08 こんにちはそれぞれの世界 Type:N

「そうだな、まずは自己紹介してもらおうか」

 

屋上に呼ばれ、一行は新しい上忍師のカカシ先生を先頭に向かった。早速、自己紹介をすることとなったが、自己紹介と言っても何を言えばいいのか、サクラちゃんの根本的な質問に対し、カカシ先生は気だるそうな声で返事をする。

 

「そりゃあ、好きなもの、嫌いなもの、将来の夢とか、趣味とか……ま、そんなのだ」

 

なるほど、自己紹介の中身はおまかせって感じね。と、ここでごもっともな意見をナルトが述べる。

 

「あのさあ、あのさあ、それよりも先に先生、自分のことを紹介してくれよ」

 

確かに、教室に入ってきてすぐの言葉が“嫌いだ”だけで(仕掛けたのはナルトくんと私だが)この人物の情報を、私以外はなにも知らない。

 

「俺か?俺は、はたけカカシって名前だ……好き嫌いをお前らに教える気はない、将来の夢って言われてもなぁ……趣味は……ま、色々だ」

 

なんとなくだが、適当な感じに見せておいて、隙きのないタイプとみた。天才忍者だとテンゾウからは聞かされていたが、常日頃から隙きを見せないよう徹底しているんだなぁ、と関心してしまう。

 

「次はお前らだ、まずはお前から」

 

最初に指名されたのは、ナルトくんだ。

 

「オレさ、オレさ、名前はうずまきナルト!好きなものはカップラーメン、もーっと好きなものは、イルカ先生に奢ってもらった一楽のラーメンと名前ねえちゃんの作ってくれたシチュー、嫌いなものは、お湯を入れてからの3分間とグリーンピース!趣味はカップラーメン食べ比べ、ほんで、将来の夢は火影を超す!!んでもって、里のやつらに全員、オレのことを認めさせるんだ!」

「……!」

 

火影を超すなんて、すごい夢だ。これにはカカシ先生も気だるそうな瞳を少し見開いて驚いていた。

 

「……じゃあ、次」

 

お次はサクラちゃん。しかし、伝わった内容は、サスケくんが大好きで、サスケくんに恋する乙女、ナルトくんが嫌いということだけ。サスケくんに至っては一族の復興とある男を殺す事という野望を、こんなに青く晴れ渡った空のもと言うものだから、どんな表情をしていいのかわからなくなってしまった。ある男というのが、イタチくんの事を指していることはすぐにわかってしまった。ふと、彼の顔を思い出して、気持ちが落ち込んでしまったのはここだけの話。

 

そして最後に回ってきたのは私。サスケくんが自己紹介を終えても私はしばらくうーんと唸って、真剣に考えた結果、無難な自己紹介をすることにした。まずはみんなが気になっていることを先に伝えたほうがいいだろう。

 

「私は楠名前、ナルトくんたちとは5歳も年上だけど、体力へっぽこなのでいつもみんなには助けられてます。好きなものは甘いもので、苦手なものは辛いもの、将来の夢は……うーん、五大国一のケーキ屋さんになることでしたが、今は友達を守れるようになりたい、です。趣味は、ケーキ作りです」

 

「ケーキ屋さん、そういえば、名前ねえちゃん、そんな事言ってたな」

「そうなんだよね、色々ショックな出来事があったから……はぁ……」

 

思い出すだけで気持ちが沈んでいくのがわかる。それを察したのか、カカシ先生はすぐさま話題を変えた。

 

「……よーし、4人共個性豊かで面白い、明日から任務やるぞ」

 

明日、任務と言う名の、サバイバル演習が行われる事となった。演習といえども、ただの演習ではない。カカシ先生は不敵な笑みを浮かべる。

 

「卒業生28名中、下忍として認められるのはたったの数名……残りは再びアカデミーに戻される。つまりこの演習は、脱落率の高い、超難関テスト」

「「「……!!」」」

 

これには、流石のサスケくんも反応を示した。これこそが、下忍昇格試験だ。

 

「そんな馬鹿な!あれだけ苦労したってのに!じゃあ、じゃあ、なんのための卒業試験だったんてばよ!?」

「あれは、下忍になる可能性のあるものを選抜するため。ま、そういうわけで、明日は演習場でお前らの合格不合格を判定する。忍道具一式持って、朝5時集合!」

 

朝飯を抜いて来いとの命令だが、兵糧丸だけは持っていたほうが良さそうだ。一通り説明が終わった後、解散となった。

 

翌日早朝5時、私たちは言われた通り、約束の場所に集まった。道具も一式持ってきているので、おおきなリュックが正直邪魔だ。

 

「ナルト、あんたちゃんとご飯を抜いてきたでしょうね」

「おう!当たり前だってばよ!」

 

ぐ~~ぎゅるる……

次の瞬間、ナルトくんの腹の虫が情けない音を立てた。

 

「ナルトくん、朝からギャグセンスが冴えてるね~」

「うるせぇってばよ名前ねえちゃん!」

 

