07 こんにちはそれぞれの世界 Type:N

君のいない世界は、とても、とても寂しいよ。親友と撮った写真をぎゅっと抱きしめ、私は家を後にした。

テンゾウからみっちりと指導してもらいながらも、私はアカデミーに入学した。このとき、すでに14歳だったので、アカデミーに入学する生徒にしてはかなり年上の生徒だった。まわりの生徒たちからは、かなりかなり珍しがられたが、遅くに忍術の才能を開花させてしまったため、入学が遅れた事を説明したら、すんなりと受け入れてもらえた。忍者になる以上は、アカデミーに入学することは必須。14歳ではあったが、ナルトくんと同じクラスに編入することとなった。突然年上の女の子がクラスに現れてざわめきはしたが、1週間も経てばみんな慣れてくれた。今では“名前ちゃん”とみんなから名前で呼ばれるまでには仲良くなれた。ちなみに、私がナルトくんと同じクラスに編入されたのには大きく二つの理由があった。一つは“ナルト”くんが居るということと、もう一つは能力的にこの歳のクラスが最適ということ。何しろ、ついこの間までなんの訓練もしていない、一般人だったのだから。

 

「体術の授業、なんでそこまでダメダメなんだってばよ」

「うわ~ナルトくんにそんなこといわれる日が来るなんて……くすん、涙出ちゃう…」

「ウソ泣きはやめろってばよ」

「……はあ~、可愛かったナルトくんも、同じクラスだと生意気坊主だねぇ~」

「かわいいは余計だってばよ!」

 

アカデミーに入学して1年が経った。この1年、あっという間だったと思う。体術はダメダメでも、忍術の授業だけはそれなりの成績を収めることができた。これも、テンゾウによる鬼授業のおかげだ。しかし、体術ばかりは難しく、クラスの中でも最下位の成績だった。これ、テンゾウに死ぬほど怒られるんじゃ……。受け取った通知書をカバンにしまい込むと、何度目かのため息を漏らす。

 

「忍術は、こう、勘でできるんだけど、体術ばかりはなぁ~」

「体力がミソッカスなんだってばよ」

「うわ~……的確なコメントすぎて何も言い返せない……」

 

前世で闇祓いではあったが、忍者ほど体力を使う仕事ではなかった。忍者は忍術の他に、体術も必要となる。体術は、屈強なる肉体が必要で……ケーキ屋さんを目指していた私に、そんな体力があるはずもなく。今の私の体力は、ナルトたち9歳の体力よりも劣っているという事実。まあ、忍者になるべくして修行をしている彼らと比べてはならない。

 

「じゃあ、また後でね、ナルトくん」

「おう!」

 

夕方、アカデミーを後にすると私はとある場所へと向かっていた。それは、私の忍術の先生であるテンゾウの居る場所。テンゾウも日々、暗部としての任務に追われているらしく、私が忍者アカデミーに入学してからというもの、頻繁に任務に駆り出されるようになったらしい。忍者アカデミーには中忍から上忍まで控えているので、私を監視する必要もない。だから、テンゾウと会うのは修行の時だけになっていた。

 

「アカデミーはどう?」

「うーん、楽しいよ!賑やかだからさ、寂しさも紛れるっていうか……」

「……そっか」

「うん、テンゾウはアカデミーに何年通ってたの?」

「ボク?1年だけだったよ、ボクの場合は体質もあったけど、結構楽勝だったなぁ」

「え!?1年で卒業!?楽勝?!」

 

1年通ってみたが、なかなかのハードな授業内容だったと思う。それを楽勝なんて……。私なんて、アカデミーすら卒業できるか怪しいというのに。

 

「君の友達だって、1年で卒業しただろ、うちはイタチ……あっ」

「……そうだったね……イタチくんも……はぁ……」

 

ごめん、本当にごめんよ。テンゾウにそういわれても、思い出してしまったものはどうしようもない。どんよりとした空気が森に広がる。

 

「……さ、切り直して、修行をしようか!今日は君の苦手な体術だよ」

「う、は、はぁ……」

 

そう、悲しんでいる時間は無い。立ち止まらずに、前へ歩み続けよう。今度こそ、少しでも多く、友達を助けられるように。

 

