「サクラちゃん……」

 

どうやら、サクラちゃんはサスケくんに、自分なんかを追いかけていないで、修行をしろときつく言われてしまったらしい。サスケくんに、ナルトくん以下だと言われて、かなりショックを受けたようで、どうしたらいいんだろう、と落ち込んでいた。カカシ先生が直ぐ側で話を盗み聞きしていたが、とりあえず気づいていないふりをして私はサクラちゃんの話を聞くことにした。

 

「サスケくんも、最近ツンケンしてるしね……実力が付いてきて、自信に溢れてるって感じがする、あれはこの時期の特有のものかもしれないね~」

「この時期の特有なもの……?」

「思春期なんじゃないかな?たぶんね!」

 

その言葉の直後、誰かが勢いよく咳き込んだような気がした。

 

「もう、ふざけないでよ、わたしは真剣なの」

「真剣に答えてたつもりなんだけど……そうだなぁ、正直、ナルトくんやサスケくんって、結構、いや、かなり才能のあるタイプだから、超一般人の私にはその領域には絶対にたどり着けない自信があるんだけど、才能って言うなれば個性だからさ、その個性を伸ばせばいいんじゃないかなって、思うんだ」

「……才能……個性……」

「サクラちゃんには、サクラちゃんだけが持っている才能があることを、私は気づいているよ」

「わたしの、才能?」

「サクラちゃんは、チャクラコントロールが上手だよね?それに、物覚えや頭の回転も早い、それってすごい才能だよ!」

 

だから、サクラちゃんが落ち込む理由は全然なくて、もっと自分に自信をもったほうがいいよ!そう強く伝えると、サクラちゃんの表情が明るくなってきたようなきがした。

 

「私は、サクラちゃん達とは違って、昔から忍者を目指していた訳じゃないから、ポテンシャルが第7班の中でも一番下だっていう自負はあるんだ……だから、私は私の個性を伸ばそうって思ったの」

 

それが、木遁だった。誰かを守るために、私は木遁を使いこなせるよう日々修行をしている。外から見ればほんの小さな前進でも、私にとっては大きな前進だ。ようは、自分が自分自身をどう捉えられるかが重要だと考えている。

 

「そんな、ポテンシャルが低いなんて、思ったことないよ、だって名前ちゃんはすごいじゃない、医療忍術だって使えるし……」

「正直、医療忍術は、中途半端なものしかできないんだ、人体についての豊富な知識が必要で、命がかかっているからコントロールも絶対に失敗することが出来ない。私がやれる医療忍術って、今のところ、ここまでが限界で、これ以上の治療ってなると……」

 

やれる自信はない。自分の個性を伸ばすとしたら、医療忍術ってよりは木遁の方面で進化させたほうが良さそうだからだ。

 

「私が忍術を学び、忍者を目指そうって思ったきっかけは、大切な友達の死。友達を誰も助けられなくて、そんな自分が情けなくて、悔しくて、悲しくて。だから、忍者を目指そうって思ったの。だから、私は、これからも、大切な友達を守るために、頑張るつもり。もちろん、サクラちゃんだって、私の大切な友達……ナルトくんや、サスケくんもそうだよ。私はみんなを守れるように、強くなりたい。この気持が大切なんだって、波の国でナルトくんに気付かされたんだ」

「……名前ちゃん……」

「私は私のできることをする……人にとっては、些細な一歩かもしれないけれども、私にとっては大きな一歩。人それぞれ歩幅があって、それが自分の個性で。サクラちゃんは、サクラちゃんの歩幅に合わせて頑張ればいいんだよ」

 

だから、周りをみて、落ち込んだりしても大丈夫。みんな違う人間なのだから、能力に差があるのは当たり前のこと。私はその事に対して、アカデミーに入って悩んでいたが、同じ班の頼もしい仲間たちの姿を見ていて、悩んでいても仕方のないことだと、むしろ開き直ることが出来た。

 

「ありがとう名前ちゃん!やっぱり、持つべきものは友ね!」

「ふふ、どういたしまして!私のほうこそ、いつもありがとう!実はね、私が一番、みんなに助けられてるんだ。みんながいるから私がいる……私1人じゃ、生きていけなかった。私には家族がいないから……私にとっては、みんなが、家族みたいなものなんだ!」

 

そう言うと、サクラちゃんは私をぎゅっと抱きしめてくれた。

 