カカシ先生は10時頃にようやく姿を表し、ようやくスタートを切った。演習の内容は、12時までという制限時間の中で、カカシ先生から鈴を奪い取るという内容だった。鈴を奪えなかったものは、昼飯抜きで、しかもその弁当を目の前でカカシ先生が食べるのだという。しかも、丸太行きとなったものは任務失格として、アカデミーに戻ることとなるそうだ。

正直、元暗部の人から何かを取れる自信はない。いや、しかし待てよ、これって……。ある事に気が付いた私は、ちらりとサクラちゃんを見やる。サクラちゃんなら気がつくかも……と思っていたが、まだ気がついていないようだ。

 

ルールを聞かされ、カカシ先生を殺すつもりでいかないと鈴を取れないということも忠告を受けた。はじめは彼に対して舐めてた態度をとっていた3人だったが、ナルトくんが先に攻撃を仕掛けたことで、その状況が一変。はたけカカシという人物がとても強いということがわかったようだ。

もちろん、私は最初からあのテンゾウの先輩という基礎知識があったので、手を抜くつもりは一切無い。

 

「サクラちゃん、ちょっといいかな」

「……どうしたの」

 

それぞれが一旦散っていった後、サクラちゃんと私は少し離れた茂みに隠れた。

 

「この試験、多分だけど、チームワークを見る試験じゃないかな」

「……え?どうして?鈴は3つなのよ?しかも脱落率の高い試験だって……」

 

と、この時サクラちゃんはピンときた様子。

 

「食事を抜いてこいっていわれたじゃない、あれ、多分お腹空かせてメンタル的にも余裕をなくさせるためっていうのもありそうだし」

 

朝5時に集合させ、さらに朝ごはんを抜きにさせたのも、サバイバル演習で仲間同士の衝突を作るため。そう説明したら、頭のいいサクラちゃんはすぐにこの試験内容を理解したようだ。

 

「鈴が3つしか無いのも、争って、奪わせるため?でも、3人で奪って、誰かを脱落させるようなことをすれば、全員脱落……?」

「そう、そう思うんだよね……!さすがはサクラちゃん!多分、これに気がついてるのって、私とサクラちゃんだけだよ、最初にサクラちゃんに話しかけにきたのも、サクラちゃんしか分からないだろうな~って思ったからなんだ」

 

あまり、忍者を目指すことについては、ナルトくんたちほど熱意を持っていない私が言うからこそ、信じてもらえたというのもあるかもしれない。私が誰かを蹴落とすようなタイプではないことを、サクラちゃんがわかってくれているというのもあるが。やはり、持つべきは同性の友達である。

 

「でも、この事、サスケくんたちにわかってもらえるかな?」

「うーん、難しそうだね……サスケくんの性格からして、疑り深いからなぁ……アホのナルトくんを先に説得するかぁ……さっき飛び出していったし……サクラちゃん、サスケくんのこと、任せたよ!あと兵糧丸、二人分渡しておくね!これ食べたら少しは空腹も落ち着くと思うし」

「ありがとう!任せて!!」

 

うん、ここは最高のチームワークを発揮できそうだ。しかし、それを見逃すカカシ先生ではなかった。サクラちゃんと二手に分かれた直後、目の前にはカカシ先生の姿が。

 

「!!びっくりした」

「これぐらいで驚いてたら忍者やってられないよ」

「……!」

 

カカシ先生はこちらにいるというのに、向こう側で、ナルトくんの叫び声が聞こえてきた。ああなるほど、影分身。こちらが本物なのだろう。

 

「一体何したんですか!?」

「ん?クックック、教えてやってもいいが、引くぞ」

「……じゃあいいです」

「気にならないのか?」

 

教えてもらったら、案の定引いた。カカシ先生は千年殺しという名のかんちょうをナルトくんに仕掛けたらしい。なんて痛そうな。

 

「……その、先生の持ってる本なんですけど……見間違いでなければ、18禁……エロ本ですよね?」

「ま、そうだね」

「……」

 

イケメンなのに、エロ本を昼間から堂々と読むとはこれいかに……。まぁ、カカシ先生のイケメン力を考えれば、これぐらいでイケメン度が下がるわけでもない……。

 

「そういえば、名前はもうすぐでこれ読めるよね」

「え?あ、そういえばそうですね、あはは……じゃなくて!」

 

カカシ先生の見張っている領域から逃げようとしたが、再び捕まってしまった。どうやら、私をナルトくんの側まで行かせないつもりのようだ。さらに、サクラちゃんの悲鳴が聞こえて、はっとする。サクラちゃんも足止めを食らってしまったか。

 

「お前はこの演習の目的を知っているな、だから、サスケにサクラを差し向けた……だが、あいつはこの俺の幻術にかかった、もう成すすべはなしだが、どうする?」

「……こうなれば」

 

木遁は、まだ無闇に使ってはならないといわれているので、ここで使えるのはそれ以外の術。

 

「アグアメンティ!」

「!」

「ネビュラスっ」

 