月日は流れ、私が17歳になった頃、ようやくアカデミーを卒業できた。通っていた期間は3年だが、されど3年間。とても濃密な3年間だったと思う。ちなみに、ナルトくんも卒業できたらしい。らしい、というのは、その場面を目にしていないからだ。やけにボロボロのナルトくんが家に帰ってきたな~と思えば、彼の片手には銀色に輝く額当てが。

ミズキ先生という中忍に騙されて巻物を火影様の部屋から盗み出したらしく、その巻物をミズキ先生に渡るのを阻止しただけではなく、イルカ先生も守ったそうだ。それで、今回晴れてアカデミーを卒業できたらしい。おめでとう、とナルトくんに伝えれば、彼は満面の笑みで喜んだ。

 

「……緊張するなぁ~……」

「名前ねえちゃんと同じ班だといいな~」

「ふふ、そうだね、あ、でも、サクラちゃんと一緒がいいんじゃないの?」

「あ!そうだった!!」

 

今日は班分けが発表される日。スリーマンセルと、3人1組に上忍師が1人付いて一つの班が完成するらしい。しかし、今年の卒業生たちは私がいるせいで微妙な人数になってしまっている。だから、場合によってはイレギュラーな班が出てくるかもしれない。私の予想では、木遁が使えるから、ナルトくんとは同じ班だろう。そして、うちは一族の生き残りのサスケくんもきっと同じ班に振り分けされるに違いない。あとは、バランスを整える優秀なくノ一が1人……正直、私は班の中でナルトくんの中にいる、九尾を抑える役目を請け負う事になるだろうから、もう一人加わるくノ一の子は、かなり優秀な子だと予想している。

アカデミーまでの道のりを2人で歩きながら、私達は班分けの予想を立てた。

 

「おい、ここは卒業生しか呼ばれていないはずだぜ」

「おうシカマル!お前さお前さ、この額当てが目に入んねぇのかよ!」

 

教室に入るなり、早速シカマルくんに声をかけられているナルトくん。誰もが彼が落ちていると思っていたからだ。

 

「マジかよ」

「まじも大マジ」

「名前さん、いつあいつ受かったんスか?」

「昨夜ね!」

「昨夜?」

「ふふふ、でも良かったじゃない、それにしてもシカマルくんは、本当に友達思いのいい子だね」

「そういうの、恥ずいんで、やめてくださいよ」

 

同期といえども、私は17歳で彼らは12歳。言うなれば、私の年齢だとすでに中忍になっている人は普通にいて、才能ある人であれば上忍、暗部の人だっている。少からずとも一般人から突然路線変更で忍者を目指した人の中では、上出来のほうだろう。

 

「そういや、名前さん、ずっと疑問に思ってたんですけどなんで忍者になろうと思ったんすか?」

「そうだね~……友達を今度こそ守りたかった、ていうのがあるかな、あとはセクハラジジイに退路を絶たれたのもある」

「セクハラジジイ?」

 

今でも、あのジジイは私をやつの組織、根に引き込もうと躍起になっているのだから。成績優秀で卒業出来なくて本当に良かったと今では思う。

 

「ナルトどけ!!わたしはアンタの向こう側に座りたいのよ!」

 

その時、窓際の席から誰かの怒鳴る声が聞こえてきた。振り向けば、そこには春野サクラちゃんがいた。実は、彼女はナルトくんが気になっている女の子だ。でも悲しいかな、彼女はナルトくんには一切興味がなく、サスケくん一筋。そんなサスケくんも、全くサクラちゃんに見向きしないという……この虚しい三角関係。精神年齢✕✕歳の私にとっては別に大したことではなかったが、どんな結末を迎えるのかは少し気になってはいる。

 

「なんだよ!」

「てめーこそなんだよ!」

 

あーあ、ついにぶつかった、今日もか。

サスケくんとナルトくんは、何かとぶつかり合うことが多い。というか、ナルトくんがサスケくんに喧嘩を売りに行くのだが……。あまり人と関わらないサスケくんではあったが、無意識のうちに、サスケくんはナルトくんの事を認めている節がある。ライバルとでも言おうか。とても素敵な関係だと思う。ナルトくんはサスケくんに負けないよう努力し、サスケくんも相手に見ていない風に振る舞いながらも、しっかりとナルトくんを意識している。ほんと、精神年齢✕✕歳のおばさんには、心にぐっとくるものがあるね。