「も~~~悩んでた自分が馬鹿みたい~~!わたし、なんてバカバカしいことで悩んでたのかしら!!そうよ!!!サスケくんを振り返らせてみせるわ!!」

「そう!その調子だよ!!」

 

それにしても、自分が休んでいる間に、3人の中でも色々あったんだなぁ。サクラちゃんと別れたあと、空をみてぼんやりと思う。すぐ近くにいるカカシ先生は、イチャイチャパラダイスを読んでいた。

 

「名前~お前って、実はアカデミーの教師に向いてるんじゃないかって思ってたんだが、向いてそうだな!」

「アカデミーの先生なんてなれませんよ……色々出来ないと駄目じゃないですか、先生なんて」

 

人に忍術や体術を教えることなんて、できる自信はない。すると、カカシ先生は物陰からひょっこりと姿を現した。

 

「いいや、お前には人の心に寄り添える優しい忍者だ、そして何より、仲間思いで、頼りにされている」

「た、頼りにされてるんですか?」

「ああ、間違いないよ、あいつらは、お前を頼りにしてる、サスケなんかは無自覚だろうがな」

「ま、まさか~……」

 

体術も体力もヘッポコの私が頼りにされているとは思えなかったが、カカシ先生曰く、みんなは私のことを精神面で頼りにしているそうだ。ちなみに、そんな私が、波の国で見せた活躍でサスケくんを少し焦らせてしまったらしい。カカシ先生からその話を聞かされ、自分自身もサスケくんとギクシャクしてしまうきっかけを作ってしまった事に対して、申し訳ないなぁと感じた。

 

「お前はいい先生になれると思う」

「……ちょっと、考えてみますね、でも、アカデミーの先生って中忍以上ですよね?」

「ん~そうだな、中忍と上忍・特別上忍で構成されている……中忍になって、火影様の推薦状があればアカデミーの教師になることができるぞぉ」

「あはは……それって中忍試験を受けなくちゃならないってことですよね……」

「そうだな~、波の国でも見ていたが、お前のその実力があれば、なかなかいい線いけるんじゃないかと俺は思うけどね」

 

カカシ先生からの評価が、なかなか高評価で驚いた。なんせ、あのテンゾウの先輩だ。ハードルが恐ろしく高いことは予想していたが、ここまで評価をしてくれていたとは。

 

「波の国で、名前の木遁があって正直助かってたところだ、お前の忍術は守りに特化しているから、護衛任務には最適。サクラたちも頑張っていたが、守りに関してはお前の木遁が一番光っていた。そのおかげで俺は戦いに専念出来たというワケ」

「う、わ、あ、なかなか照れちゃいますね、まっすぐ言われると」

 

ぽん、と頭に手を置かれ、ふと見上げると、優しく微笑むカカシ先生の表情が目に入る。この状況が急に恥ずかしくなって、顔を真っ赤にして硬直していると、ああごめん、とカカシ先生は手を引っ込めて苦笑した。

 

あんなイケメンから至近距離で微笑まれたら……うわあああああああ!!!

地面に転がり、意味不明な言葉を叫ぶ私を横目に、カカシ先生はやれやれと呟いた。

 

「カカシ先輩、相変わらず女性キラーですね」

 

この声はテンゾウだ。暗部服姿でシュタ、と登場してきた。カカシ先生とテンゾウがこうして話をしている姿はあまり見たことがなかったので、なんだか新鮮だ。

 

「あーテンゾウ、いいところに来た、お前に聞きたいことがあったんだ、この後暇か?」

「この後ですか?これから火影様に報告へ向かうので、その後でしたら」

「そうか、なら、目的地は同じだから一緒に行こう。じゃあな、名前、女の子が地面に転がるんじゃないよ」

「うっ、はい……」

 

すると、2人は一瞬でその場からいなくなってしまった。別に遠い距離でもないのだから、ゆっくり歩いていけばいいものの。そう思ったが、2人は2人で実はとんでもなく忙しいのかもしれない、と考え直す。テンゾウに関しては、カカシ先生が暗部から抜けた穴埋めで日々任務に追われているらしい。

 

「……さーて、私は修行をするかぁ……」

 

それからまもなくだ、カカシ先生より、第7班の中忍選抜試験に推薦をされたのは。志願書を手渡されるが、それは強制ではないという。受験するかしないかを決めるのは、私達の自由らしい。

 

「受けたいものだけその志願書にサインして明日午後4時までに学校の301に来ること、以上!」

 