前世で言う、水の魔法、こちらで言えば水遁。念には念を入れて、あたりがきりに包まれる術も追加した。

大量の水が出現し、それらがカカシ先生めがけて、龍のように襲いかかる。相手に的確に狙わなければ効果のない術は、カカシ先生にはまだ一つも当てられる自信がなかったので、無差別攻撃をしてくれる術を選んだ。その隙きに逃げようとしたのだが、カカシ先生はそう簡単に私を逃してはくれなかった。思いっきり首を狙われ、私は気絶してしまった。霧の中で、赤い瞳を見たきがした。あれは、確か……。

 

「……あれ、私……」

 

目覚めて見れば、私は丸太にくくりつけられていた。しかも、何らかの術がかけられているのか、全く解けない。術を発動させないよう、手も押さえつけられ、口元も声を発せられないように布を噛まされている。木遁を炸裂させれば逃げられたかも知れないが、ここで木遁を使うべきか否か。考えていると、3人の必死な声が聞こえてきた。

 

「名前ちゃん!今助けるから!」

「待ってるってばよ!」

「っち……面倒な」

 

どうやら、私はカカシ先生に捕らえられ、1人、丸太行きとなったらしい。もはや隠れることもせず、サクラちゃん、ナルトくん、そしてサスケくんがカカシ先生に立ちはだかっている。

 

「お前ら、もう鈴はいいのか?」

「そんなの、名前ねえちゃんを助けて、それから考えるってばよ!」

「そうよ!それにこれはチームワークをみる演習でしょ!?そもそも名前ちゃんは仲間よ、仲間を見捨てられないわ!」

「……ああ、そういうことだ」

 

くぅ~~泣かせるねえ、本当にいい子たちだなぁ。いい友達に恵まれたなぁ。私が感動に浸っている中、カカシ先生もついに動き出した。

 

「鈴を取らないと、お前ら、全員アカデミーに戻ることになるが、それでもいいのか?名前ひとりのせいで、お前ら全員落第するんだぞ?」

「いいわよそんなの!もう一回挑んでやるわ!」

「別に構わない、こいつは、自分が持ってきた兵糧丸を独り占めせずに、おれたちに分けてくれた、それだけで十分だ」

「ぐっ……名前ねえちゃんを見捨てるわけにはいかないってばよ!」

 

確かに、サクラちゃんやサスケくんはアカデミーの卒業試験なんて、楽勝かもしれない。ナルトくんも、もう楽勝で合格できるはずだ。ここまで煽るということは、カカシ先生は3人のチームワークを最終確認しているのだろう。

 

「……わかった、お前たち……」

 

攻撃が仕掛けられる、と身構える3人だが、カカシ先生から発せられた言葉に目を丸くさせる。

 

「アカデミーに戻らなくていいぞ、全員合格だ」

「……えっ」

「……!」

「ほ、ほんとだってばよ!?」

「あぁ、合格だ、お前たちが初めてだよ」

 

カカシ先生の笑顔を、初めて見たような気がした。サクラちゃんはとても緊張していたのか、へたり、と地面に座り込んでしまった。勇気を振り絞って、立ち向かってくれたんだなぁ。心にジーンとくるものがある。

 

「任務は班で行う!たしかに忍者にとって卓越した個人技能は必要だ。が、それ以上に重要視されるのはチームワーク……チームワークを乱す個人プレイは仲間を危機に陥れ、殺すことになる……例えばだ、仲間が人質を取られた挙げ句、無理な2択を迫られ殺される、任務は命がけの仕事ばかりだ!」

 

「これを見ろ、この慰霊碑に刻んである無数の名前、これはすべて里で英雄と呼ばれている忍者たちだ……この中には、俺の親友の名前も刻まれている」

 

カカシ先生は、演習場の近くにある慰霊碑を指して説明してくれた。この中には、英雄として殉職した忍者しか記されないので、私の友達の名前は無い……。別の慰霊碑には書かれているが、あそこへ行くと、つい昔を思い出して気持ちがいつも沈んでしまう。仕方のないことだとはわかっていても、あそこに行くと……うちは自治区にいくと、今でもイズミちゃんが迎えにきてくれるかのような、そんな錯覚に陥る。

 

「お前らが初めてだ、今までの奴らは素直に俺の言う事を聞くだけのボンクラどもばかりだったからな……忍者の裏の裏を読むべし。忍者の世界でルールや掟を破るやつは、クズ呼ばわりされる……けどな、仲間を大切にしないやつは、それ以上のクズだ」

 

うんうん、カカシ先生はやっぱりかっこいいなぁ。私は心がときめくのを感じた。

 

「これにて演習終わり、全員合格!!よぉーし、第7班明日より任務開始だ!」

「やったぁああってばよ!!オレ忍者!忍者!!忍者!!!」

「帰るぞ」

「しゃーんなろー!!」

「ふん」

 

と、ついに正式に忍と認められ、晴れて下忍となった私達は手を取り合い、喜んだ。サスケくんは少し恥ずかしがっていたが、サクラちゃんはちゃっかり、サスケくんと手を結ぶことができてとても嬉しそうだった。

私は、みんなが幸せそうで何よりだと思った。合格をもらえて本当に良かった。あんなに頑張っていた3人の、幸せそうな、希望に満ち溢れた背中を見ていると、自分も頑張らなくては、と元気を分けてもらったような気がした。