 

「あら、名前、その服かわいい!!どこで売ってたの!?」

「ふふふ、いのちゃん、さすがは目の付け所が違うね」

「はぁ?んな、いつも着てるのと変わらねーだろ」

「これだからシカマルは……」

 

彼女の名前は山中いのちゃん。先程ナルトくんを追いやってサスケくんの隣に腰をおろしているサクラちゃんの親友だ。昔、サクラちゃんがいじめられているところをいのちゃんが助けたそうだ。その日以来一緒に遊ぶようになったというわけだが、彼女たちには共通の好きな人がいる。それがサスケくんだ。まったく、罪な男だねぇ、サスケくんは。

 

「てめーナルト!サスケくんにがんたれてんじゃないわよ!!」

「どけ!」

「フン」

 

なにやら騒がしくなってきた。後ろを振り向くと、そこにはナルトくんがサスケくんのいる席の上で、サクラちゃんの言う通りガンたれていた。周りからはサスケくんやっちゃいな!なんて女子からの声援が聞こえてくるが、これは果たしてどうなることやら。ナルトくん、後ろにいる男子に気をつけてね。ぶつかったら、たぶん、ちゅ~することになる。サスケくんと。

 

「えーうっそー!」

「え?」

 

嫌な予感は的中してしまった。

 

「わ!熱いねナルトくん!」

「きゃあああああああサスケくんがあああああ」

 

クラスの女子は、一斉に騒ぎ出す。男子なんて、突然の事に呆然としていたり、面白がって爆笑している者、様々だった。

 

「てめ……ナルト!ころすぞ!!」

「ぐぉおおお口が腐るぅううう~~~!……!」

 

女子からの強い殺気を受け、そしてサクラから怒りの鉄槌をうけたのは言うまでもないだろう。

 

「今日から君たちはめでたく一人前の忍者になったわけだが、しかし、まだまだ新米の下忍!本当に大変なのはこれからだ!」

 

イルカ先生の説明が始まった。

 

「えー、これからの君たちには里からの任務が与えられるわけだが、今度は3人一組“スリーマンセル”の班を作り、各班ごとに1人ずつ上忍の先生がつく。その先生の指導の元、任務をこなしていくことになる」

 

班はバランスが均等になるよう、上層部の人間が決めている。もちろん、私が誰と一緒かなんて簡単に予想ができる。まぁ、事情を知らなければ分からないかもしれないけれども。

 

「第7班、春野サクラ、うずまきナルト、うちはサスケ、そして楠名前、ここはイレギュラーな班となる」

 

ほうら、やっぱりね。予想していた通りだ。優秀なくノ一はサクラちゃんだったようね。サクラちゃんはくノ一でもトップクラスの成績だから、当然と言えば当然か。

ナルトくんは文句をイルカ先生にぶちまけたが、班の中でもパワーバランスを保つと、こうなるんだ、と説明され、さらにナルトくんがドベであることも強調されてしまった。ドベっていうよりは、とある封印術のせいで人よりまだチャクラが上手く練れないってだけで、才能で言えばかなり天才的な班分けだと思う。ナルトくんの潜在能力を考えれば、必然とサスケくんが同じ班になり、それに釣り合うのは、くノ一のトップであるサクラちゃん。私はナルトくんのもしものときのための要員なのでそれには含まれない。

 

「じゃあ、みんな午後から上忍の先生たちを紹介するから、それまで解散!」

 

それまでの間、各自昼飯を取って待機することとなった。ナルトくんと食事を取ろうとしたとき、突然イルカ先生に呼ばれてしまった。

 

「名前、一緒に来てもらっていいか」

「?はい」

「火影様が呼んでいる」

「班分けのことですか?」

「あぁ……察しがいいな」

「ふふ、まぁ、そんなことかなって思いました。あ、そうだ、イルカ先生、こんど一楽のラーメン、3人で食べにいきましょうね!」

 

ナルトの、お祝いで。そう言うと、イルカ先生は笑顔で頷いてくれた。

 

「あれ、ここってナルトくんの部屋じゃ……」

「おお、すまんな、わざわざ来てもらって」

「あれ、火影様?……と、その人は……いつぞやのイケメンさんですか!?」

 