用件だけを伝え、カカシ先生はいつものようにあっという間に何処かへ行ってしまった。

 

「むっふっふっふーん、中忍試験!中忍試験!強いやつがたくさん出てくるんだろうなぁ……」

 

私が休みの日、ナルトくんたちは風の国の砂隠れの里からやってきたという忍者達と出会ったらしい。すでに他里には木ノ葉で中忍試験が行われることは通達されているようで、里の中でちらほら、他里の額当てをつけた忍者を見かけた。

 

「……名前ちゃん、わたし、受けようと思う」

「……うん、頑張ろう!」

 

この試験にサクラちゃん自らが、自発的に受けると発言したのが意外だったようで、隣に歩いているサスケくんは少し驚いたような表情を浮かべていた。

 

「4人で頑張ろうってばよ!!」

「フン、せいぜい足を引っ張るなよ」

「何をぅサスケ!?」

 

まーた喧嘩がはじまった。全くもう。

それぞれが明日のため、準備をするべく解散した後、私は旧うちは自治区にやってきていた。なぜ私がここにきたのかというと、“石碑”に挨拶をするためだ。そこには親友たちが眠っていて、時々私はここを訪れている。

 

「この通りも……たくさん人がいたよなぁ……イズミちゃんと歩いたっけ……」

 

誰かが居るわけでもなく、独り言を漏らす。最近では下忍になったおかげで、暗部がつくこともなくなったので、本当に1人だった。道を進むこと数分、あの殺戮で亡くなった人たちの石碑がある場所へとたどり着いた。そこは昼間だというにのとても静かで、ひんやりと涼しかった。自宅のプランターで忍術を使って成長させた花を幾つか切って持ってきたので、それをそっと石碑に置いた。

 

「……イズミちゃん……私ね、中忍選抜試験を受ける事にしたんだよ、びっくりだよね、付いこの間、下忍になったばかりだと思ってたけど……そもそも、私が忍者になるなんて、思ってもいなかったよね……あのときは、5大国一のケーキ屋さんになるって、偉そうなこと言ってたけど………私…」

 

ふと、誰かの気配に気がつく。振り向くと、そこにはサスケくんが立っていた。サスケくんとこうして2人で話すのは、かなり久しぶりかもしれない。

 

「……あれ、サスケくん?」

「悪い……声が聞こえたから」

「あはは、独り言、大きかったかも」

「いや、そんなことはない、ただ、ここに誰かが居るなんて珍しいと思っただけだ」

 

確かに、ここに来る人は木ノ葉の里でも少数だろう。

 

「時々来てるんだけど、最近忙しくてなかなか来れなかったから……」

「知ってる、名前がここに時々来ていることは……昔もよく、うちは自治区に来ていたよな」

「そうだね~そのときのサスケくんはイズミちゃんと私に敵意丸出しだったよね~」

「なっ、あのときはまだガキだったから」

「ふふ、懐かしいね……サスケくんも、こんなに大きくなって」

「……親戚のおばさんかよ」

「あはは、それに近い気持ちかも……今でもさ、イズミちゃんや、シスイくんのこと、思い出すんだ、そして……サスケくんは嫌かもしれないけれども、イタチくんのことも」

 

最後の名前に、サスケくんは反応をみせた。彼の握りしめられた手がかすかに震えた。

 

「……気持ち、暗くなっちゃったね、ごめん。明日から中忍選抜試験だっていうのに……ダメダメだね」

「……いや、別に気にするな……お前、サクラになにか言ったのか?」

「え?サクラちゃんに?」

「……いや、なんとなくそう思っただけだ、何もなく、サクラが中忍試験を受ける気になるとは思わなかったからな……」

 

ああ、そういうことか。サスケくんの言いたいことがようやくわかった。すべてではないが、仲間として、サクラちゃんの葛藤を聞いて、少しアドバイスしただけだと伝えた。

 

「アドバイスだけでサクラが試験を受ける気になるか?」

「サクラちゃんも、私と同じ悩みを抱えていたみたいだから……」

「お前と同じ悩み?」

「そう、私の友達で、たった1年でアカデミーを卒業して中忍試験をパスしちゃった人とか、意味分からない天才たちがいて、今の自分とその人達を比べちゃうと、もう比べるのもおこがましいほどに差があるんだよね。そんな人たちといるとさ、自分の小ささをよく感じるんだ。友達を守りたいっていう理由で忍者になる道を選んだから、それは貫き通すつもりでいる。だけど、時々辛いな~って思うことはあるんだ。その差をつきつけられたとき、落ち込むのって、普通だとは思うんだけさ!」