火影様に呼ばれた場所に向かってみれば、そこはナルトくんの部屋だった。ナルトくんめ……部屋を掃除しないまま家を出たのね。何年か前から自分1人で家の事ができるよう私があまり関与をしなくなった。ゴキブリが隣から湧き出てくるのは我慢出来ないので、あまりにも汚れてきたら強制的に掃除をさせていたが。

部屋を見れば散らかったカップラーメンの容器に、出しっぱなしの牛乳パックが目に入る。

 

「え、ちょっとまって、賞味期限切れてるから捨てろって言ったやつ!!」

「……ははは、君も苦労してるネ」

「はぁ……ナルトくん、掃除が苦手で、ゴキブリ湧いたときは本当に大変だったんですよ」

「話はテンゾウから聞いてるよ、もう爆発癖も落ち着いたんでショ?」

「はい、お陰様で……」

 

この銀髪のイケメンが言う、爆発癖というのは、感情が高ぶったときに植物がニョキニョキ生えてくる現象の事を指している。ゴキブリを殺すために部屋から木遁が炸裂したときは、テンゾウが何事かと慌てて駆けつけて来てくれたものだ。木の葉の里には、油女一族という、特殊な蟲を体内で飼い、操る忍者の一族が存在する。もし彼らの中にゴキブリを操るものが居るとすれば、私の天敵にほかならない。最強の忍者と言っても過言ではないだろう。近寄ることができない自信しかない。一匹でも耐え難い苦痛を与えてくれるというのに……。

 

「テンゾウの先輩だって聞いてます」

「ああ、そうだな、暗部のって意味なら」

「あなたも恐ろしいほどの天才だって聞きました、もしかして、あなたが第7班の上忍師ですか?」

「ほう、説明の手間が省けて助かったわい、そうだ、はたけカカシ……今日よりお前らの班の上忍師だ。しかし、カカシを紹介するためにわざわざ呼んだのではない、ナルトのことだ」

「ナルトくんですか?テンゾウからざっくり聞いてはいるんですけど、もしかして、もしものときのための封印術要員ってことですか?」

「はっは、そこまでわかっておるなら話は早い、その封印術、今日からこれをみて学ぶとよい、よいか、これは大変貴重な巻物じゃ……くれぐれも、大切に扱うように」

 

そう言って、手渡されたのはボロボロの巻物だった。中を開けば、忍術が記されたものであることはすぐにわかった。と言っても、ものすごい達筆で正直読みづらかったが。

 

「うーん……すごい難しそうですね……」

「本来ならばテンゾウをつけてやりたいところじゃが、カカシが暗部を抜けた関係で、人手不足でな……すまんが、1人で頑張ってもらいたい、もちろん、カカシに助言を受けるのもよいだろう、しかし、これは木遁忍術……これを操れるのは、木の葉でテンゾウとお前だけだろう、しっかりと学ぶように」

 

話によると、これは初代火影様、千手柱間の残した忍術の巻物らしい。このやけに達筆で読みづらい文字は、千手柱間本人の直筆だ。火影様から手渡しされたが、火の国の国宝みたいなものだ。醤油のシミなどつけてしまったら、死罪になってしまうかもしれない。ブルブルと震える手で、それをそっとテーブルに置く。

 

「う……せめて写しとか無いんですか……原本ですよね!?」

「貴重な木遁忍術の写しなど許可するわけが無かろう、だから、大切に扱うようにと言っておるのだ」

「ううううう火影様ぁあああ、私、こんな、こんな貴重なもの、受け取れません!!火影様の部屋に置いておいてください!!練習するとき、その都度お部屋にお伺いしますから!!」

「何を言っておる、まったく……」

 

火影様は優しいひとだ。そんな事、よくわかっている。それでも、時々恐ろしい事を言ってくることがある。今日みたいな。

 

「お、お醤油のシミとかついたらどうしよう……怖くてサワレナイ……」

「はぁ、なら、この容器に入れておけ、そうすれば汚れずに住むだろう」

 

と、手渡された木箱にすぐさま巻物を閉まった。

 

「汚しても怒らないでくださいね!?殺されたりしないですよね!?」

「そんなことはせんから、安心せい、まったく」

 