 

この話をサスケくんにするのは、実は初めてだったりする。脳天気な私が案外悩んでいる事を知って、少し驚いた様子だ。

 

「サスケくんとナルトくんは、才能のある忍者。それに追いつこうと、サクラちゃんも苦しんでたんだ。でも、才能ってつまり個性のことだから、自分の個性を伸ばそうってアドバイスしたの」

 

サクラちゃんは、この3人にはない、頭の良さがある。見聞きしたことは基本的に忘れないし、それは私からしたら、ものすごい特技だ。チャクラの繊細なコントロールも上手で、木登りは誰よりも早くに出来た。自分自身の素晴らしい個性に気がつけば、きっと何かが変わるはず。そう思ったからこそ、サクラちゃんにアドバイスをした。それに、自分と同じ苦しみにぶつかっている友達を、放っておけるわけがない。

 

「まぁ、偉そうに言えた立場じゃないのは100も承知なんだけどね……」

「色々と、考えていたんだな」

「へへ、まあね。この中では一番年上で、お姉さんだからね~いつでもこのお姉さんを頼りにしてくれたまえ~」

「うぜぇ」

「あっひどーいサスケくん」

 

まったく、ツンデレなんだから。そう言おうとしたら、もうそこにはサスケくんの姿はなく。帰るんなら、せめて挨拶ぐらいはしていきなさいよね、まったく。

 

「じゃあ……またね、イズミちゃん、シスイくん、私、頑張ってくるよ」

 

だから、どうか見守っていてください。

返事をしてくれているかのように、ふわりと、お供えをした花から花びらが舞った。

 

翌日、元気そうな3人の顔をみて少しホッとした。中忍選抜試験は、どんな内容が試験にでてくるのかはその年によって変わる。だから、どんなことが起きるのか全く予測がつかない。私の感覚からしたら、下忍になったばかりなので、正直不安は不安だ。

 

「ふ~~~ん、そんなんで中忍試験受けようっての?」

「やめたほうがいいんじゃない、ボクたち」

 

教室の前で、なにやら人だかりが出来ていた。301に向かわなければならないのだが、そこで足止めされている。それに、なんだか、妙な違和感を感じるのは気の所為だろうか。

 

木ノ葉の忍者が二人組で、301と書かれた札がある教室の扉を塞いでいる。

 

「ケツの青いガキなんだからよォ……」

「そうそう!」

 

両サイドにお団子をした、チャイナ風ヘアスタイルの女の子がその2人に退いてもらおうと話しかけているが、突然男に手ではねのけられ、床に転がっていった。ひでぇ、と誰かの避難する声が聞こえてくる。

 

「なんだって?いいか!?おこれはおれたちの優しさだぜ……厨人試験は難関だ、かくいうおれたちも3期連続で合格をのがしている。この試験を受験したばっかりに、忍をやめていく者、再起不能になったもの、おれたちは何度も目にした」

 

どうやら、この人達は、試験を受ける私たちを脅しているようだ。

 

「それに中忍っていったら、部隊の隊長レベルよ、任務の失敗、部下の死亡……それはすべて隊長の責任なんだ、それをこんなガキが……」

 

どっちみに、受からないものをここでふるいにかけて何が悪い。男のその言葉で、隣にいたサクラはなにか気がついたのか、はっとした表情を浮かべていた。

 

「正論だな、だが、オレは通してもらおう、そしてこの幻術でできた結界をとっとと解いてもらおうか、オレは3階に用があるんでな」

 

ああ、そういうことか。ここに来たときの違和感は。サスケの言葉に、ようやくすべての答えを導き出した。幻術がかけられていて、ここはまだ2階だった。

 

「サクラ、どうだ、お前なら一番に気づいているはずだ」

「え?」

「お前の分析力と幻術のノウハウは、オレたちの班で一番伸びてるからな」

 

あのサスケくんが、誰かを褒めるなんて!サスケくんが純粋に褒めてくれることなんてとても珍しい。

 

「もちろん、とっくに気づいているわよ、だってここは2階じゃない」

「うん!」

 