この木箱は、許された者しか中を空けられない仕組みになっている。それを、自分の部屋の、押し入れにしまい込む。この押し入れは私が守りの術をかけているので、私以外は開けることが出来ない仕様になっている。

 

「カカシ先生、みましたよね、ここに入れたので!!」

「……わかったよ、しっかり見てたから」

「火影様も見ましたよね?!ちゃんとここに!!大切に保管しました!!」

「……まぁ、こういう奴なのでな、よろしく頼んだよ」

「……はは、了解です」

 

こりゃ、大変な事になりそうだ。カカシ先生の心のボヤキが聞こえてきたような気がした。

 

「なんでオレたちのところだけ、まだこないんだってばよ!」

「ん?なんでだろうね~」

 

先程会ったよ、なんて言えるはずもなく。

席でぶーたれるナルトくんを横目に、私は本当の事をぽろりと言ってしまわないよう、口笛を吹いてごまかした。もちろん、サスケくんには疑いの視線を向けられているのだが……。

 

「それにしても、サクラちゃんが同じ班でよかった~!」

「わたしも、名前ちゃんが同じ班で嬉しい!」

 

何しろ、サクラちゃんにとってサスケくんを狙う女子は皆ライバルだ。私は、完全にライバルからは除外されているので(私が年上なのもあるが)、サクラちゃん的にはラッキーだったようだ。

 

「サクラちゃん、いつも噛み砕いて教えてくれるから、わかりやすくて助かるんだよね」

「ふふ、どういたしまして」

 

なんせ、つい最近まで一般人だったので、わかりやすく噛み砕いて説明してくれるサクラちゃんには、くノ一のクラスでいつも助けられていた。私の場合、飲み込みも悪いので、一つの術を覚えるのにかなりの時間を要する。その代わり、前世で引き継いでいる魔法に関連した忍術は簡単にできるのだが、そのせいでオリジナル忍術バカと呼ばれるようになってしまった。バカだろうとなんだろうと、便利なものは活用するべきだ。なんで決まった術式のある忍術ができなくて、術式のないオリジナルの術ができるのか、これにはイルカ先生にも頭を悩ませてしまった。

 

「ちょっと、何やってるのよナルト!」

「へっへっへっへ~」

 

ガタガタと音がしたので、見てみれば、ナルトくんが原始的ないたずらを仕掛けているところだった。黒板消しを扉の間にはさみ、それを開けば落ちてくるという……簡単なトラップだ。遅れてくるやつが悪いんだってばよ、といたずら小僧の笑みを浮かべるナルトくん。

 

「あ~あ、ナルトくん、知らないよぉ……」

 

あの先生、怒らすと怖そうだなぁ~。なんて思いながら、黒板消しに变化の術をかける。扉を開いたら、あの黒板消しが直前で猫耳カチューシャになる術をかけた。何らかの術をかけたことは、サスケくんも気がついたようで、くだらねぇ、と鼻で笑いつつもこの悪戯に若干興味を持った様子。

 

「サクラちゃんも、ノリノリだね」

「ちょーっと気になるよね、こんなのに引っかかる先生だったらどうしようって」

 

そうこうしているうちに、カカシ先生が教室までやってきた。さすがは元暗部……もう、黒板消しの存在に気がついているだけではなく、それにかけられた“なにか”にも気がついている。

 

「ぷははは~~~引っかかった、引っかかった!!ん!?猫耳!?」

「ごめんなさい先生~わたしも止めたんですけど、ナルトくんが勝手に~」

「(まじかよ)」

「(わ~~~すごいCUTE~~~)」

 

猫耳カチューシャ爆弾は成功したようだ。猫耳カチューシャをつけても、イケメンはイケメンね、カカシ先生。ゲラゲラ笑うナルトくんに、満足げな私の姿を見て、カカシ先生は誰が犯人か察したようだ。

 

「んー、なんていうのかなぁ、お前らの第一印象は……うん、嫌いだ」

 

ありゃりゃ、嫌われてしまった。上忍師に嫌われたら、果たして下忍昇格試験に合格できるのだろうか。これで忍者になれなかったら、それはそれで仕方がないと諦めよう。でも、私は諦めることができたとしても、一生懸命頑張っていたナルトくんたちは、せめて下忍になってほしいという気持ちはある。