ナルトくんも、ちゃんと気がついていたようだ。ここに入ったときの違和感の正体は幻術だったということ。札がゆらりと揺れて、201という数字が姿をあらわす。あの男は、きっと試験管だったのだろう。サクラちゃんも、ふるいにかけて、という言葉を聞いた時、試験管だと確信したみたいだ。

 

「ふ~~~ん、なかなかやるねぇ、でも見破っただけじゃ……ねぇ!」

 

すると、試験管の男はサスケくんに強力なケリをお見舞いしてきた……かに見えた。試験管とサスケくんの間には、緑色の全身タイツの少年が現れ、2人の足を両手で受け止めた。なんと、その出来事、たったの数秒のことだ。

 

「おい、お前約束が違うじゃないか、下手に注目されて警戒されたくないと言ったのはお前だぞ」

「……だって」

 

髪の長い少年が、緑の全身タイツの少年に声をかける。ほほう、彼らは同じ班の仲間か。なんとなくそう感じた。

 

「あのーーーーボクの名前はロック・リー、サクラさんというんですね……」

 

ボクとお付き合いしましょう!!死ぬまであなたを守りますから!!

突然の告白に、流石の私も動揺を隠せない。サクラちゃんに関しては、今まで見たことの無いぐらい、ドン引いた表情を浮かべていた。

 

「ぜったい……いや……あんた濃ゆい……」

 

見事に振られている。しかし、彼もピュアピュアなタイプかもしれない。落ち込むリーくんを私は慰める。

 

「リーくん、まぁ落ち込まないで」

「……あなたは……」

「私は楠名前、よろしくね」

「楠名前さん!ボク、知っています、確か遅咲きの忍者だと噂は耳にしてます」

「遅咲き……たしかにそうだね、年齢で言えば、同じ班の子たちよりも5歳も年上だから」

「ふん、その年で下忍とは……」

 

長い黒髪の子が、突然口を挟んできた。彼の小馬鹿にしたような物言いに、サクラちゃんたちはむっとするが、馬鹿にされるのにはなれている。遅くに入学をして、この年齢で下忍なのだから、言われないほうが珍しい。

 

「えーっと、君は……?」

「彼は日向ネジです」

「おい、リー!勝手に紹介するな!」

「わたしはテンテン、よろしくね、名前さん」

「ふふ、名前でいいよ、よろしくね、テンテンちゃん、ネジくん」

 

ネジくんの言葉に対してなんのダメージも受けていないので、普通に返事をして返したら、そっぽを向かれてしまった。まーた彼もツンデレタイプね……。すぐさまターゲットを、サスケくんに変えたようだ。おいそこのお前、名乗れだなんて随分と失礼な挨拶だなぁとは思ったが。

 

「人に名を聞くときは自分から名乗るもんだぜ」

「…おまえルーキーだな、歳幾つだ」

「答える義理はないな」

 

うん、ここは代わりに答えてあげるとしよう。リーくんもそうしてくれたし。

 

「うちはサスケくん、12歳」

「おい!名前!!勝手に紹介してんじゃねぇ!」

「……っぷ」

 

先ほどと全く同じ状況になって、思わずテンテンちゃんが吹き出した。

 

「さぁ!サスケくん、名前ちゃん、ナルト、行くわよ!」

 

誰も名前を聞いてくれなかったからか、ナルトくんはやけに沈んでいた。教室に向かおうとしたが、先程のリーくんに呼び止められてしまった。どうやら、リーくんは天才忍者と謳われた一族の生き残りであるサスケくんと戦ってみたいようだ。あとは、サクラちゃんに一目惚れしたというのもあって、一方的に恋のライバルとして認定された様子。

そこで悔しい思いをしていたナルトくんは、リーくんに挑む。ここは室内なので、体術での戦いだったが、一瞬で負かされてしまった。ついにサスケくんとのタイマンバトルとなったわけだが、そこでリーくんの凄さを見せつけられた。サスケくんは写輪眼を使っているというのに、リーくんの速さに追いつくことが出来なかったのだ。最後、何らかの技をやろうとしていたとき、巨大な亀があらわれ彼を叱った。そして、その亀の上にはこの世のすべての濃さを凝縮させたかのような、1人の男が現れた。彼はマイト・ガイという上忍の男で、リーたちの上忍師だった。登場した際のポーズも強烈であれば、姿形、声までもがものすごいインパクトを持っている。よくわからない青春劇場をみせられたかと思えば、嵐のように去っていった。しかし、彼……リーくんのおかげで、慢心気味だったサスケくんも目が覚めたようだ。

 

301にたどり着いた時、カカシ先生の姿が目に入った。どうやら全員が無事301に来たことで、ようやく正式に中忍試験に申込みができるらしい。実はこの試験、初めから班の全員が揃っていないと受験できない事になっていたようだ。

 

先生に見送られながら教室に入ると、その空気に圧巻された。その中から、特に嫌な気配を放つ人物がいるのだが、誰なのかは分からない。私は生唾を飲み込んだ。

 

「サスケくんおっそーいっ、わたしったら、久々にサスケくんに逢えると思って~ワクワクして待ってたんだからーっ」

 

突然、サスケくんに飛びついてきたのは、山中いのちゃん。同じ時期の卒業生で、私の友達の1人。相変わらず長い髪の毛がきれいだった。

 

「サスケくんから離れろっいのぶた!!」

「あ~~~~らサクラじゃな~~い、相変わらずのデコりぐあいねブサイク~、あ、名前久しぶり~元気だった?」

「なんですってー!!」

 

相変わらず、サスケくんのことが好きなんだなぁ。恋する乙女、いいね、素敵よ。私は微笑む。いのちゃんのおかげで、緊張していた身体もほぐれたような気がした。

 

「なんだよこんなめんどくせー試験、お前らもうけんのかよ!」

「なんだぁおバカトリオか」

「その言い方はやめー!」

 

シカマルくんにチョウジくんも後からやってきた。

 

「ったくクソめんどくせー」

「ひゃほ~~みーっけ」

「こ、こんにちは……」

 

ヒナタちゃん、キバくん、シノくんも教室で待っていたようだ。彼らのおかげで、さらにこの場が賑やかとなり、それだけ視線を浴びているということにみんな早く気がついてほしい。あの中から嫌な殺気を感じるのは、私だけなのだろうか。

 

「おい、君たち!もう少し静かにしたほうがいいな」

 

ほらやっぱり、言われてしまった。カブトという、どちらかと言えば私に年齢の近そうな青年が忠告をしてきた。彼は7回も中忍試験を受けているらしく、この試験には色々と詳しいらしい。彼が持っている、忍者の情報を少し見せてくれるといい、リーくんと砂隠れの忍者である我愛羅という少年の情報を提示してくれた。

なんだかんだ言われたが、最後にはナルトくんがすべて持っていってしまった。全員に宣戦布告って、ナルトくんらしいと言えばらしいが。ナルトくんの声で、教室の空気も一気に変わった。

 

「……!」

 

確かな殺気を感じた。その殺気は、二手に分かれ、カブトという青年めがけて襲いかかる。そして、カブトさんが直前で避けたかに見えたが、突如嘔吐し、床に膝をついた。見た目は地味な攻撃ではあったが、どうやら、内側に効くたちの悪い攻撃だったようだ。ナルトくんとサクラちゃんは倒れるカブトさんを立ち上がらせるため手を貸している。それを見て、なんだか、この人とは相容れなさそう、なんて考えた。裏しかなさそうな人だな、と感じたからだ。

一瞬だったから分かりづらいと思うが、カブトさんから殺気が放たれたような気がした。見た目は何でも無い人物なのに、何故か怖気づきそうになってしまった。

 

「静かにしやがれどぐされヤローどもが!」

 

豪快な音とともに、試験管たちが教室に姿を現した。真ん中に立っている強面の男は、中忍選抜第一の試験の試験管で、名を森乃イビキという。

 

「音隠れのお前ら!試験前に好き勝手やってんじゃねーぞコラ、いきなり失格にされてーのか」

「すみませんねぇ……なんせ初めての受験で舞い上がってまして……つい……」

 

音隠れの里の忍だったのか、先程の奴らは。強面の試験管の一声でようやくその場が落ち着いた。そして、試験が始まった。まさかのペーパーテストで、問題が難しすぎて私は何も答えられなかった。しかし冷静になって考えれば、これは中忍となるものを選別する試験……忍術を使って、カンニングをすればいい。カンニングだとバレなければいいのだから。

小さな木遁分身を作り、それを机の中に潜り込ませる。木遁分身の情報は、術者にも共有されるので、回答がバッチリ書かれていそうな人物の答案を盗み見ればいい。ナルトくんが正直不安だったが、なんとか最後の問題で、第7班全員クリアすることができた。教室に突然やってきた、次の試験管のみたらしアンコというくノ一には驚かされたが。